テスラのロボタクシーが事故を起こしても、何が起きたかは誰にもわからない。米国の安全当局NHTSAに報告された全てのロボタクシー事故報告書で、事故の詳細を記すナレーティブ欄には同じ文言が並んでいる。「REDACTED, MAY CONTAIN CONFIDENTIAL BUSINESS INFORMATION(企業秘密を含む可能性があるため非公開)」。業界では他のロボタクシー企業が安全データを全て公開している中、テスラだけが全件を非公開にしており、事実上の隠蔽だという批判が高まっている。
Fortune誌が2026年5月4日に報じた記事は、この透明性問題を中国の自動運転ライセンス全面停止と並べ、「中国はシステム障害一つで全許可を止めた。米国はロボタクシーが銃撃事件現場に進入しても止められない(China stopped issuing new robotaxi licenses over a glitch. America can’t stop them from rolling into active shooter situations)」という見出しで報じた。世界で自動運転の規制と透明性をめぐる議論が一気に加速している。
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■自動運転ロボタクシーの事故データをすべて隠蔽か
自動運転タクシーを展開するロボタクシー企業はNHTSAへの事故報告義務を負っている。その公開データベースではWaymo・Zoox・Aurora・Nuroはいずれも全件の詳細を公開しており、事故の状況・他のドライバーの行動・シートベルト着用状況まで多段落にわたって記述されている。典型的なWaymoの報告書はこうだ。「Waymo AVは北行きN. 16th Streetの左車線を走行中、横断を開始した歩行者を避けるため停止した」という形で、何が起きたかが第三者にも把握できる内容だ。
テスラはその正反対だ。NHTSAのデータベースに登録されたテスラロボタクシーの事故報告は2026年5月時点で18件に上るが、全件のナレーティブ欄が「REDACTED, MAY CONTAIN CONFIDENTIAL BUSINESS INFORMATION」という同一の文言で置き換えられている。NHTSAの規定上CBI(企業秘密情報)として非公開にすること自体は合法だ。しかしロボタクシー各社の中でこの扱いを全件に適用しているのはテスラだけであり、業界内外からは「事故の実態を意図的に隠している」という批判が上がっている。
テスラのロボタクシーの事故報告は「何が起きたか分からない」
Electrekはこの問題をこう表現した。「テスラのロボタクシーが自転車乗りを跳ねた事実はわかる。何が起きたかはわからない。軽傷者が出た事実はわかる。何が起きたかはわからない。時速27マイルで動物に衝突した事実はわかる。何が起きたかはわからない」。さらに2025年7月の事故では、当初「物損のみ」と報告されたものが5カ月後に「入院を伴う軽傷あり」に改訂されていたことも判明しており、遅延報告という別の問題も浮上している。
【参考】関連記事としては「自動運転のリスク・弱点・安全性は?事故率は?」も参照。
■テスラとWaymoの事故率比較。「監視員ありでも人間の4倍以上」という数字
透明性の問題と切り離せないのが事故率の比較だ。NHTSAのデータとElectrekの分析によると、テスラのロボタクシーはオースティン開始から推計80万マイルで18件の事故を報告しており、1件あたり約44,000マイルという計算になる。テスラ自社のベンチマーク(一般ドライバーの平均:1件/229,000マイル)と比べると約5倍、NHTSAの標準(1件/500,000マイル)と比べると約8〜9倍の事故率だ。
さらに重要な文脈がある。テスラのロボタクシーは全て安全員が同乗し、いつでも介入できる状態だ。それでもこの事故率になっている。対してWaymoは完全無人で1億2,700万マイル以上を走行し、1件あたり約98,000マイルという事故率実現。研究では人間比で負傷事故を80%削減という実績も示されている。ただし、テスラが詳細を非公開にしている以上「どんな状況での事故か」がわからず、単純な数値比較には限界がある。
一方Waymoは透明性という点ではテスラと正反対の姿勢を取っており、サンタモニカで子どもへの接触事故が起きた際も全詳細を公開した。「子どもがSUVの陰から飛び出し、AIが即座にブレーキをかけて衝突前に時速17マイルから6マイル以下に減速。人間ドライバーならより高速で衝突していた可能性が高い」という内容で、こうした詳細があるからこそ信頼の議論ができる。透明性がなければ信頼の検証自体ができないのだ。
【参考】関連記事としては「【調べてみた】自動運転の重大事故、「裏方」の企業は?」も参照。
■ロボタクシーは緊急車両の通行を妨げるという課題も
テスラの透明性問題を論じるFortuneの記事は同時に、Waymoにも異なる問題があることを指摘している。2026年2月、アトランタでWaymoが警察の捜査中の犯罪現場をそのまま通過した。その1カ月後、オースティンでは別のWaymoが銃撃事件への対応中の救急車の前を塞ぐ形で進入した。いずれも「緊急時にどう行動するか」というAIの判断の限界を示す事案だ。
さらに2025年12月20日、サンフランシスコで大規模停電が発生した際、Waymoの多数の車両が路上で立ち往生し、緊急車両の通行を妨げた。SF緊急管理局長のMary Ellen Carroll氏はその後の公聴会で「公安職員が自動運転車を手動移動させる羽目になっている。これは持続不可能だ」と批判した。Waymoはその後ソフトウェアアップデートを実施し、「停電の規模が予想を超えていた」とコメントした。なおサンフランシスコには800〜1,000台のWaymo車両が展開しているとFortuneは報じているが、実際に立ち往生した台数は公式には確認されていない。
【参考】関連記事としては「自動運転の課題は?「事故責任」は誰に?」も参照。
■連連邦法が存在しないことが本質的問題
今回の透明性問題の根底にある最大の課題は、米国には連邦レベルの自動運転安全法がいまだ存在しないという事実だ。NHTSAのCBI規定はそもそも自動車メーカーが競業情報を守るための制度として設計されており、ロボタクシー時代を想定していない。テスラが全件非公開にしても「合法」という状況を生み出しているのは、このフレームワーク自体の問題でもある。
SELF DRIVE Act of 2026という超党派の下院法案が、米国初の連邦自動運転法の制定を目指して議論されている。2026年1月に下院エネルギー商業小委員会で公聴会が開かれた法案の一つだが、成立にはまだ距離がある。なお同様の法案は2017年・2021年にも提出されたが、いずれも成立しなかった経緯がある。中国が1つのシステム障害で全新規許可を無期限停止するという迅速な対応を見せた一方、米国は連邦法がない中でロボタクシーが銃撃事件現場に進入しても止める手段がないという現実がある。
■透明性なき自動運転は信頼を失う
テスラの「全件非公開」は合法だが、それが許されていることに問題がある。Waymoは詳細を公開するからこそ、サンタモニカの接触事故でもAIの判断が正しかったという事実が伝わり、信頼の議論ができる。透明性がなければ信頼の検証自体が不可能で、「安全か危険か」の判断を誰もできないまま車が走り続けることになる。
日本でも自動運転の規制整備と透明性の議論は途上にある。米国での透明性問題と規制の空白は、日本の制度設計への重要な参照事例となる。テスラも含めた業界全体が安全データの開示という最低限の一歩を踏み出し、自動運転への社会的な信頼が着実に積み上がっていくことを期待したい。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)