テスラ、本社を中国に移転か 自動運転のテスト認可で現実味

上海でFSDの走行テスト許可を取得

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出典:Dunk / flickr (CC BY-SA 2.0 DEED)

米EV(電気自動車)大手のテスラADAS(先進運転支援システム)である「FSD(Full Self-Driving)」が、中国・上海で走行テストを行う許可を取得したようだ。米メディアが報じている。

同社のCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏は2024年4月に中国を訪問した際に、FSDを中国で本格展開する前のデータ収集として、FSDを搭載した自動運転タクシーを試験走行させることを提案したと言われている。それに対し中国側も前向きな姿勢を示していたようだ。

今回中国での走行テスト許可を得たことにより、テスラと中国の関係性に再び注目が集まっている。破天荒なイーロン・マスク氏なら「結局は口だけ」だとしても、中国移転をにおわせる可能性もあるかもしれない。

■2018年に「Tesla Shanghai」開設

テスラは中国に現地法人「Tesla Shanghai」を2018年に開設、翌2019年にはEVの生産工場「ギガファクトリー」をオープンさせている。

2023年4月には、FSDのβ版の大規模テストを中国で開始する可能性があると、中国メディアが報じた。中国では、全てのテスラ車に基本のADAS「AutoPilot(オートパイロット)」が標準装備されているが、FSDのβ版はまだ利用できない。有料オプションとしては、強化版オートパイロット「Enhanced Autopilot(EAP)」とFSDが用意されている。

中国でのEV販売も順調のように見えたが、2024年1~3月期のテスラ車の販売台数は前年同期比9%減の38万6,810台であった。同社の前年同期比割れは、2020年4~6月期以来、約4年ぶりであった。中国のEVメーカーの売上が好調であったことが主な原因とされている。

ただし2024年3月には、世界最大の電池メーカーである中国の寧徳時代新能源科技(CATL)と、テスラ車向けの高速充電バッテリー開発で協力することを発表するなど、引き続き中国との関係強化に精力的に取り組んでいる印象だ。なおCATLは、米ネバダ州にあるテスラの工場に機械設備を提供している。同州では、テスラがCATLの遊休設備を活用して小規模工場を開設し、バッテリー生産を拡大する計画があるとも報じられている。

■2024年4月以降に関係が進展

マスク氏は2024年4月に中国を訪れ李首相と会談したのに続いて、5月にも金壮竜工業情報化相ら政府高官と会談した。EVや自動運転車などについての意見交換を行ったようだ。また中国商務省の王文濤商務相とは、米中の経済や貿易での協力などについて意見交換したという。

マスク氏はコロナ禍における上海のギガファクトリーへの支援などについて感謝の言葉を述べ、中国の発展状況や潜在能力について高く評価したようだ。そのほか、CATLの会長とも面会したという。

6月には、北京でFSDのテストが許可されたとも報じられている。2024年後半に計画されている大規模テストに先立ち、FSDを搭載した10台のテスラ車がテストされるようだ。

■今は中国との関係強化に集中?

近ごろ集中して中国を訪問し、同国との関係を深めることに注力しているように見えるマスク氏。このままいくと、中国に本社を移転する案も出てくるのでは・・・?などとも考えてしまう。

最近のマスク氏は本国である米国よりも中国を優先しているような印象を受ける。米国では、「FSD(Full Self-Driving)」や「Auto Pilot」という名称が自動運転可能だと誤解を招くとして、長らく議論されている。マスク氏にとっては、米国よりも中国の方がテスラの技術開発について協力的だと思っている可能性がある。

近いうちに中国での戦略についてマスク氏本人から何らかの発表があるのだろうか。

【参考】関連記事としては「テスラに新たな噂!中国で「完全自動運転β版」テスト開始か」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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