自動運転、レベル2とレベル3の違いは?(2024年最新版)

「セカンダリアクティビティ」が一部可能に



自家用車で普及が進む「自動運転レベル2」。高度なレベル2はハンズオフ運転が可能となるなど、運転操作に一定のゆとりをもたらす。


一方、一定条件下で自動運転を行うレベル3車両の市場化も進み始めた。現状は高嶺の花的存在だが、技術の高度化と一般化が進み、近い将来身近な技術として定着しそうだ。

2020年代の自家用車市場において大きく普及するだろうレベル2とレベル3。この記事では最新情報をもとに、両者の違いについて解説していく。

■レベル2とレベル3の概要

レベル2を進化させていくとレベル3に?

レベル2は、一定条件下でアクセルやブレーキといった自動車の縦方向の制御と、ハンドルによる横方向の制御の両方を支援する。縦と横方向の同時制御により、前走車への追従走行や一定速度での走行を、車線をはみ出さないように支援することができる。

技術が高度化すれば、ハンドルから手を離すハンズオフ運転や、車線変更支援なども可能となる。ドライバーは周囲への注意義務を怠ってはならないが、一定条件下においてほとんど手動操作せず車両を走行させることができる。


このレベル2の技術をさらに進化させていくと、レベル3に到達する。レベル3は一定条件下で自動車の縦方向の制御と横方向の制御を両立し、基本的にドライバーが介在する必要がないレベルで車両を走行させる。

では、レベル2とレベル3の境界線はどこにあるのか。以下、両者の違いについて解説していく。

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?定義・呼称・基準は?」も参照。

■レベル2とレベル3の違い

運転の主体が異なる

レベル2とレベル3の一番の違いは、運転の主体がドライバーからコンピューターへと移行することだ。レベル2はあくまでADAS(先進運転支援システム)であり、運転を支援する機能であるため、システム作動時もドライバーは常に周囲の状況に注意を払い、必要に応じて車両を制御しなければならない。運転主体は常にドライバーとなり、万が一事故が発生した際の責任も原則ドライバーが負うこととなる。


一方、レベル3では、通常時はレベル2同様すべての責任をドライバーが負うが、システム作動時は運転の主体がドライバーからシステムに完全に移行するため、責任もシステム側が負うことになる。ドライバーは使用者としての責任を負うが、あくまで運転の主体はシステムとなる。

つまり、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストといったレベル2を構成する各機能が高度化し、ドライバーに依存することなくシステムが主体となって絶対的な安全性を担保できる段階まで技術が達することでレベル3が実現するのだ。

レベル3は人とシステムがオーバーライドし合う

ただ、レベル3はシステム作動時において一定条件下から外れる際、あるいは一定条件下にあっても作動継続困難と判断した際、ドライバーに運転操作の交代を要求する(テイクオーバーリクエスト)。この要求が発せられた際、ドライバーは迅速に運転操作を行わなければならない。

一般的にレベル3は手動運転と自動運転が混在するため、人とコンピューターがオーバーライドし合う関係となる。このオーバーライドのたびに運転主体や責任が移行することになるが、オーバーライドにはタイムラグが生じやすい。

例えば、テイクオーバーリクエストが発出された際、ドライバーが車両周囲の状況を把握し、ハンドルを握り運転操作ができる状態になるまで数秒から十数秒必要となる。

ドライバーがリクエストに応答しなければ、警告を発した後レベル3システムはリスクを最小化するため路肩に車両を停止するなど緊急安全措置を講じる。この緊急安全措置がレベル3に含まれるか否かは現状システムによるものと思われ、運行主体があいまいとなる。

例えば、安全確保に向け車両を制御している際に事故が発生した場合、レベル3システムに車両が安全に停止するまでの一連の流れを含んでいればその責任はシステムが負う。しかし、警告を発するまでがレベル3システムで、その後の安全措置はあくまで緊急措置としてドライバーの責任とするシステムもある。

