アルファベット、及びグーグルでCEO(最高経営責任者)を務めるスンダー・ピチャイ氏が2025年第1四半期決算発表会において、Waymoが将来個人向けの自動運転車、つまり自家用自動運転車を販売する可能性に言及したという。
場合によっては、自動車業界に激震が走るビッグニュースだ。これまでWaymoと自動車メーカーは良きパートナーとして関係を構築してきたが、自家用自動運転車の販売方法によっては将来競合する可能性も出てきた。
ピチャイ氏は何を語ったのか。その真相と業界への影響を探る。
記事の目次
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■グーグル/Waymoの動向
個人向け自動運転車を販売する可能性を示唆
ピチャイ氏は決算発表で、Waymoに関して「毎週25万件以上の有料乗客輸送を安全に提供している。これは1年前の5倍に相当する。先四半期にシリコンバレーで有料サービスを開始した。Uberとの提携によりオースティンでの事業拡大を図り、今夏後半にはアトランタでも一般公開する予定で準備を進めている。また、ワシントンD.C.を将来の配車サービス都市とし、マイアミと並んで2026年にサービス開始を目指す」と近々の計画について語った。空港へのアクセスと高速道路での自動運転実現に向けた開発も進んでいるという。
また、Waymoの長期的なビジネスモデルについて問われた際、ピチャイ氏は「将来的に個人所有向けの自動運転車を販売する可能性がある」と述べたという。米メディア各社が報じている。
詳細については触れなかったようだが、これはビッグニュースだ。これまでWaymoは商用車向けに特化したビジネス展開を進めている。主力の自動運転タクシーは、自動車メーカーの既存モデルをベースに自動運転システムを統合する形を採用しており、自動車メーカーサイドから見れば優良顧客だった。
しかし、将来の選択肢として自家用車市場を視野に収めるならば、その方式によって話は変わってくる。
自動運転システムを供給?
最も影響が少なく、これまで以上にWinWinの関係を築けるのは、Waymoによる自動運転システムの供給だ。自動運転車をWaymoが直接販売するわけではなく、自動運転システムをメーカーに販売することで、そのメーカーが自動運転車を販売する手法だ。
ピチャイ氏の発言とニュアンスは異なるが、結果としてWaymoによる個人向けの自動運転車が世に送り出されることになる。この方式であれば、むしろWaymoとの距離を縮めるメーカーが続出してもおかしくはない。
特定のメーカーとパートナーシップ?
第2のパターンは、Waymoが自動車メーカーからこれまで同様車両を購入し、自動運転改造を施した上でWaymoブランドで自ら販売する方法だ。自動運転タクシーを量産する方法と一緒で、それをサービス用途ではなく一般販売するだけ――と捉えれば大きな影響はない気もするが、Waymoとパートナーシップを結んでいないメーカーにとっては無視できない存在になり得る。
既存モデルをベースとするか、オリジナル車両を求めるかの2パターンが考えられる。前者はこれまでの自動運転タクシーと変わらず、自動車メーカー×グーグル・Waymoのコラボモデルのようなブランドとなりそうだ。合弁を設立する手法もあるだろう。
一方、オリジナルモデルの製造を依頼する場合は、グーグル・Waymoブランドの車両として販売されることとなる。かつて米アップルが「アップルカー」を製造委託しようとメーカー各社と交渉していたが、このイメージだ。
仕様・要望によっては交渉が難航することが予想されるが、グーグルブランドによる「グーグルカー」を世に送り出すならば、この手法が一番だ。
いずれにしろ、Waymoと手を組む自動車メーカーは業績アップが望めるが、それ以外の自動車メーカーにとっては脅威となり得る。きちんとした自動車に、世界最高峰の自動運転機能を搭載したモデルが世に送り出されるためだ。
自動車メーカーは現在レベル3領域でしのぎを削っているが、Waymoはこれをいきなり上回る自動運転性能を実装することができる。自動運転領域でマウント争いをしていたはずが、いきなり周回遅れにされかねない。最先端領域で明らかな後れを取ることだけは各社とも避けたいはずだ。
【参考】自動車メーカーのレベル3機能については「「4社目」の自動運転レベル3、またトヨタじゃなかった」も参照。
新興勢力と組んで新たな自動車メーカーに?
