名古屋大学発の自動運転スタートアップである株式会社ティアフォー(本社:愛知県名古屋市/代表取締役社長:武田一哉)が、同社が開発・公開している自動運転向けのオープンソースソフトウェア「Autoware(オートウェア)」を本格的に世界展開させる。
ティアフォーの創業者で会長兼最高技術責任者(CTO)の加藤真平氏=東京大学准教授=が自動運転ラボの取材に応じ、今秋より加速する自動運転プラットフォーム戦略について明らかにした。
米シリコンバレーの新興企業や英半導体設計大手アームの推進団体「リナロ」らとタッグを組み、早ければ2018年内にオートウェアのエコシステムを構築するための国際業界団体を設立する。オートウェアの開発母体をティアフォー社からその業界団体に移管し、「世界中でより多くの大手自動車メーカーや関連企業、研究開発(R&D)機関がオートウェアを導入しやすい体制を整える」(加藤氏)。
こうした取り組みを通じ、将来的に自動運転ソフトウェアのデファクトスタンダード(事実上の業界標準)の地位を築く。パソコン業界には、プログラムのソースコードをオープン化して自由な改良を可能にしている「Linux(リナックス)」というOSがある。加藤氏は「オートウェアは自動運転業界におけるLinuxのような存在を目指す」と意気込みを語った。
■車両ごとに固有アカウント付与も
オートウェア普及のための新たな国際業界団体の設立に加え、ティアフォー社は自動運転車やコネクテッドカー(つながるクルマ)向けのプラットフォーム事業を展開する。
2017年末から自動運転車ごとにアカウントを付与するサービスを開始しており、このアカウントがあれば、その車両はティアフォー社が提供するすべての自動運転サービスを利用できる。
現時点で利用可能なサービスには、自動運転レベル4(無人運転)対応の遠隔操作ツール、MaaS(乗り物のサービス化)関連ビジネスのための運行管理ツール、完全自動運転に必須となる高精度3Dマップ生成ツールなどが含まれる。今後はさらに高精度3Dマップの配信サービスや自動運転ソフトウェアのアップグレード・メンテナンスなどのサービスも提供する。
自動運転車やコネクテッドカーごとにアカウントが作成されれば、サービス事業者側もこうしたアプリやサービスを車両・ユーザーに提供しやすくなる。
ティアフォー社はプラットフォーム構想を含め、年内に様々な提携や協業などに関する公式リリースを予定している。既に損保ジャパン日本興亜と遠隔型自動運転運行サポートに関する事業を開始。この事業ではティアフォーはオートウェアと連動する自動運転車の遠隔管理(操作・監視)システムを開発・提供している。
■シリコンバレーにも既に進出
ティアフォーは2015年創業で、トヨタ自動車などが参加する「未来創生ファンド」のほか、KDDIやソニーなども出資をしている。2017年12月には一般公道で遠隔制御型の自動運転システムの実験を日本で初めて実施し、レベル4(無人運転)の自動運転に成功している。
【参考】自動運転レベルの定義については「自動運転レベル0〜5まで、6段階の技術到達度をまとめて解説|自動運転ラボ
既にシリコンバレーに活動の拠点を設け、現地の自動運転スタートアップや新興企業と、オートウェアの「デファクト化」に向けた走行実験なども積極的に行っている。ティアフォー社によると、実証実験の走行距離は日本国内を合わせると既に10万キロ以上に達している。
オートウェアは既に100以上の企業や研究機関などが導入しており、既に世界で最も注目を集める自動運転ソフトウェアの一つに数えられている。日本や米国だけではなく、中国や欧州でも導入が加速しており、新たな国際業界団体を設立することをより普及が拡大することが期待されている。
【参考】オートウェアのプロジェクトサイトからは実際にプログラムのソースコードがすべて無償でダウンロードできる。また、ティアフォー社のウェブサイトでは、アカウントと連動するオートウェア自動運転向けのサービスが提供されている。詳しくは「オートウェアサイト」と「ティアフォー社ウェブサイト」も参照。
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