テスラの運転支援システム「FSD」(Full Self-Driving)の事故率が、2023年は100万マイル当たり0.21件で、2022年の0.31件から32%減少していたことが、テスラが公開した「2023 Impact Report」から明らかになった。
この資料にはアメリカの平均事故率も掲載されており、2023年は100万マイル当たり1.49件とされている。テスラのFSDの事故率はアメリカの平均事故率の7分の1程度となる。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転タクシー、「発表日」まで残り1カ月!マスク氏の宣言は現実になるか」も参照。
■FSDとAutopilotの事故率を掲載
FSDはテスラが展開している有料オプションで、名称を日本語に翻訳すると「完全自動運転」だが、現時点では先進運転支援システム(ADAS)に分類される。テスラの車両に標準装備されているAutopilotよりは高機能ではあるが、名称から機能に誤解を生じやすい点は最初に指摘しておく。
2023 Impact Reportでは、Autopilotの事故率も紹介されており、2022年も2023年も100万マイル当たり0.18件となっている。以下が資料の148ページで紹介されている表だ。ちなみにアクティブセーフティ機能がない場合の事故率は0.81件と記載されている。
▼2023 Impact Report|Tesla
https://www.tesla.com/ns_videos/2023-tesla-impact-report.pdf
■Googleの自動運転車の方が危険?
この100万マイルあたりの事故率については、Google系の自動運転開発企業であるWaymo(ウェイモ)も数字を過去に出している。
同社が展開している自動運転システム「Waymo Driver」を使用する場合、傷害を伴わない衝突事故の発生件数は100万マイル当たりで2.10件、そして傷害を伴う衝突事故の発生率は100万マイル当たり0.41件としている。
【参考】関連記事としては「Googleの自動運転車、人間比で衝突率57%減 走行データ分析で判明」も参照。
Waymoの公式発表では、人間による運転と比較してWaymo Driverの方が衝突率を「傷害を伴わないケース」で57%減少、「傷害と伴うケース」で85%減少させることができると強調されている。ただ、冒頭で紹介したテスラの事故率と比較するとどうだろう。
FSDの2023年の事故率は0.21件、Autopilotの事故率は0.18件であり、いずれもWaymoの「傷害を伴わない衝突事故の発生件数は100万マイル当たりで2.10件」「傷害を伴う衝突事故の発生率は100万マイル当たり0.41件」よりも低い。
「事故」の定義が両社で若干異なることも考えられるが、いずれにしてもGoogleの自動運転車の事故率は、現時点ではテスラと比較すると「せいぜい同レベル」か「むしろ自動運転車の方が危険」と考えられそうだ。
【参考】関連記事としては「自動運転車の事故、Waymoが62件で最多 米当局が公表」も参照。
■客観的に分析・比較には「数字」が不可欠
このような「数字」で自動運転車や手動運転支援システムの事故率が比較できることは、現時点での自動運転技術の開発レベルを客観的に分析する上で、非常にいいことだ。いずれにしても、しばらくは自動運転車と手動運転車が混在する時代が続くため、両方の技術レベルが順調に高まっていくことが望ましい。
引き続き、各社のこうした分析レポートの発表内容に注目していきたい。
【参考】関連記事としては「自動運転の事故率は?抑止効果は9割以上?」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)