自動運転への対応度、日本がトップ10入り KPMGがランキング発表

首位は2年連続でオランダ

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もっとも自動運転社会の実現が早い国はどこだろうか——。

世界4大会計事務所の一つとして知られるKPMG(本部:スイス)は、2018年から2回目になる「自動運転車対応指数(AVRI)2019」を2019年2月24日までに発表した。世界1位は前回調査に引き続きオランダで、日本は前回の11位から1位順位を上げ、トップ10入りを果たした。

AVRIは日本を含む25カ国を対象に行われた。4項目の評価ポイントを総合してランキングが作られており、評価の4項目とは「Policy and legislation(政策と法整備)」「Technology & innovation(技術とイノベーション)」「Infrastructure(インフラ)」「Consumer acceptance(消費者受容度)」だ。

日本は「政策と法整備」が15位、「技術とイノベーション」が5位、「インフラ」が3位、「消費者受容度」が18位となっている。日本は「技術とイノベーション」分野で高く評価された一方、「政策と法整備」と「消費者受容度」において厳しい評価を受けた。

日本に対する各項目の評価を具体的にみていこう。(レポートは「https://assets.kpmg/content/dam/kpmg/xx/pdf/2019/02/2019-autonomous-vehicles-readiness-index.pdf」からダウンロードできる)

出典:KPMGレポート
■政策と法整備:12位から15位に

4つの評価基準の一つである「政策と法整備」では、順位を12位から15位へ下げた。レポートでは、日本では高齢化社会が進行し、自動運転車が高齢者のニーズに応えられるとした上で、一層の法整備や規制緩和が必要だと指摘されている。

日本では今国会で道路交通法改正案が審議される予定だ。改正案では、自動運転車による運転を「運転」と認めるほか、自動運転の作動を確認するための記録装置や警察官の求めがあった場合に記録を開示しなければならないルールなどが盛り込まれる見込みとなっている。

また運転者のスマートフォンの使用を自動運転中に限り一定条件の下で認め、自動運転レベル3(通常時は自動運転システムが運転し、緊急時は人がシステムと交代するという段階)の車両が日本の公道を走行できるようにする見込みだ。

■技術とイノベーション:7位→5位に

日本は技術とイノベーション分野で5位と高く評価されており、自動運転技術の分野で最も多くの特許を持つ国として紹介されている。

「世界のトヨタ」を擁する日本。最近ではトヨタが自動運転・運転支援技術として「ガーディアン」「ショーファー」の開発状況を発表し、世界に向けて改めて「日の丸メーカー」の技術が強烈に示された。

名古屋大学発スタートアップのティアフォー社が開発するオープンソースの自動運転OS(基本ソフト)「Autoware」も、世界からは日本が誇る自動運転技術の一つとして注目を集めている。

■インフラ:3位のまま変わらず

インフラ分野では、前回に引き続き3位と評価された。4G通信のカバー率の高さや道路インフラ網などが高い評価につながった。

通信インフラの面では、同時接続性や超低遅延性などの特徴も持つ次世代高速通信規格「5G」の実証実験も国内で進んでおり、自動運転車の安全な走行環境作りに官民が取り組んでいる状況だ。

■消費者受容度:16位→18位に

自動運転化社会に対する消費者受容度において、日本は16位から18位と順位を下げた。

第一生命経済研究所の主席研究員である宮木由貴子氏が2018年に発表したレポートの中では、半数近くの日本の消費者が自動運転の開発・普及による社会の変化に対して不安を抱いているという調査結果が示されている。

消費者の受容度が低いままでは、自動運転のレベルが上がるにしたがって公道における実証実験の実施に対する支持が得られなくなるほか、低い購買意欲が自動車業界に与える影響も無視できない。そのため、国も社会受容度を高める取り組みに今後力を入れていくとしている。

■日本で自動運転社会を実現するために

KPMGパートナーの井口耕一氏は、日本において自動運転車を実現するためには、現行制度の問題や降雪、地震など災害に対する技術的課題にも直面するとした上で「道路やトンネル、橋梁などの老朽化した公共インフラの問題とそれらの維持費の問題もまた深刻な課題」としている。

今後の規制緩和や各社の取り組みについては「日本には2020年東京オリンピックという素晴らしい機会がある。これは、自動運転車の実用化を今後数年で一気に加速させる可能性を示しています」としている。

公道での自動運転車の実証実験は既に日本国内でも活発に行われるようになってきている。自動運転は次の自動車業界のビジネスの柱となる巨大産業だ。国同士の開発レースに出遅れないためにも、官民が力を合わせながら自動運転に関する環境を整えられていくことが求められるだろう。

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