「人間は夜、運転禁止」に現実味。夜間の自動運転実証、成功なるか

温泉観光地で夜21時台に公道実証



夜間は歩行者の発見が遅れたり飲酒運転をするドライバーがいたりと、自動車の運転、そして歩行者も事故に巻き込まれるリスクを抱えがちだ。こうしたことを考慮すれば、いずれ人間社会は「人間は夜、運転禁止」というルールを作ることになるかもしれない。


現時点ではそうしたルールを作ってしまうと、あまりにも夜間の移動が不便になるためあり得ないことではある。しかし夜間は人間の代わりに「自動運転AI」が安全にクルマを運転してくれるとしたら、どうだろう。現実味が帯びてくるのではないだろうか。

こうした視点において、佐賀県嬉野市で2024年10月に実施される夜間運行を含む自動運転EVバスの公道実証実験には注目が集まりそうだ。

現在、さまざまな自治体などで自動運転バスの定常運行や実証実験が行われているが、最終便は16時台という場合が多い。人を乗せて21時台にも自動運転車が走行するというのは、全国でもかなり珍しい取り組みだ。

▼嬉野市|今年も自動運転車両が走る!なんと夜間も走る!ぜひ試乗してみませんか?
https://www.city.ureshino.lg.jp/shisei/keikaku/_28638/_30135.html
▼温泉観光地にて初の夜間運行を含む自動運転EVバスの公道実証実験を実施
https://www.atpress.ne.jp/news/410609


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■マクニカや日本工営などがタッグ

嬉野市での自動運転バスの公道実証実験は、マクニカ、福山コンサルタント、日本工営、ケー・シー・エスが嬉野市と共同で行う。

すでに2023年9月に佐賀県で初の自動運転バスの公道実証実験を実施しており、遠隔監視システムの活用による運行上の課題やアンケート調査等により社会受容性などを把握した。そして今回の実証実験では、社会実装時のサービス形態やビジネスモデルを見据えた実証実験を実施し、利用者ニーズや夜間運行の必要性、安全対策、収益性、経済波及効果などについて検証を行うという。

なおこの取り組みは、福山コンサルタント、日本工営、ケー・シー・エスの3社からなる共同企業体が、内閣府の未来技術社会実装事業に選定された「嬉野市未来技術地域実装事業」の運営業務を佐賀県嬉野市から令和3年度より受託し、「来訪者の移動を支えるモビリティサービス」をテーマに、マクニカが提供する自動運転EVバスを今後の観光まちづくりにおける「地域共創シンボル」として地域実装すべく事業を実施しているものだ。

自動運転EVバス運行の様子(※写真は昨年度のもの)=出典:マクニカ・プレスリリース

■駅と温泉街を循環、21時台発の便も

今回の実証実験は、2024年10月5日~10月28日のうち20日間行われる。嬉野温泉駅と温泉街を循環するルートで、運行時間は9~16時台の1日6便となっている。しかし金曜日と土曜日については、夜間も運行する。


夜間便の具体的な時間だが、第7便は嬉野温泉駅停留所を19時5分に、最後の停留所となる福田病院前を20時15分に出発する。第8便は嬉野温泉駅21時発、福田病院前21時50分発となる。

夜間運行時の走行環境イメージ(※写真は過年度のもの)=出典:マクニカ・プレスリリース

この時間帯は日がすっかり暮れており、明かりは街灯のみとなる。そういった中を乗車定員8人の自動運転バスが自動運転レベル2で走行する。自動運転システムは、センサーやレーダーにより周囲の状況を感知し、的確な判断を瞬時に下していく。しかし夜間の自動運転走行はシステムの検出精度が低下し、事故につながりやすいとのデータも米国などで発表されているなど、懸念点もあると言われている。

今回の実証は温泉地であることから、地元の利用者のほか観光客の利用も見込まれている。実用化された場合、便利な移動手段になることだろう。

なおこの実証で使用される自動運転車両は、GAUSSIN MACNICA MOBILITY(旧Navya)の「ARMA(アルマ)」だ。

出典:嬉野市公式サイト

■日本初の夜間の公道実証は静岡県掛川市

ちなみに日本で初となる公道での夜間の自動運転の実証実験を行ったのは、静岡県掛川市と思われる。2022年8月に3次元点群データを活用したデジタル地図と、車両に設置したレーダーのデータを照合して周囲の障害物を感知しながらレベル2で自動運転走行した。

自動運転では、人間がするような居眠り運転や脇見運転といった運転ミスを決してすることはない。常に同じレベルでの運転操作が担保されている。夜間の運転は少しの確認ミスなどが事故につながりやすい。今後、自動運転技術がより高水準なものになるとしたら、夜間のみ人間の運転が禁止で、自動運転のみ許可するといった未来ももしかして訪れるかもしれない。

ちなみに夜間の自動運転に関しては、NVIDIAの過去の取り組みにも注目したい。過去に動画で、アクティブラーニングの取り組みによって、夜間の歩行者を温度で検出し、検出の精度を高める取り組みを紹介した。

またパナソニックは夜間の自動運転に活躍するTOF(Time of Flight)方式の長距離画像センサーを開発・発表するなど、夜間の自動運転を実現するためのセンサー開発も前進している。

■実証実験後の実用化動向にも注目

嬉野市での今回の夜間走行が一定の成果を得た場合、どのように実用化されるのか。そもそも夜間の移動需要はあるのかなど、引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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