「空飛ぶゴンドラ」開発のエアロネクスト、純損失1.8億円計上

第5期決算、茨城県境町での連携協定に注目



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

エアモビリティの開発を手掛ける株式会社エアロネクスト(本社:東京都渋谷区/代表取締役:田路圭輔)の第5期(2021年1〜12月)決算が、このほど官報に掲載された。

第5期では1億8,587万円の純損失を計上した。第4期は1億7,875万円の純損失で、純損失の額が若干増えた格好だ。当期までの利益や損失の累計である利益剰余金は7億138万円のマイナスとなった。


■エアロネクスト第5期決算概要
賃借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 239,266
固定資産 44,710
資産合計283,977
▼負債及び純資産の部
流動負債 24,788
固定負債 35,254
株主資本223,934
資本金 100,000
資本剰余金 825,314
資本準備金825,314
利益剰余金 △701,380
その他利益剰余金 △701,380
(うち当期純損失 185,870)
負債・純資産合計 283,977

■「空飛ぶゴンドラ」の構想で試作機
出典:エアロネクスト公式サイト

エアロネクストはフライングロボットのほか、人の移動を担うエアモビリティの開発を進めている。

2018年3月に新技術である「4D Gravity」を搭載した360°VR撮影ドローンと宅配専用ドローンを発表した。4D Gravityとは、飛行中のドローンの飛行姿勢や動作に応じた最適な重心を保つ技術だ。

モーターの回転数は均一で、燃費や速度、信頼性など、基本性能が向上する。用途ごとの重心制御も可能で、荷物を傾けないよう水平輸送や、ブレない映像を撮影するために垂直を保つこともできる。


2019年10月には新コンセプトである「空飛ぶゴンドラ」を発表し、安全性はもちろん、誰もが気軽に抵抗なく利用できる快適性も重視して開発を進めている。景色や空を飛ぶ楽しみや開放感を体験できるものだ。空飛ぶゴンドラを具現化したのが「Next MOBILITY」である。

Next MOBILITYの試作1号機は、1人乗りの機体の実際の3分の1サイズのモデルとなっているが、今後複数の人が一緒に搭乗できる機体も発表予定だという。道路を走行するクルマに比べて座る空間がゆったりしており、まさに観覧車のゴンドラが自由に空を飛行するイメージだ。風にも強いため揺れも最小限で、離陸から水平飛行への移行時や垂直離着陸時の安定性も高い。

■茨城県境町でBOLDLYなどと5者連携
出典:エアロネクスト社プレスリリース

2022年10月には、自動運転バスが運行していることで知られる茨城県境町とセイノーホールディングス、ソフトバンク子会社のBOLDLY、自動車運行管理を手掛けるセネックの5者で連携協定を締結している。

境町はドローンや定常運行中の自動運転バス、トラックを組み合わせた「新スマート物流」の実用化へ向けた実証のスタートを発表しており、エアロネクストはその実証に参加している。いずれはドローンだけではなく、空飛ぶゴンドラもスマート物流に組み込まれるかもしれない。


■将来的に何十倍もの利益を出すのなら

前期より約700万円多い純損失を出したエアロネクスト。ただし、先端技術を研究し、その技術をプロダクトとして世に出すための初期投資を、単純に「損失」と考えるのはややナンセンスだ。将来的にそのコストが何十倍、もしくはそれ以上の利益を生み出すのなら、この時期の損失は出てしかるべきと言える。

日本のエアモビリティ業界も盛り上がってきた。同社も業界で注目を集める企業の1社として、注目していきたい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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