米カリフォルニア州サンフランシスコの住宅事情に、グーグル系の自動運転開発企業Waymoが絡んでいるようだ。米メディアによると、同市内の住宅建設計画地に次々とWaymoが充電ステーションを設置しているという。
これは一体どういうことなのか。住宅需要過多が続くサンフランシスコで何が起こっているのか。自動運転時代の充電ステーションの在り方に迫る。
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■サンフランシスコにおける動向
住宅建設予定地が次々とWaymoのEV充電ステーション・保管場所に
シリコンバレーを抱える米西海岸の主要都市・サンフランシスコでは、需要に住宅供給が追い付かず、住宅取得に億単位、賃貸アパート数十万円は当たり前という状況が続いている。
ゆえに新たな住宅建設計画も盛んなようだが、こうした予定地に次々とWaymoの駐車場・充電ステーションが建設されているという。
地元紙サンフランシスコ・クロニクルは、同市における住宅建設は建設費と金利により停滞し時間を要するが、予定地がEV充電ステーションや保管場所として貸し出されていることもその要因となっていると指摘している。その大部分がWaymoによる利用という。
また、カリフォルニア大学バークレー校で自動運転や公共交通などの研究を行っているMichael Montilla氏は、「サンフランシスコで住宅を建てるコストと難しさを考えると、開発業者が自動運転車の充電ステーションを設置したがる理由はよく分かる」とし、「場合によっては自動運転車の方が収益を生み出す選択肢になりやすいかもしれない」とコメントしている。
どうやら、新たな不動産開発・建設には申請など含め結構な時間を要するため、更地状態が続く。そこに目を付けたWaymoが、空き地を借りまくっているようだ。
おそらく、不動産開発が計画通り進めばWaymoとの契約を終了し開発に着手するものが大部分と思われるが、中には、宙ぶらりとなった計画よりも金払いの良いWaymoに貸していた方が確実な収益となる――といった判断を下す事業者もいるのだろう。
Waymo自体は赤字だが、グーグルを中心とするアルファベットグループへの信頼は厚く、自動運転分野への投資も盛んだ。貸主側がWaymoを取引相手に選ぶ心理も理解できる。
自動運転タクシーには待機場所や充電ステーションが必須
Waymoがどれほどの地代で充電ステーションや駐車場用地を借りているかは不明だが、相場より高く支出している可能性もある。市内のあらゆる場所に待機場所を設ける必要があるためだ。
Waymoはサンフランシスコだけで300台のフリートを抱えていると言われている。全フリートをBEV化した同社にとって充電設備が必須なのは言うまでもないが、何よりも待機場所が必要なのだ。自動運転タクシーは流し営業ができず、配車依頼が入るまではどこかで待機していなければならない。
サンフランシスコのような大都市部においては、都合よく無料で駐車可能な場所は少なく、自ら確保しておく必要がある。また、各所からの配車依頼に迅速に応えられるよう、待機場所を分散して確保する必要もある。
そのため、住宅やホテルなどの開発予定地をくまなくチェックし、一時的であれ待機場所・充電ステーションとして確保しているものと思われる。もちろん、こうした充電ステーション設置にも許可が必要で、設備投資も数千万~億円に上る。
かんたんにペイできるものではなく、こうした面も先行投資として扱い、効率的な配車に向けた待機場所・充電ステーションの在り方などを模索している可能性が考えられる。それだけ待機場所・充電ステーションも重要な要素となるのだろう。
地主や不動産事業者の立場から見れば、いつスタートできるかわからないハイリスクハイリターンの不動産建設よりも、目先の充電ステーションでローリスクローリターンを選択する――といった判断もアリだろう。
充電ステーションに対する投資が加速する?
Cruiseが撤退したものの、サンフランシスコでは他社含め自動運転タクシーの台数はまだまだ伸びていく可能性が高い。小規模な土地の有効活用策としても待機場所・充電ステーションの需要はありそうだ。
マンションやホテルなどの場合、敷地の一角をこうした用途にあてて貸し出すのも一手だろう。自動運転タクシーが今以上にスタンダード化することを踏まえれば、住人や宿泊客へのサービスにもつながる。
現在停滞しているとはいえ、一般乗用車におけるBEV需要も遅かれ早かれ伸びていくことはほぼ間違いない。充電ステーションに対する投資と注目も並行して伸びていくことになるだろう。
日本でも同様の動きが出てくる?
こうした動きは、今後日本でも出てくるのではないか。日本で社会実装が計画されている自動運転タクシーは東京都内に集中している。実用化、そして大規模フリートに至るまで時間を要することになりそうだが、いずれは数百台規模に達する。
Waymoのように全車両をBEV化するかどうかは判断が分かれるところだが、徐々にその比率を高めていくことが想定される。
各車両をローテーションしながら24時間稼働させるものと思われるが、サンフランシスコ同様、走行エリア内に複数カ所の待機場所・充電ステーションが必要になるものと思われる。
配車需要が多いエリアほどこうした場所を確保することは難しく、大規模開発から漏れた小規模な土地や既存駐車場、ホテルやマンション駐車場の一角など、あらゆる場所に開発事業者や運行事業者がささりこんでくるかもしれない。
土地の有効活用の一手段として、こうした利活用も視野に収めるべき日が訪れることになりそうだ。
無人車両ゆえのトラブル懸念も
なお、一時期話題となった「Waymo車のクラクションによる騒音問題」も、発生場所はサンフランシスコ市内のホテル建設予定地だったようだ。予定地をWaymoが駐車場として借りていた際、複数のWaymo車両が互いを認識し、駐車の障害になるためけん制しあってクラクションを鳴らし続けた――というトラブルだ。
トラブルは解決済みだが、Waymoは同地から撤退したという。こうしたクラクションの事例はレアケースだが、初期のフェーズにおいては、無人車両ゆえにさまざまなトラブルが発生することも予想され、その対応が後手に回ることも考えられる。こうしたリスクも頭の中にいれておかなければならない。
【参考】Waymoのトラブルについては「Googleの自動運転車、深夜に「集団クラクション」エラー!住民が不眠症に」も参照。
■充電ステーション関連のトピック
ワイヤレス給電・非接触給電技術が主流に?
