京セラはこのほど、新たな世界観を提案する最新のコンセプトカー「Moeye(モアイ)」を発表した。完全自動運転時代を見据えた未来のコックピットデザインが象徴的で、幅広い車載向け製品を開発する同社ならではの先端技術が詰め込まれている。
Moeyeにはどのような技術が込められているのか。概要を解説していく。
記事の目次
■Moeyeとは?
京セラ2台目のコンセプトカー「Moeye」
Moeyeは京セラにとって2代目(2台目)のコンセプトカーとなる。初代は、EV(電気自動車)メーカーのGLMとの協業のもと、スポーツEV「トミーカイラZZ」にeミラーやサラウンドビューカメラなど最新技術を搭載したコンセプトカーとして2018年に発表された。「受けの姿勢から攻めの姿勢へ」の変革を目指す過程でコンセプトカー開発プロジェクトが立ち上がったのだ。
こうした攻めの姿勢が継続された成果は、2代目のMoeyeに色濃く反映されている。自動運転やMaaSが進む中、車室内空間の重要性に着目し、独自技術によって安全性とエンターテインメント性の両方を兼ね備えた車に仕上げたのだ。
外観は2ドアのクラシックカーのような趣きで、「時間」をテーマに伝統から京セラの描く自動車の未来まで自動車の歴史を駆け抜けるような体験を提供できるようデザインしたという。
コックピットデザインはリアルバーチャルを体験するに相応しい未来感あるミニマルなデザインに仕上げられており、インパネ部はハンドルや計器類などが一切見当たらずすっきりとしている。アクセルなどのペダル類も備えていない、まさに完全自動運転時代を見据えた設えだ。
空間に映像を浮かび上がらせる「空中ディスプレイ技術」
インパネ前面に広がる高性能な液晶ディスプレイからの投影映像を結像させることで空中をディスプレイ化する独自技術を搭載している。オリジナルキャラクターがダッシュボード上部の空間にクリアかつリアルに浮かび上がり、ドライバーを楽しくナビゲートするという。
コックピットの一部を透明化する「光学迷彩技術」
東京大学先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授と協働し、独自の光学迷彩技術を用いてコックピットの一部を透明化してドライバーの視野を広げることを可能にした光学迷彩技術も要注目の技術だ。
一見何もないシンプルな形状のダッシュボード上にクリアで鮮明なバーチャル3D映像や、光学迷彩技術によってダッシュボードを透明化し、前方の風景映像を見ることができるのだ。ダッシュボードの透明化により視野が広がり開放感が格段に増すなど、視覚によって驚きと楽しさを感じられるような設えだ。
触覚や聴覚、嗅覚も満たす独自技術
このほかにも、パネルを指でタッチし感圧で微細な振動を発生させ、クリックしたことを伝えるHAPTIVITY(触覚伝達技術)や、ピエゾ素子を用いた振動スピーカー、アロマ芳香器などを搭載しており、車内空間をより快適なものに仕上げている。
■【まとめ】カメラ‐LIDARフュージョンセンサー技術にも期待
今回のコンセプトカーは内装主体のため盛り込まれなかったようだが、カメラとLiDAR(ライダー)のフュージョンセンサーにも大きな期待が寄せられている。周囲の状況を認識するために必要となる外部センサーにおいて重視されているカメラとLiDARをワンユニットにまとめることで、両データを統合させるプロセスが非常に容易になる。
このほかにも、マルチファンクション型ミリ波レーダーやAI搭載車載カメラといったセンシング技術をはじめ、自動運転車と道路情報を結び付ける路側機「Smart RSU(Smart V2I RoadSide Unit)」など、自動運転時代に大きな武器となる技術を幾つも有している。
今後、2台目となるコンセプトカーには、こうした自動運転に直結する技術が盛り込まれる可能性もある。同社への期待は高まる一方だ。
【参考】自動運転分野における京セラの取り組みについては「AIカメラ、フュージョンセンサ…京セラの自動運転技術、ラスベガス開催のCESでPR」も参照。