自動車メーカー全社が恐れるべき第3のパターンが、Waymo自ら、あるいは新興勢とパートナーシップを組んだうえで正式にWaymoが自動車メーカーとなるパターンだ。
もっとも、Waymoは過去、自ら自動運転車の製造に取り組んでいたが諦めたことがある。一から車両を製造する開発・生産コストは膨大過ぎるため、今後も自ら生産を手掛ける可能性は低い。そのうえでWaymoブランドのメーカーを立ち上げることを考えた際、浮上するのがFoxconnのような車両製造を手掛ける新興勢力とのパートナーシップだ。
FoxconnはEVソフトウェア・ハードウェアのオープンプラットフォーム「MIH(Mobility in Harmony)」を立ち上げ、新規格のEV開発を推し進めている。従来とは異なる製造方法でBEVの量産化を実現し、自動車市場に参入する計画で、すでに数千社がコンソーシアムに参画しているという。
こうした動きは近い将来自動車メーカーの脅威となり得る。どこまでのクオリティを発揮できるか、また価格帯をどれほど抑えることができるかがカギとなるが、成功すれば十分実用に耐え得る性能のEVを安価に市場に送り出すことが可能になる。さまざまな企業がFoxconn(MIH)に製造を発注・委託することで、自動車市場への参入が可能になるのだ。
Foxconn・MIHに現時点でブランド力がないため、当面は安価モデルが主体となりそうだが、MIHにはティアフォーが自動運転開発領域で参画しており、自動運転機能をはじめとした最新機能の搭載もできそうだ。
こうした取り組みに、Waymoがグーグルブランドを引っ提げて連携した場合、その影響は計り知れないのではないか。自動車製造分野におけるイノベーションを掲げるMIHと、自動運転分野でイノベーションを起こしたグーグルが結び付くことで、モビリティ業界に本当の意味での大変革が訪れる可能性がある。
ピチャイ氏は、どのような未来図を描いているのか。非常に気になるところだ。
【参考】MIHについては「世界最強の自動運転連合に!台湾MIH、加盟2,600社突破」も参照。
現時点では自動車メーカーと共存?
ただ、現時点でグーグル・Waymoが既存自動車メーカーと袂を分かってまで独立路線を歩むとは考えにくい。独立路線では、ODD(運行設計領域)の走行エリアを拡大するのに相当の時間を要するためだ。
Waymoがすでにレベル4を実現しているアリゾナ州フェニックスやカリフォルニア州サンフランシスコなど局所的なエリアで自動運転が可能なだけでは、自家用車におけるレベル4としては中途半端で、さらなるエリアの拡大が望まれるのは言うまでもない。
この走行エリアの拡大を自前で行うのは、相当な時間を要する。高精度3次元地図の作成向けに走行し、その上で何度も何度も繰り返し走行して道路環境を把握しなければならないためだ。自社モデルだけでは球数が少なすぎる。
しかし、OEMの協力を得ることができれば話は変わってくる。すでに数十万、数百万台走行している車両の車載カメラからデータをもらうことができれば、効果的に走行可能エリアを拡大していくことができるかもしれない。
こうした手法は、テスラやモービルアイなどがすでに実践している。テスラは自社モデルからデータを収集し、FSDの向上に役立てている。モービルアイも、自社ADAS製品を搭載した各自動車メーカーやオーナーの協力を得てデータを収集し、高精度3次元地図の作成などに役立てている。
Waymoが自家用車におけるレベル4展開を本格化させる気であれば、やはりパートナーとなる自動車メーカーと連携したうえでアクションを起こす可能性が高いものと思われる。
テスラへの対抗心の表れ?