自動運転車の充電において欠かせない技術となりそうなのが、ワイヤレス給電・非接触給電技術だ。いちいち人間がコネクタを接続していては無人化の効能が薄れてしまう。所定の位置に駐車するだけで自動的に充電がスタートするシステムはマストと言える。
また、余計な手間を要しないため、駐車中の待機時間に少しずつ充電することもできる。ちょこちょこ充電により、バッテリー容量の削減や長寿命化にも期待されるところだ。
技術的には、電磁誘導の原理で離れたコイル間において電力伝送を可能にする。誘導結合や共振誘導結合、容量性結合、磁力結合、マイクロ波、光波があるようだ。走行中でも給電可能で、道路にコイルを埋設する案なども浮上している。
国内では、2024年にEV向けワイヤレス給電の普及・事業化に向け「EVワイヤレス給電協議会」が設立されている。関西電力、ダイヘン、シナネン、三菱総合研究所、WiTricity Japanの5社が幹事会員に名を連ねており、正会員も2024年12月時点で84社に上る。
EVワイヤレス給電の社会インフラ化の推進、実用化・普及促進の対外発信・啓発、標準化活動の推進を図っていく方針だ。
また、環境省も商用EV利用者向けの「ワイヤレス給電システム導入ガイドライン」策定に着手した。2024年度からの3カ年事業として、バス・トラック・タクシー事業者の商用EVを対象に全国10カ所程度で停車中ワイヤレス給電システムを導入し、実環境における実証を行うという。
【参考】ワイヤレス給電については「「ワイヤレス給電」普及へ協議会!自動運転で「ほぼマスト」の注目技術」も参照。
短時間充電にはやはりケーブルが必要?
短時間で充電したい場合、現行技術ではやはり物理的にケーブルをつなぐ方式に軍配が上がる。こうした観点から、独電機メーカーのシーメンスが2021年、標準化された CCS 充電コネクタを備えたすべてのEVが使用可能な充電自律充電ステーションを発表している。
画像センサーが車両の充電ポートを認識し、その正確な位置と方向を特定したうえで充電ケーブルを正確に接続するという。当然自動運転車にも有用な技術で、短時間で充電を終え回転を速めたいケースで役立ちそうだ。
自動運転充電ロボットも登場
自動運転車に限らず乗用BEVも同様だが、出先で突如バッテリー切れを起こす可能性もある。常日頃から確認していたとしても、想定を超える渋滞に巻き込まれることもある。
こうした際に活躍しそうなのが、充電機器を搭載した自動運転車・ロボットだ。EVのもとに自ら駆け付け、電力を提供する。自動運転車よりも、乗用BEVのほうがメインターゲットとなるかもしれない。
ガス欠同様、こうした事態はBEVの増加とともに十分起こり得る。移動充電ソリューションの需要も間違いなく高まるのではないだろうか。
米EV Safe Chargeや中国ThorPowerなど、米中では製品化に向けた開発がすでに進められている。
充電マネジメントも重要性増す
EVのフリート化には、バッテリー・充電マネジメントの観点も必要となりそうだ。各車両のバッテリー状態を逐一把握し、サービス提供に空きが出ないよう代わる代わる充電を行うなど、一定のマネジメントが必須となる。こうしたソリューションの需要も出てくるものと思われる。
自動運転向けというわけではないが、パナソニックがEV充電インフラソリューション「Charge-ment:チャージメント」サービスを提供している。
EV充電インフラの導入・運用をトータルにサポートするソリューションで、最適な導入支援と運用サポートで電気料金の上昇を抑制し、経済性と環境価値を両立させたEV化を実現するという。
【参考】充電マネジメントについては「自動運転時代、「充電マネジメント」に商機」も参照。
世界の市場規模はすでに3兆円突破、2032年には40兆円規模に
リサーチ企業Mordor Intelligenceは、日本のEV充電器の市場規模は2024年に5.2億ドル(約800億円)、2029年には12.7億ドル(約1,960億円)に達すると予測している。予測期間中(2024~2029)における年平均成長率(CAGR)は19.78%という。
また、Fortune Business Insightsによると、世界のEV充電ステーションの市場規模は、2023 年に 164 億 3,000 万ドル(2兆5,390億円)と推計しており、2024 年に 224 億 5,000 万ドル(約3兆4,700億円)、2032 年までに 2,570 億 3,000 万ドル(約39兆7,260億円)に成長すると予測している。予測期間中のCAGRは 35.6に達するという。
■【まとめ】充電ステーション関連への投資に妙味
既存タクシーと異なり、自動運転タクシーは営業時間内における待機場所も必要で、これが不動産ビジネスにつながるかもしれない――ということだ。
ディベロッパーらが率先して充電ステーションを選択する可能性はそれほど高くないものと思われるが、一時しのぎやスペースの一角をこうした用途にあてることは十分考えられる。
乗用車市場におけるBEV比率もいずれは大きく高まっていくことを踏まえれば、充電ステーション関連への投資を先行して進めておくのも良いのではないだろうか。
【参考】関連記事としては「自動運転とは?分かりやすく言うと?どこまで進んでいる?サービス事例は?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)