米EV大手テスラが、今夏にも自動運転タクシー(ロボタクシー)サービスをテキサス州で開始すると明かした。2026年には全米での展開もスタートさせる。イーロン・マスク氏の野望の一端がついに実を結ぶことになりそうだ。
マスク氏の意向とは裏腹に遅れに遅れた自動運転開発。テスラはどのように自動運転サービスを展開するのか。その戦略に迫る。
記事の目次
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■テスラのロボタクシー最新情報
2025年中にオースティンとカリフォルニア州でサービスイン
マスク氏は、テスラの2024年第4四半期決算報告後の会見で、投資家からの電話会談に応じる形でロボタクシー計画に言及した。
報道によると、テスラはテキサス州オースティンで6月にも無監視の完全自動運転サービスを予定しているという。ここで言う無監視は、ドライバーレスを指す。車内無人の有料ロボタクシーサービスを開始する計画だ。
当面は安全性を重視し、テスラ直営でサービスを展開する。2025年末までにカリフォルニア州でもサービスに着手し、2026年には北米全域、つまり全米にも拡大していくほか、テスラのオーナーがマイカーをロボタクシーとして活用できるようになる――といった見込みを発表したようだ。
なお、業績としては四半期の売上高や粗利益率は市場予想を下回り、2024年の新車販売台数も約179万台で前年を下回る結果となった。
本業で伸び悩むテスラだが、株価は2024年1月2日の終値248.42ドルから12月31日の終値403.84ドルと一年間で約1.6倍に伸びた。投資家にとっては、もはや自動車メーカーとしての単純な成長よりも、ロボタクシーや人型ロボット「オプティマス」など次のフェーズの進捗の方が気になるのだろう。
マスク氏が思い描くビジョンが壮大であればあるほど投資家は惹きつけられ、マスク氏のもとに資金が集まっていく――という流れはまだまだ続きそうだ。
■テスラのロボタクシー事業の概要
オーナーカーを活用した自動運転サービスを発案
マスク氏によるロボタクシー構想は、2016年にはすでに計画されていた。同社が同年発表したマスタープラン2の中で、自動運転車を活用したシェアリングサービスに触れている。マイカーをテスラの共有フリートに追加することで、仕事中や休暇中でも収入を得ることができるようになるとしており、この時点でテスラ独自の自動運転タクシーサービス(自動運転ライドヘイリング)構想は形成されていたのだ。
その後、2019年に開催した投資家デーでロボタクシー構想を大々的に発表し、注目度が一気に増した。
当時の試算では、オーナーがマイカーをロボタクシーとして貸し出した場合、1マイル(1.6キロメートル)あたり0.65ドル(当時のレートで約71円)を得ることができるとしている。
仮に9万マイル(約14万5000キロメートル)走行すれば3万ドル(同約330万円)得ることができ、この分をリース料金と相殺できる。事故の際の責任はテスラが負い、リース契約終了後は車両をテスラに返却する――といった手法を考えていたようだ。
そして2024年10月、満を持してロボタクシー発表会を開催し、オリジナルのロボタクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」を披露した。ハンドルなどを備えない2人乗りの自動運転専用モデルだ。すでにこのサイバーキャブを用いて実証を進めており2025年にテキサスとカリフォルニアでサービスを開始する計画を明かした。量産化は2026年を予定しているという。
サイバーキャブの細かな仕様については触れられておらず、これが商用車限定なのかも不明だ。
【参考】ロボタクシー発表会については「テスラ株に「50%下落」余地?難易度S級の「カメラだけ自動運転」に頓挫リスク」も参照。
ODDはどのように設定されるのか
マスク氏は常々自動運転技術の実用化に言及してきた。その目標時期は1年遅れ、2年遅れ……と遅れに遅れたが、ついに実現する日がやってくるようだ。
自動車メーカー自らが単独で開発した技術による自動運転サービスは世界初で、注目とともに大きな期待が寄せられるところだが、テスラとしてはその技術の真価が問われることになる。
テスラの自動運転技術「FSD」は、現時点ではADASだが、オーナーの利用を通じてデータを収集し、改良を加え続けて自動運転化を図っていく戦略が採用されている。
このFSDが、ついに自動運転化されるということだ。オーナーカーの自動運転アップデートを図る前にまずはロボタクシー車両を自動運転化し、検証を重ねていくのだろう。
サービス提供エリア第一弾はオースティン、第二弾はカリフォルニア州としているが、これがODD(運行設計領域)の関係なのか、許可を受ける上での便宜上のものなのかは不明だ。後述するが、テスラは基本的に走行エリアなどを限定しない自動運転レベル5を目指している。
この方針に沿えば、オースティンなどに限定するのはあくまで便宜上のエリア選別ということになるが、早期実現に向けて方針を変え、オースティンでの実証を強化して特定エリア限定で自動運転を実現する可能性も否定できない。
クオリティを心配する声も
話題性と期待感マックスのロボタクシー事業だが、懸念も多い。テスラの現行FSDを見る限り、無人サービスを安全に提供できる水準に達しているのか?――と問われれば、正直半信半疑にならざるを得ない。
