米Amazonがついに自動運転タクシー事業に参入する。子会社の自動運転開発企業Zoox(ズークス)が、米カリフォルニア州サンフランシスコとネバダ州ラスベガスの市街地にドライバーレスの自動運転タクシーを今後数週間以内に導入するという。2024年11月11日からは、サービス実用化に向けての実証実験がサンフランシスコで始まっている。
Zooxの自動運転タクシーサービスで用いられるのは、ハンドルなどの手動制御装置を備えないオリジナルの自動運転専用モデルだ。この車両が、2018年にトヨタが発表済みの自動運転モビリティサービス専用車「e-Palette(イー・パレット)」にそっくりなのだ。Amazonが真似をしたという疑惑的な声も出そうなくらい、デザインがよく似ている。
ただし各社が開発する先進モビリティは、同じようなデザインになりがちだ。Zooxの自動運転タクシー専用車とトヨタのe-Paletteは、どんな部分が似ているのだろうか?
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■Zooxの自動運転タクシー専用車の概要
Zooxは「VH6」という自動運転タクシー向け車両を開発しており、2022年7月に自動運転タクシービジネスに参入することが報道されている。
2024年10月に、Zooxの創業者兼CTO(最高技術責任者)のジェシー・レビンソン氏が、自動運転タクシー(ロボタクシー)専用車両の配備の準備が「今後数週間以内」に整うことを発表した。
用いられる車両はボックスタイプで、全長3,630ミリ×高さ1,936ミリのコンパクトな車内に4人が乗車できる。前後の区別がない仕様で、対面方式で乗車するスタイルになっている。乗客は設置されたスクリーンで到着予定時刻やルートの確認、音楽や空調設定などを行うことができる。なおVH6という名称を現在でも使用しているのかは定かではない。
■トヨタのe-Paletteの概要
トヨタのe-Paletteは、世界最大級の技術見本市「CES 2018」において豊田章男社長(当時)により、移動や物流、物販など多目的に活用できるモビリティサービス(MaaS)専用次世代EV(電気自動車)として発表された。箱型デザインによる広大な室内空間が特徴で、荷室ユニット数に応じて全長が異なる3サイズの車両が用意されている。
低床・箱型のバリアフリーデザインによるフラットかつ広大な空間に、ライドシェアリング仕様、ホテル仕様、リテールショップ仕様といったサービスパートナーの用途に応じた設備を搭載することができる。自動運転走行も想定していることから、「自動運転ミニバス」と呼ぶこともできるかもしれない。
2022年1月には、トヨタのオウンドメディア「トヨタイムズ」にて「進化したe-Palette、その全貌を公開」というテーマでe-Paletteの詳細が公開されている。全長5,255×全幅2,065×全高2,760ミリで、乗員はオペレーター1名を含む20名の車両だ。航続距離は150キロ程度となっている。これは、2019年10月に発表された「東京2020オリンピック・パラリンピック仕様」のe-Paletteと同様の内容になる。
現在は社会実装に向け、トヨタの工場で従業員の移動や荷物の搬送、移動販売、工場見学来場者向けなどに活用され実証実験が行われているようだ。本社技術部の構内で従業員が利用するシャトルバスとしても運行されている。また建設中のトヨタの実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」においても、走行が予定されている。
【参考】関連記事としては「トヨタのe-Palette(イーパレット)とは?自動運転EV、東京五輪で事故」も参照。
■自動運転モビリティのデザインは似る運命?
トヨタイムズではe-Paletteについて、「デザインコンセプトを手掛けたのはヨーロッパのデザイン開発拠点『EDスクエア』(フランス・ニース)。基本的にはそのデザインを踏襲しつつ、フロントまわりのデザインを愛らしく思ってもらえるよう、日本のチームで仕上げたのが現在の姿です」と説明されている。
また箱形のフォルムは機能面から導き出されており、「外寸に対して可能な限り広いスペースを実現するために、タイヤを四隅に配してフラットなフロアを採用」しているとある。
Zooxとトヨタの自動運転車両は、サイズはかなり違うものの、運転席がなくハンドルやペダルが設置されていないこと、Pod型のデザインということが共通している。
ただし自動運転専用車としては、仏Navya(現GAUSSIN MACNICA MOBILITY)の自動運転バス「NAVYA ARMA」や、エストニア企業Auve Techの「MiCa」も、Zooxやトヨタの車両にデザインが少し似ていると言えるかもしれない。無印良品を展開する良品計画が手掛ける自動運転モビリティ「GACHA」も、類似のデザインと言えそうだ。
自動運転EVの開発において、最新機能を搭載し使いやすさを追求すると、より研ぎ澄まされたデザインになり、どうしても各社で似たような見た目のモビリティになっていくのか。もちろん、サイズや機能、サービス内容はそれぞれで異なる。デザインの方向性は今後どうなっていくのか、注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転バス・シャトルの車種一覧(2024年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)