エアモビリティの開発を手掛ける株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区/代表取締役:田路圭輔)の第6期決算公告(2022年12月現在)が、このほど官報に掲載された。
第6期の当期純損失は、前期から赤字額を29%増やし2億3,979万円であった。過去3期の純損益の推移は、以下の通りとなっている。
<純損益の推移>
・第4期:▲1億7,875万4,000円
・第5期:▲1億8,587万円
・第6期:▲2億3,979万3,000円
※▲はマイナス
記事の目次
■決算概要(2022年12月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:千円)
▼資産の部
流動資産 326,137
固定資産 86,172
資産合計 412,309
▼負債及び純資産の部
流動負債 43,816
固定負債 224,843
株主資本 143,650
・資本金 179,755
・資本剰余金 905,070
・・資本準備金 905,070
・利益剰余金 △941,174
・・その他利益剰余金 △941,174
・・(うち当期純損失)(239,793)
負債・純資産合計 412,309
■新スマート物流「SkyHub」を展開するエアロネクスト
2017年設立のエアロネクストは、産業用ドローンの機体設計構造技術の研究開発のほか、同技術の特許ポートフォリオ開発やライセンスビジネスを手掛けている企業だ。埼玉県越谷市に船渡ドローン研究所、山梨県北都留郡小菅村に山梨研究所を設置している。また、2021年1月にはドローン配送子会社のNEXT DELIVERYを設立した。
NEXT DELIVERYでは、ドローンとトラックなどの陸送を組み合わせた、新スマート物流「SkyHub」を展開している。2021年に物流大手のセイノーホールディングスと共同開発した仕組みで、配送の拠点であり一時倉庫の機能を持つ「ドローンデポ」を拠点に、SkyHubアプリをベースにした配達代行やオンデマンド配送、医薬品配送、異なる物流会社の荷物を一括して配送する共同配送などのサービスを提供している。
■SkyHub、9自治体で社会実装フェーズ
SkyHubはさまざまな自治体ですでに社会実装済みだ。
2023年7月には和歌山県日高川町での社会実装がスタートした。日高川町でのサービスのための配送手段は、軽バンとドローンで、ドローン配送においては主にエアロネクストがACSLと共同開発した物流専用ドローンAirTruckを活用するという。地域の商店と連携した買物代行サービスやフードデリバリーサービスを提供する。
さらに同年8月に石川県小松市でも社会実装が開始した。その後、徳島県佐那河内村と新潟県阿賀町でも取り組みが始まり、社会実装フェーズに入った自治体は全国で9カ所となった。
■モンゴルを足がかりに海外展開も
エアロネクストは2023年3月に、独立行政法人国際協力機構(JICA)の2022年度「中小企業・SDGsビジネス支援事業」において、「モンゴル国ドローン活用した医療品配送網構築に係るニーズ確認調査」が採択されたことを発表した。これは、SkyHubの海外展開に向けての最初の一歩となった。
2023年10月にモンゴルにおけるドローンを活用した配送網構築に向け、モンゴル企業のNewcom Groupやセイノーホールディングス、KDDIスマートドローンと共に「モンゴル新スマート物流推進ワーキンググループ」の発足を発表した。
同年11月には、同国ウランバートル市で、医療定期配送網構築を目指した輸血センターと病院間のドローンによる血液輸送を実施した。その後、Newcom Groupとモンゴルにおけるドローン物流サービスの事業化に向けた連携について基本合意したことを発表した。
さらに、Newcom Groupや、モンゴル国内でコンビニチェーンを展開する大手グループであるCentral Express CVSと、同国におけるドローン物流を含む新スマート物流の事業化に向けた連携について基本合意も行った。SkyHubをベースに、小売流通業界においてドローン配送を含む新スマート物流の事業化に向けて検討することを目的としている。
■ドローンで社会課題を解決する世界を生み出す
エアロネクストは「Design the sky through technology」をテーマに、空が社会インフラとなり、経済化されて、ドローンで社会課題を解決する世界を生み出すために、テクノロジーで空を設計することを使命としている。地上と同様、空も生活インフラとなり経済化するため、プラットフォームを構築している。
特に地方で移動や配送の問題が深刻化している状況において、SkyHubを導入する自治体は今後ますます増えていきそうだ。
【参考】関連記事としては「「空飛ぶゴンドラ」開発のエアロネクスト、純損失1.8億円計上」も参照。