カリフォルニア州陸運局は2024年9月5日までに、重量1万ポンド(約4.5トン)以上のドライバーレスの自動運転大型トラックの高速道路での走行を許可する計画を発表した。
ちなみに映画「ターミネーター2」では、悪役のターミネータが乗った巨大トラックがバイクで逃げる少年ジョン・コナーを追うシーンが有名だが、そのトラック「フレイトライナー」は重量が15トンある超大型トラックだ(アメリカの基準では「Class 8」に相当する)。
カリフォルニア州で1万ポンド(約4.5トン)以上のトラックに対する走行許可が出るようになれば、こうした巨大トラックも高速道路を走行するようになる。
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■加州の自動運転大型トラック実用化計画
すでに米国の他の州や中国などでは自動運転大型トラックのテスト走行が行われている。しかしカリフォルニア州では、テストと許可方法に関する規則が確立されるまで、重量1万ポンドを超える自動運転トラックの使用は禁止されている。
カリフォルニア州陸運局は、同州の道路でドライバーレスの大型トラックの走行を許可するためのロードマップを2024年8月末に発表した。開発企業が自動運転トラックのテストを行う場合、セーフティドライバーが同乗し、緊急時などに人間が運転を引き継ぐことを義務づけるという内容になる。
規制枠組み案によると、時速50マイル(約80キロ)以上の道路などで自動運転の商用車の走行が許可される。基本的にはハブ(拠点)からハブへのルートや、複雑でない運行領域での長距離配送が可能になる。ただし安全上の観点から、家庭向け引っ越し業者や乗客を乗せて走るクルマなどは除外される。また特大貨物や危険物、特定の液体などを運ぶ商用車も規制枠組み対象外となる。
最終的には、ドライバーレスでの自動運転走行の実現を目指すようだ。ただし今回提案されたテストと許可プロセス案が最終承認されるのは、簡単ではないようだ。カリフォルニア州では、まずは1年以上をかけて提案された計画についての意見を聞いていきたいとしている。
■自動運転タクシーは加州で実用化済み
自動運転大型トラック実用化に向けての規制枠組み案が発表される一方で、重量1万ポンド以上の自動運転大型トラックの公道での使用を禁止するという法案が議員により最近承認されたようだ。
ただしカリフォルニア州知事は、2023年に運転手のいない自動運転大型トラックが設計通りに運行することを禁止するといった法案に拒否権を発動していた。法案の施行には知事の承認が必要である。知事は今回もまた拒否の姿勢を示しているため、法案が施行されることはなく、自動運転大型トラック実用化に向けての規制枠組み案が進められていく可能性が高い。
カリフォルニア州では、サンフランシスコとロサンゼルスですでにGoogle系の自動運転開発Waymoによるドライバーレスの自動運転タクシー(ロボタクシー)が商用運行している。高速道路限定の自動運転大型トラックと、乗客を乗せて運行する自動運転タクシーでは、安全性などについての検討がそれぞれ違うが、自動運転車に対しての社会受容性は高い地域だとは言えそうだ。同州で自動運転大型トラックのテストがいつから開始されるのか、注目が集まる。
■自動運転トラックの開発企業
自動運転トラックの開発企業としては、既存のトラックメーカーや新興企業が挙げられる。
スウェーデンを本拠とするボルボ・トラックスは、自動運転開発を手掛ける米Aurora Innovationと提携し、北米向けの自動運転実装に共同で取り組んでいる。また中国系スタートアップのTuSimpleは米アリゾナ州を起点に自動運転が可能な物流網を拡大していく方針を掲げている。2024年までに米国全体を網羅する予定のようだ。
そのほか、中国系スタートアップPlusや米Gatik、米スタートアップKodiak Roboticsなども自動運転トラックの開発に取り組んでいる。日本でも三井物産により設立されたT2が、主要物流拠点間を往復する「Lv4自動運転トラック幹線輸送サービス」の提供を目指している。
反対にWaymoは自動運転タクシーによる配車サービス事業に注力するため、自動運転トラックの開発を一時停止することを2023年7月に発表した。
世界で拡大する自動運転トラックの技術開発だが、カリフォルニアでのテスト走行は実現するのだろうか。引き続き注目していきたい。
【参考】関連記事としては「自動運転トラック、日本・海外の開発企業・メーカー一覧(2024年最新版)」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)