後者は、テイクオーバーリクエストにドライバーが応答せず、緊急安全措置に移行した段階でドライバーがオーバーライドしたものとみなす。ただ、安全を確保しなければならないため、実質レベル2状態で車両を停止させるといったイメージだ。

【参考】オーバーライドについては「自動運転における「オーバーライド」とは?「切り替え」という意味」も参照。

レベル3ではセカンダリアクティビティが一部可能に

レベル2では、システムが高度化されればハンズオフ運転が可能となり、ドライバーはハンドルから手を離すことができる。しかし、前方注視義務などを負うため、スマートフォンの操作などは厳禁となる。あくまで、従来より楽な姿勢で運転ができることにとどまるのだ。

つまり、レベル2においては、運転以外にドライバーに許容される行為=セカンダリアクティビティは皆無と言える。

一方、レベル3はシステム作動時においてアイズオフ運転が可能となる。前方注視義務がなくなるため、ドライバーはスマートフォンやカーナビなどを注視することができるのだ。テイクオーバーリクエストに迅速に応答可能であれば、スマートフォンなどの一定の操作が可能になると解される。

セカンダリアクティビティに関しては、明確に許容されているのはこのスマートフォンなどの操作に限られる。読書や仕事、簡易な食事といった行為もシステムから人へのオーバーライドに支障はなさそうだが、当面は様子見が必要だ。

【参考】セカンダリアクティビティについては「自動運転レベル3でできること」も参照。

■自動運転レベル3の実現状況

2023年2月時点でレベル3を市販車向けに展開できているのは、日本のホンダと独メルセデスのみだ。ホンダは2021年3月発売の新型LEGENDに機能を搭載させ、メルセデスは2022年下旬から有料オプションとして「DRIVE PILOT」というレベル3の機能を展開している。

ほかの自動車メーカーもレベル3の技術を開発しており、今後続々と技術の商用展開が加速するものと考えられている。

【参考】関連記事としては「自動運転、2社目の「レベル3提供」はメルセデスベンツ」も参照。

■【まとめ】レベル3への移行はハードルが一気に高まる

運転主体がドライバーからシステムに移行することがADASと自動運転の差異であり、レベル2とレベル3の差異となる。

このドライバーからシステムへの運行主体の移行は、大前提としてシステム主体で絶対的な安全性を担保しなければならないため、ハードルが一気に高くなるのだ。

このハードルを真っ先にクリアしたのがホンダのレジェンドだ。現在、各社がレベル3搭載車両の市場化を進めている段階で、各社の自動運転技術は着実に進展していると言える。

今後、どのような条件をクリアするレベル3が登場するのか、要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル3とは?定義は?」も参照。

■関連FAQ

    自動運転レベル2とは?

    口語的には「部分運転自動化」のことを指し、一般的にはADAS(先進運転支援システム)と分類される。自動運転機能ではなく、あくまで運転支援技術だ。

    自動運転レベル3とは?

    レベル3は口語的には「条件付き運転自動化」と言い、特定の条件下で「アイズオフ」、つまり目線をはずせる自動運転が可能な水準を指す。特定の条件をはずれる際には、人間が運転を引き継がなければならない。

    レベル3の市販車は発売されている?

    日本の自動車メーカーであるホンダが2021年3月に新型LEGENDを発売し、トラフィック・ジャム・パイロットというレベル3の機能を搭載していることで話題になった。

    テスラは自動運転レベル3を実現している?

    2023年2月時点では実現していない。テスラは「FSD(Full Self-Driving)」という有料オプションを展開しているが、その名称の通りに完全自動運転ができるわけではなく、いずれアップデートによって自動運転を可能にさせる方針だ。

    自動運転レベル3は危険?

    レベル3の危険性を懸念する声もある。レベル3ではアイズオフの自動運転が特定条件下で可能になるが、人間が運転を引き継がなければならないシーンが発生し、人間が油断をしていた場合に事故につながる懸念があるからだ。そのため、レベル3の開発を見送ることに触れた自動車メーカーもある。

(初稿公開日:2022年8月8日/最終更新日:2024年4月16日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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