まるで北九州版Woven City!スーパーシティ構想、自動運転や配送ロボ実証へ

国に提案!BOLDLYや楽天らも参画

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出典:北九州市・スーパーシティ提案書

福岡県北九州市は2021年4月、国が進めるスーパーシティ構想に「北九州市・東田 Super City for SDGs構想」を提案した。採択されれば、大幅な規制緩和のもと自動運転をはじめとしたさまざまな実証が加速し、社会実装に大きく近づいていくことになる。

この記事では、自動運転やMaaS実証を見据えた同市のスーパーシティ構想の内容を解説していく。

▼先端技術による未来都市づくり「スーパーシティ構想」を国へ提案しました|北九州市
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/kikaku/28500180.html

■スーパーシティ構想とは?

スーパーシティ構想は、AI(人工知能)やビッグデータなどの先端技術を活用し、分野横断的なデータ連携のもと生活全般にまたがるさまざまな分野で先端的サービスを提供するなど、住民が参画し、住民目線で2030年頃に実現される未来社会の先行実現を目指す取り組みだ。

国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案、通称「スーパーシティ法案」が2020年5月に成立し、国は大胆な規制改革や予算措置のもと先行実施する地方公共団体を2021年4月まで募集していた。

内閣府によると、31の地方公共団体(エリア)から応募があり、同年5月以降に専門調査会や国家戦略特区諮問会議などを通じて検討委し、対象となるエリアを特区指定する。

■北九州市のスーパーシティ構想
ものづくりの街を未来都市に

北九州市におけるスーパーシティの舞台は「東田地区」だ。同市は、1901年の官営八幡製鐵所の操業開始以来、鉄鋼や化学といった重化学工業を中心に日本の高度経済成長を担い、近年は環境エネルギーやロボット、情報通信など多くの産業が集積する「ものづくりの街」として発展している。

とりわけ、東田地区は日本初の近代高炉が立地した産業革命の地で、製鐵所跡地における環境をテーマとした持続可能な街づくりなど、これまで技術や人材、ノウハウなどさまざまな地域資源が蓄積されているという。

これらの地域資源を基盤に更なる経済活性化や課題解決を図るため、また、先端技術による未来都市づくりのリーディングシティを目指し、「北九州市・東田 Super City for SDGs構想」を提案した。

東田地区は面積約120ヘクタールで、居住人口約1,600人、観光客数年間約71万人。世界文化遺産に登録されている官営八幡製鐵所旧本事務所や、東田第一高炉などが位置する。かつては宇宙のテーマパーク「スペースワールド」も運営されていた。閉園後の跡地には、イオングループの「THE OUTLETS」が2022年春にオープン予定で、グループ最大クラスの太陽光発電パネルの設置が計画されるなど、低・脱炭素社会の実現に貢献する構えだ。

3次元地図と5Gといったデジタルインフラを整備

構想の柱には、デジタルインフラとなる3次元地図と5Gの活用を据えている。現実空間の多数のセンサー情報を5Gで超高速・低遅延で通信するほか、サイバー空間上の3次元地図と連携させたAI処理を行うことで、自動運転モビリティやロボット、ドローンなどによる陸上や空の安全な移動ルートを設定する。

案としては、自動運転車や遠隔型自律飛行ドローン、遠隔型自動宅配ロボット、視覚障がい者歩行支援、福祉向けの自動運転サービス、自律走行盲導犬ロボットなどの導入を考えているようだ。

5Gの活用に当たっては、2020年1月にNTTドコモと5Gやビッグデータの活用によるSDGs達成に向けた連携協定を結んでおり、同地区の5Gエリア化計画は着々と進められている。

東田MaaSでは自動運転機能を備えたパーソナルモビリティも導入

IoTによるデータ連携・先端的サービスでは、以下の6点などに取り組む。

⑤では、視覚障がい者支援に先端技術を活用する。第1段階として、周辺の状況を画像データとして取得することができるスマートグラスを導入し、画像と歩行空間ネットワークデータ、位置情報などと合わせて経路や障害物を音声で通知する。

次フェーズでは、自律誘導型のロボットを導入する。スマートグラスの機能に加え、オンライン歩行ナビシステムや制御システム、データ収集サブシステムなどを備えたロボットを導入することで、ロボットが周辺状況をセンシングしながら障害物を回避し、自律走行機能によって目的地までスムーズに誘導する。

