自動運転業界ではいまデジタル人材の獲得合戦が過熱している。自動車業界で自動運転技術やコネクテッド技術の重要性が高まる中、「ハードウェアからソフトウェア」の流れが本格化し、どの企業も喉から手が出るほど優秀なエンジニアを欲しがっている。
ただ、いまの自動運転業界ではエンジニアが足りていない。特にアフターコロナ・ウィズコロナ時代では自動運転の社会実装が大幅に加速するとみられていることから、より一層、商用サービス化まで成し遂げられるようなフルスタックエンジニアが渇望されるようになる。
事実、2020年3月末時点の関連求人数は新型コロナの影響を受けながらも前年同月比で30.6%増を記録(自動運転ラボの調査)しており、人材獲得合戦の勢いは続いている。
こうした中、自動運転ラボを運営する株式会社ストロボ(本社:東京都港区/代表取締役社長:下山哲平)は2020年、自動運転やMaaS領域に特化したデジタル人材の採用支援サービスを本格展開する。ストロボ代表の下山哲平が考える理想的な採用戦略とは?
記事の目次
■エンジニアが圧倒的に不足、求められる「魅力づけ」
Q 自動運転領域における人材マーケットをどうみている?
エンジニアが圧倒的に不足しています。AI(人工知能)やクラウド、ソフトウェア開発を専門とするエンジニアはもちろんですが、UIやUXのあるべき姿を自ら考え、必要な技術を落とし込め、サービス企画までできる「フルスタックエンジニア」がいま求められています。
新型コロナウイルス対策で自動運転ビークルの活躍に注目が集まったこともあり、自動運転技術を活用した「to C向け」(一般顧客向け)の商用サービスが続々と登場する時代が到来します。自動運転タクシーや宅配ロボットなどがそのサービスの代表例ですが、誰もが想像もしなかったサービスのアイデアを現実のサービスとして生み出すことできる人材が求められているのです。
ただ日本では、自動運転業界の「魅力づけ」がうまくできていないという課題があります。
世界一優秀なエンジニアが集まるアメリカのシリコンバレーでは、自動運転業界のエンジニアが最も高年収だと言われています。必然的に優秀なエンジニアは自動運転業界へとシフトしていっているのですが、日本ではそういった流れはありません。
多くのエンジニア、そしてエンジニアの卵たちは、ただ漠然と「自動運転業界はよくわからない」というイメージを持っており、自動運転業界に注目することなくほかの業界へ流れていってしまっているのです。
そもそも「エンジニアはどうやって探せばいいの?」という段階の大企業もいま日本では少なくありません。いわゆる「デジタル人材」を長らく採用してこなかった企業にとっては、エンジニアの採用自体が未知の世界でもあります。デジタル人材へのアプローチやクロージングをできる専門性が不足していると言えるでしょう。
Q 求職者側の実態は?
エンジニアが自動運転に興味を持って求人情報を調べてみたとしても、インターネット上の情報ではいまいち自動運転業界の魅力がわかりにくいという現状があります。
先ほど触れた通り、自動運転技術はウイズコロナ時代においてもっとも社会実装が加速するテクノロジーの一つといえます。もともと2030年代に300兆円以上のマーケットが生まれると言われるほど巨大産業になる見込みではあり、それが一気に数年単位で早回しになるとみています。
そんな「今が一番チャンス」といえる産業にも関わらず、日本企業は性格が控えめなこともあるのか、そのような未来展望があまりはっきりと事業会社側からは語られていません。そのため求職者側からすると「こっちの蜜は甘いよ」というメッセージが見えず、自動運転ビジネスに飛び込もうと思いにくいのが現状です。
さらに、どのようにエントリーすればいいのかも求職者側にとっては分からない状態です。ただしこの問題点については、求人側の課題を解決できれば自ずと解消されていくでしょう。
■採用戦略立案からクロージングまでワンストップで
Q 「自動運転×人材ビジネス」に参入した理由は?
弊社(ストロボ)は、自動運転業界で最大メディアとなっている「自動運転ラボ」を運営しているだけでなく、デジタル人材ビジネスの採用専門子会社「株式会社MOCHI」(以下、MOCHI)もグループ経営しています。自動運転とデジタル人材採用の双方の分野でプロフェッショナルである弊社が「自動運転×人材ビジネス」に参入するのは自然な流れかと思います。
そもそもMOCHIと自動運転ラボの運営を統括する弊社は、大企業に対するデジタルトランスフォーメーション(DX)の支援を展開してきた経緯があり、そのために必要なデジタル人材を採用し続けてきました。デジタル人材がどんな環境を求めているのかは誰よりもよくわかっているつもりです。
また我々は日本で最も自動運転業界の未来を一番ポジティブに考えているという自負があり、こうした我々が口説けば優秀なエンジニアをたくさん自動運転業界に引っ張れます。
Q デジタル人材の採用支援サービスの特徴は?
デジタル人材の採用支援サービスでは、企業のビジョンや中長期経営計画に基づいた採用戦略を立て、魅力的な求人情報を発信してエントリー数を増やし、面接してクロージングするところまでをワンストップで行います。難易度の高い採用では「計画」と「運用」をセットで考える必要があるからです。
またウイズコロナ時代を見据え、これらの一連のオペレーションをフルリモート、オンライン化することも実現しています。
■インタビューを終えて
2020年4月に日本で「自動運転レベル3」が解禁され、5月には普及に向けた新たなロードマップも国から公表された。ウイズコロナ時代にはコンタクトレス配送などへの期待感も高まることを考えれば、自動運転時代の到来時期は確実に近づいていると言える。
ただ、「技術」は実際に人の役立つ「サービス」へと姿を変えなければ、その素晴らしさを十分に活かしきれているとは言えない。
「技術」を「サービス」へ…。この一連の流れにおいては、各要素技術に長けたエンジニアも、サービス設計まで可能なフルスタックエンジニアも、両方必要とされる。逆に言えば、両者の採用戦略に失敗すれば致命的な遅れを招きかねない。
【参考】関連記事としては「自動運転・MaaS領域での事業開発支援を本格化【ストロボ・下山哲平】」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)