ドライバーの体調急変を察知したら「半自動運転」に切り替わり、システムが自動で車両を路肩に安全に停車させる──。こうした新たな事故防止システムの開発が始まる。
MEDIROM MOTHER Labs(マザーラボ)とHW ELECTROの両社は2023年8月20日までに、事業提携に関する基本合意書を締結したことを発表し、こうしたシステムの共同開発を行っていくことを明らかにした。
マザーラボはヘルステック事業を展開するメディロムの子会社、HW ELECTROは日本の商用EV(電気自動車)メーカーだ。マザーラボ開発のスマートトラッカーで取得するバイタルデータとHW ELECTROのコネクテッドサービスを連携させ、こうしたシステムを実現させていく計画のようだ。
■両社の先進技術を融合
マザーラボのスマートトラッカー「MOTHER Bracelet(マザーブレスレット)」=MOTHER=は、体表面と外気との温度差を利用して発電、駆動するという充電不要なデバイスで、歩数や睡眠量、消費カロリー、心拍数、体表温という5つのデータを取得できる。
またHW ELECTROは、多用途小型電気商用車「ELEMO(エレモ)」の開発を手掛けている。このシリーズには、小型EVトラックやEV軽トラ、多用途EVバンという種類がある。
同社は2023年に入り、独自のコネクテッドサービス基盤「HW ELECTRO Platform Service」をリリースした。これは、同社が展開する車両とインターネットをつなぎ、災害支援や配送領域の最適化などの利便性の高いDX環境の提供を目的とするプラットフォームサービスだ。
走行データや車両データ、環境データなどを組み合わせてビッグデータとして活用し、車両のデータはネットワークを通じてプラットフォームに統合的に蓄積される。プラットフォーム上で解析されたデータは、さまざまなアプリケーションやシステムと連携し、新たなサービスとして展開できるようになるという仕組みになっている。
このプラットフォームにより、MOTHERで取得したバイタルデータを連携させることが容易になり、より安全で快適なドライバーの運転環境を提供可能になるという。
■緊急時に自動で路肩に停車
HW ELECTROが開発するEVとMOTHERは、HW ELECTRO Platform Serviceを通じて連携する。これにより、ドライバーのバイタルデータと連動した半自動運転化を実現することで、運転中の体調急変による事故を未然に減らすことを目指す。
具体的には、運転中のドライバーのバイタルデータに異変を検知した際に半自動運転に切り替わり、周囲の車両にアラートを発信しながら自動で路肩に安全に停車するシステムを提供する計画となっているようだ。
■自動運転技術が交通事故抑制に寄与
両社はまず、MOTHERのデータを自動で取得する「MOTHER Gateway(マザーゲートウェイ)」をELEMOへ搭載し、運転者の走行中のバイタルデータが可視化できる状態を目指すとしている。
またMOTHERが計測したバイタルデータは、HW ELECTRO Platform Service上で表示し、事業者側が運行データと共にリアルタイムでバイタルデータを確認できる環境も目指すという。
ドライバーの健康状態が急変して起きる事故は今も昔も後を絶たない。今後開発されるこのシステムがこうした事故を減らすためのブレイクスルーとなるのか注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転の目的・メリット(2023年最新版)」も参照。