次世代自動車向けソフトウェアを開発する米Cerence(セレンス)が、韓国の電子機器大手LGとパートナーシップを締結したことが、2020年1月26日までに発表された。
LGのウェブOSで稼働する車載インフォテインメント(IVI)システムと、セレンスのターンキー型車載音声アシスタントのCerence ARK(AI Reference Kit)を統合し、新しいソフトウェアソリューションの開発を共同で行うという。
報道発表によれば、ドライバーや同乗者の音声コマンドによって車の機能やナビゲーション、豊富なマルチメディア・コンテンツをよりコントロールしやすくするというソリューションのようだ。
■ジェスチャーでフロントガラスに投影された情報を操作!?
最近業界内でセレンスという名を頻繁に聞くようになったが、セレンスとはいったいどんな会社なのだろうか?
セレンスは2019年10月、車載機器のAI音声認識技術を手掛ける米ニュアンス・コミュニケーションズからの分社化によって設立された。ユーザーの心を動かす体験を創り上げることをモットーとし、大手自動車メーカーと提携しながら自動車業界向けの独自ソリューションの開発に取り組んでいる。
具体的な専門領域は、AI(人工知能)や言語理解、声紋認証、ジャスチャーと視線の検知、AR(拡張現実)などだ。
2020年1月に米ラスベガスで開催された技術見本市「CES 2020」では、車両と乗客の対話を可能にする自動運転EV(電気自動車)バス「e.GO Mover」を発表し、ジェスチャーでフロントガラスに投影された情報を操作する技術も注目を集めた。
さらに、センレンスは将来有望なPOI(Point of Interest)という技術の開発にも取り組んでいる。クルマに乗る人の目線や話した言葉から外の景色の中でその人が関心を寄せる対象物(=POI)が見つけ出せれば、窓ガラスをディスプレイ化したときによりその人の興味・関心に合わせた情報を提供することが可能になる。
■自動運転時代は窓がディスプレイ化、コンテンツ配信やUX開発が重要に
こうした取り組みを進めているのは、自動運転車では窓ガラスがディスプレイ化し、コンテンツ配信されるようになると言われているからだ。システムに運転を任せれば人が外を常に見ている必要はなく、透明化できるディスプレイを窓の代わりに当てはめられることが考えられる。
そのため自動運転時代を見据えた車中エンタメコンテンツの提供や車中におけるUX開発は今後非常に重要なってくると考えられており、手動運転も必要である現在では人による運転の安全性確保に対しても配慮をしつつ、今回セレンスが発表したような新たなインターフェースなどの開発は今後業界全体で進んでいくはずだ。
そしてまさにこの領域のど真ん中を攻めてきているのがセレンスだ。今後もどのような新技術が発表されるのか注目される。
【参考】関連記事としては「ついにフロントガラスにナビ情報!ジェスチャーで操作可能 米セレンス、AI自動運転化で重宝される技術」も参照。