特段ODDを設けず、一般道においてレベル2~レベル2+を実現する技術は目を見張るが、これはあくまでADAS(先進運転支援システム)であり、人間のドライバーをサポートする技術だ。
このFSD使用時、各ドライバーは実際どの程度運転操作に介入しているのかが大きなポイントとなる。ADASとは言え、まったく介入することなく走行し続けることができるならば、その技術水準は自動運転の領域と言える。他方、たまに介入が必要というレベルでは、自動運転に昇華させるのは危険すぎる。
SNSには、FSDを利用するオーナーから賛辞が寄せられる一方、「危うく追突するところだった」「踏切を認識しない」などの声も多数上がっている。
2024年4月には、FSD利用中によそ見をして二輪車に衝突した死亡事故が発生している。太陽光やチリなどによる視界不良時の衝突案件も複数報告されており、NHTSA(米道路交通安全局)が調査を開始するなど要注意システムとして扱われている。
2024年10月には、道路上の鹿を全く認識せず、ブレーキをかけることなく衝突した事案も発生した。
こうしたさまざまな事案への対処を、わずか数カ月で完結したとは思えない。もちろん、数多いるFSDオーナーによる走行距離は膨大なものであるため、走行距離当たりの事故率は意外と低いのかもしれないが、100万キロ走行してもほぼ事故を起こさないレベルの完成度が求められることは言うまでもない。
基本的にODDを設けず、AIとカメラ主体のシステム構成で自動運転確立を掲げるテスラ。しかし、逆光や大気中のチリなど、物理的な視界の悪さにはカメラのみでは分が悪い。前述した鹿との衝突も、LiDARを搭載していればしっかりと検知できた可能性が高い。
また、ODDを設定し、自動運転で走行可能なエリアを制限するのが一般的だが、FSDにおいては明確な制限を設けず、あらゆる環境下で利用できるよう開発を進めている。
人間が目と脳の機能で運転制御を行うのと同様の仕組みで自動運転を実現することにこだわるマスク氏だが、LiDARや高精度3次元地図などを駆使する他社に比べ条件的に不利となることは言うまでもない。自ら難解な道を突き進んでいるのだ。
果たして、テスラはどのクオリティで自動運転サービスを展開するのか。心配が尽きないところだ。
【参考】テスラの事故については「自動運転中のテスラ、「減速せずに」シカに激突」も参照。
当局の自動運転許認可にも注目
当局の許認可も大きなポイントになる。テスラがオースティンで申請する際、テキサス州はどのような条件を付加するのか。また、万が一事故が起こった際、どのような対応をとるのか。
当局が厳しい制限を課した場合など、おそらく性格的にマスク氏は猛反発する。NHTSAなど連邦政府側の機関が介入することも想定されるがお構いなしだ。
通常であればマスク氏のわがままは却下されるところだが、今回は勝手が異なる。トランプ大統領が後ろ盾になる可能性があるためだ。事故を起こしても、「イノベーションのためには多少の事故には目をつぶれ」「人間のドライバーよりは安全」――といった大義名分により、おとがめなしで営業し続ける可能性も考えられる。
一部報道によると、トランプ政権はすでに自動運転やレベル2ADASに課せられた事故報告義務を撤廃する検討を行っているという。
さらには、連邦政府として自動運転走行の統一基準を策定し、各州での展開を容易にする方針も示している。これらの案は、いずれもテスラに有利となるものだ。
マスク氏が「2026年に北米全域に拡大」とするのも、こうした政府の動きを背景としているものと思われる。
マスク氏もトランプ大統領も苛烈な面があるだけにいきなり手のひらを反す可能性もあるが、大統領がマスク氏を擁護すれば逆らえる者はほとんどいなくなる。
マスク氏は、良い意味でも悪い意味でも社会における自動運転の在り方を大きく変えていく可能性を秘めていると言える。
【参考】トランプ政権による自動運転施策については「トランプ氏、自動運転車の「事故報告義務」撤廃へ テスラに”恩返し”か」も参照。
Waymoとの対決も実現?
テスラが自動運転サービス第一弾の地に選んだのは、本社を構えるオースティンだが、同市ではWaymoがすでに実証を積み重ねており、まもなく一般対象の本格サービスに移行するものと思われる。
つまり、このままいけばオースティンでWaymoとテスラが競合することになるのだ。レベル4サービスの実績を積み重ねたWaymoの自動運転技術とテスラの自動運転技術が比較対象となり、優劣をつけやすい環境となる。
Waymoの技術はある程度完成の域に達しており、普通に考えればテスラが見劣りしそうなものだが、これを乗り越えなければ自動運転時代の覇者にはなれない。このWaymo VS. テスラの動向にも要注目だ。
■【まとめ】Waymoとの対決の行方は……?
テスラは自動運転システムの性能をどこまで引き上げることに成功したのか。どのような形で許認可を得ていくのか。そして、Waymoとの対決の行方は――など、注目ポイントは満載だ。
6月という目標時期がまたずれ込む可能性も十分考えられるが、マスク氏の頭の中ではゴーサインを出せる水準に達しているということだ。話題が尽きないテスラだが、2025年はこれまで以上に注目度が高まる一年となりそうだ。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転技術・Autopilot/FSDを徹底分析」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)