また、車いすタイプの自動運転モビリティの導入も検討する。利用者情報と施設情報に基づき、利用者の体調や嗜好に合わせて行き先を対話で相談したり、施設内の3D地図を活用して自己位置を管理し、目的地までの最適ルートを自動運転で案内したりする。

まずTHE OUTLETSやイオンモール八幡東で実証実験を実施し、将来的には5Gの活用と公道を介した施設間移動を実現するとしている。

出典:北九州市・スーパーシティ提案書

⑥では、西鉄バス北九州や北九州産業学術推進機構などの協力のもと、スマートバス停の設置やEV(電気自動車)オンデマンドバス・パーソナルモビリティの導入などを進める。スマートバス停は、複数の交通機関の運行状況や地域情報などをデジタルサイネージで表示する機能を備える。

また、AIによって乗客ニーズに応じた効率的な経路等を導き出してフレキシブルに運行することができるEVオンデマンドバスや、周遊性をいっそう高め自動運転で出迎え・帰還可能なパーソナルモビリティを導入し、MaaSアプリとの連携を図っていく方針だ。

出典:北九州市・スーパーシティ提案書
自動運転や自動配送ロボットの実証も加速

先端技術の実証・実装フィールドとしては、以下の導入を進めていく。

①では、運転手同乗または遠隔型システムで、施設内や公道におけるレベル2~4相当の自動運転導入可能性に関する実証実験を実施し、周遊性・利便性の向上によるエリアの魅力向上やドライバー不足の解消などを図っていく。

同市は2016年にソフトバンク傘下のSBドライブ(現BOLDLY)と自動運転技術を活用した地域密着型コミュニティーモビリティーの社会実証・実用化に向け連携協定を結んでおり、2018年に北九州学術都市周辺道路で先進モビリティの自動運転バスを用いた実証などをすでに行っている。

②では、ゼンリンやKDDIの協力のもと、スマートドローンプラットフォームを構築し、測量やインフラ点検、防災、物流、観光などの各分野で自律飛行型ドローンの利用可能性を検証していく。

④では、楽天グループやゼンリンの協力のもと、自動配送ロボットを活用し、エリア内の住民や公園来訪者などを対象に商品配送する実証実験を実施し、ドライバー不足や宅配貨物量の急増に対応可能な物流体制を構築していく。

出典:北九州市・スーパーシティ提案書
■北九州市のこれまでの取り組み

北九州市は地方創世特区第2弾として2016年に国家戦略特区に指定されている。モビリティ関連では、2018年に国と共同開設した北九州高度産業技術実証ワンストップサポートセンターのもと実証実験の実施をワンストップでサポートしており、2020年には西日本鉄道がJR朽綱駅と北九州空港を結ぶ路線バスルートで中型自動運転バスの実証を行っている。

【参考】自動運転バスの取り組みについては「自動運転バス、最新動向まとめ!2020年の実証実験は既に10件超」も参照。

MaaS関連では、トヨタと西日本鉄道、JR九州によるMaaSアプリ「my route」の本格サービスが2019年11月にスタートしている。

同アプリではナビタイムジャパンがルート検索エンジンの開発を担っているが、これとは別に北九州市は2019年6月にMaaS実現に向けジョルダンと包括連携協定を締結しており、北九州市営バスダイヤデータの標準化の実施やオープンデータ化の検討、1日乗車券などのデジタル化・デジタルフリーパスの検討、MaaSアプリの二次元コードによる運賃精算の検討などを進めている。

【参考】my routeについては「トヨタのMaaSサービス「my route」を徹底解説」も参照。

■【まとめ】スーパーシティ構想とともに自動運転も加速する

自動運転の実用化を加速するためには、大幅な規制緩和とともに法整備前の先端技術導入を促進する実証・実装フィールドの存在が欠かせない。北九州市をはじめとするスーパーシティ構想応募団体の多くはこうした実証の場を確保しているものと思われ、先端技術の実用化に向け中心的な役割を担っていくことになる。

31団体のうち、採択を受ける地域はどこになるのか。また、各地域の取り組みに自動運転関連は盛り込まれているのか。推測だが、2021年夏ごろまでに採択の可否が発表される可能性も考えられるため、近々の動向に注目していきたい。

【参考】スーパーシティについては「自動運転も前進!成立した「スーパーシティ法」とは?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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