「空飛ぶゴンドラ」開発企業、赤字止まらず!エアロネクストの第7期決算

次世代ドローン軸に事業展開するベンチャー



出典:エアロネクスト社プレスリリース

「空飛ぶゴンドラ」の開発企業としても知られ、次世代ドローンの研究開発などを行う株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区/代表取締役:田路圭輔)の第7期(2023年1月〜12月)決算が、官報に掲載されている。

第7期の当期純損失は前期から44.3%赤字額を減らし、1億3,345万円であり、依然として赤字が続く。過去4期の純損益の推移は、以下の通りとなっている。


<純損益の推移>
・第4期:▲1億7,875万4,000円
・第5期:▲1億8,587万円
・第6期:▲2億3,979万3,000円
・第7期:▲1億3,345万5,000円
※▲はマイナス

■決算概要(2023年12月31日現在)

賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 265,328
固定資産 62,994
資産合計 328,323
▼負債及び純資産の部
流動負債 45,572
固定負債 202,355
株主資本 80,394
資本金 100,000
資本剰余金 1,055,024
資本準備金 1,055,024
利益剰余金 △1,074,630
その他利益剰余金 △1,074,630
(うち当期純損失)(133,455)
負債・純資産合計 328,323

出典:官報

■ドローン配送を手掛けるエアロネクスト

2017年設立のエアロネクストは「知的財産と独自技術をベースに、次世代ドローンで社会課題を解決し、新たな価値を提供するテクノロジースタートアップ」だ。「新しい空域の経済化」をビジョンに、産業用ドローン関連技術のライセンス事業や産業用ドローンの共同開発事業を手掛けている。


技術ライセンス事業としては、「4D GRAVITY」を中心とした複合的かつ網羅的な特許網を構築している。これら特許の対象は、4D GRAVITY関連のみならずドローンポートなど周辺技術、物流関連等多岐にわたり、国内だけでなく海外でも積極的に出願・権利化を進めているという。4D GRAVITYは重力や空力特性を最適化することで、安定性・効率性・機動性といった産業用ドローンの基本性能や物流専用ドローンの運搬性能を向上させる、独自の構造設計技術だ。

また4D GRAVITYを搭載した次世代ドローンの研究開発や新たな特許技術を自社開発しており、社外の連携パートナーと機体や関連製品の共同開発や開発受託も行っている。

エアロネクストは革新的なドローン物流を組み込んだ新スマート物流の仕組みである「SkyHub」も展開している。2021年には、この事業を行う子会社NEXT DELIVERYを設立した。

ちなみに冒頭触れた「空飛ぶゴンドラ」は、エアロネクストが2019年10月に発表したエアモビリティの新コンセプト。4D GRAVITYなどの技術を搭載し、「エアモビリティの安全性と快適性を両立し、人々に新たな空の飛行体験を提供することでエアモビリティの社会受容性を高める『現実解』といえるコンセプト」と説明されている。


出典:エアロネクスト公式ブログ

■北海道などでドローン物流プロジェクト開始

エアロネクストはNEXT DELIVERY、電通北海道と共同で北海道新十津川町にてドローンを活用したSkyHubの社会実装を2024年8月に開始した。フードデリバリーサービス「SkyHub Eats」のほか地域の商店と連携した買物代行サービス「SkyHub Delivery」を行っていく。

また同じく8月に、山梨県とNEXT DELIVERY、富岳通運らが山梨県におけるフェーズフリーな地域物流インフラの構築に向けた連携協定を締結したことを発表した。

現在は全国10か所で展開しているSkyHubは、2021年10月に日本で初めて山梨県の小菅村で社会実装された。その後共同配送事業も2023年8月から小菅村・丹波山村でスタートした。中山間地域の物流において、大手物流会社含む複数社での共同配送を実施する事業は全国でも珍しい事例になるという。

今後は、山梨県における2024年問題など平常時の地域の物流ネットワークの強化のほか、買い物弱者対策、災害時の被災地への迅速な物資輸送を可能とするフェーズフリーな地域物流インフラの構築を促進し、県民生活や地域経済基盤の強靱化を行っていく計画だ。

■モンゴルでの取り組みも行うエアロネクスト

空のモビリティでさまざまな社会問題解決に寄与しているエアロネクスト。独自技術と知財戦略、市場創造力をベースにニーズに合ったソリューションを提供している。

2024年3月には、中小企業庁による2023年度 「はばたく中小企業・小規模事業者300社」のDX部門を受賞した。JICAの2022年度「中小企業・SDGsビジネス支援事業」の採択を受け実施した「モンゴル国におけるドローンを活用した医療品配送網構築に係るニーズ確認調査」の活動が認められたものになる。

活躍の幅を広げている同社の今後の展開とともに、次回の決算にも注目だ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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