ピチャイ氏が自家用自動運転車に言及したのは、もしかしたらテスラへの対抗心の表れかもしれない。ピチャイ氏はこれまで、テスラについて「テスラは明らかにこの分野のリーダー。テスラとWaymoがトップ2のように思える」と述べるなど、その取り組みと技術を高く評価し、賛辞を送っていた。
一方、テスラCEOのマスク氏はつい先日、記者から自動運転タクシーに関する質問を受けた際、「Waymoの車は非常に高価で生産台数も少ない。テスラ車は、おそらくWaymo車のコストの20〜25%程度で済み、しかも大量生産できる」とし、「現時点でテスラと競争できるところはない。少なくとも今のところ、テスラの市場シェアは99%などとんでもない数字になる」と強気の姿勢を見せていた。
テスラは自動運転タクシーでWaymoを寄せ付けない強さを発揮できるようだ。実態はともかくとして、こうした発言を耳にしたピチャイ氏が、FSDの進化で自動運転自家用車の実現を目指すテスラを念頭に同分野への参入をほのめかした――という見方もできなくなくもない。
予定通り進むとは思えないが、テスラが自動運転タクシー事業を開始すれば両社は正式に比較対象となり、ライバルとなる。異端児が絶対王者をその座から引きずり下ろすのは珍しくない。両社の関係にも今後注目したいところだ。
【参考】マスク氏の発言については「テスラの自動運転タクシー、製造費は「Googleの20〜25%」」も参照。
■Waymoと自動車メーカーの関係
クライスラー、ジャガー、ヒョンデ……
Waymoが最初にパートナーシップを結んだ自動車メーカーはFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ/現ステランティス)だ。クライスラーの「パシフィカハイブリッドモデル」を自動運転タクシーの1代目に採用し、最初の一歩を踏み出した。
その後、ジャガー・ランドローバーと手を組み、ジャガーのBEV「I-PACE」を2代目に採用した。WaymoはBEV化を掲げ、2023年に全車両をI-PACEに切り替えている。現時点で最もWaymoと近しい存在と言える。
3代目には、中国Geely系Zeekrと共同開発した新車両が予定されていたが、米中間の貿易摩擦を背景にパートナーシップの行方は不透明な状況となっている。代わって急浮上したのが韓国ヒョンデだ。複数年にわたる戦略的提携を締結し、BEV「IONIQ 5」に最新のWaymo Driverを統合し、2025 年後半までに路上テストを実施して徐々にフリートに追加していく計画を発表している。
Waymoがどのような基準でOEMとパートナーシップを結んでいるのかは不明だが、BEVは絶対条件となっている。
【参考】Waymoの動向については「Googleの自動運転部門、時価総額が「ホンダ級」に!評価額6.8兆円規模」も参照。
トヨタと急接近
日本勢との関わりが薄かったWaymoだが、2025年4月、自動運転の開発と普及に向けトヨタと戦略的パートナーシップに基本合意したことが発表された。
ウーブン・バイ・トヨタも交え、互いの強みを結集して新たな自動運転の車両プラットフォーム開発における協業を目指すという。協業の範囲、詳細については議論中だが、トヨタの将来の市販車両の自動運転技術の向上をともに模索していくとしている。
また、Waymoもこの戦略的パートナーシップを通じて市販車両向けの技術の一部を導入していく予定という。
憶測だが、将来トヨタが自動運転タクシー向けの新たな車両を開発し、Waymoに採用される可能性もあるのではないだろうか。
Waymoは海外進出の第一歩目に日本を選ぶなどその距離を縮めており、もしかしたら日本でフリートを拡大する際、トヨタ車を採用する――といったことも考えられそうだ。
■【まとめ】トヨタとの協業に注目
自動運転業界で絶対的な地位を確立したWaymo。これまで自動車業界に対する影響はそれほど大きなものではなかったが、自動運転タクシーのグローバル展開、ひいては自家用車市場に参入するとなれば状況は大きく変わってくる。
このタイミングでトヨタとのパートナーシップが発表されたのも興味深い。たまたまと言われればそれまでだが、数年後にとてつもないビッグニュースとなる可能性も十分考えられる。
Waymoの影響力はどこまで増すのか。自動車メーカーとの協業をはじめ、同社の動向に引き続き注目したい。
【参考】関連記事としては「Google/Waymoの自動運転戦略まとめ ロボタクシーの展開状況は?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)