米Google系の自動運転開発企業であるWaymo。同社製の自動運転車のリコールが明らかになった。2024年5月にアリゾナ州フェニックスで発生した衝突事故を受けてのものだ。同社はフェニックスのほかカリフォルニア州サンフランシスコなどで自動運転タクシーサービスを展開している。
リコール対象となるのはWaymoの自動運転車全車両で、672台になる。すでにマッピングとソフトウェアのアップデートを終えているという。早急に対策を行ったことにより、今後の自動運転タクシーの現在の運行には影響していないようだ。
■Waymoがフェニックスで起こした事故
Waymoの自動運転タクシーは2024年5月21日、公道を走行中に木製の電柱に衝突した。事故の際、車両はドライバーレスで走行しており、乗客はいなかった。乗客を乗せるためにクルマを停車させていたところ、低速で電柱に衝突したという。通行人などに負傷者はいなかったが、車両の正面が大きく損傷した。
この事故を受けて、Waymoは同社の自動運転車全車両672台を自主リコールし、ソフトウェアアップデートとマッピングの改良を行った。Waymoの自動運転車は自動運転タクシーとして活用されており、車両はジャガーのSUV「I-PACE」に独自の自動運転システムを搭載したものになる。
米メディアによると、Waymoは米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)に提出した書類の中で、今回の事故について「走行可能な路面内にある電柱や電柱のような恒久的な物体を回避する能力が不十分で、衝突のリスクが高まる可能性がある」と説明したという。
今回の件は、道路に縁石や明確な路肩がなく全て路面である状況において、その車道内に電柱が設置されていたために起こった事故だと分析しているようだ。その場合、車両は電柱が表す実際の危険度合いを認識していなかった可能性があるという。
この問題を修正するために、ソフトウェアアップデートでは道路にある電柱または電柱のような物体を容易に避けられるように改良を行った。また道路の端が明確でない場合でも、より明確に定義できるようマップの改善をした。
【参考】関連記事としては「自動運転車の事故一覧(2024年最新版) 日本・海外の事例を総まとめ」も参照。
■現在3都市で「ドライバーレス」で展開
Googleの自動運転開発部門をスピンアウトする形で2016年に設立された企業だ。2018年12月に世界初となる商用自動運転タクシーサービス「Waymo One」を、アリゾナ州フェニックス郊外で一部ユーザーを対象に開始した。
2021年8月からはカリフォルニア州サンフランシスコ、2024年3月からはロサンゼルスでも本格的にサービスを開始し、2024年後半にはテキサス州オースティンにも拡大させていく予定となっている。
最近では、米国のニュース雑誌である「TIME」が発表した「2024年 世界で最も影響力のある100社」に初めて選出されたことが話題になった。
【参考】関連記事としては「Googleの自動運転企業「最も影響力のある企業100社」に選出」も参照。
■Waymoの安全性確保に関する姿勢
自動運転タクシー開発においてライバルであった米GM傘下のCruiseは、2023年10月に起こした事故により全米での運行を停止しており、2024年前半は自動運転タクシーサービス市場で独占状態が続いたWaymo。
しかし2024年5月には、NHTSAによりWaymo車による事故が報告より多く発見されたことが報告されるなど、安全性についての懸念が高まっているようにも見える。ただしこの件については故意の虚偽報告ではなく、報告すべき事案とWaymo側が認識していなかっただけの可能性もある。またサンフランシスコでは、通学途中の児童が交差点で無人のWaymo車にひかれそうになるという事例が相次いでいることが報告されている。
今回のフェニックスでの事故を受けてのリコールの判断は素早く、ソフトウェアアップデートもすでに済んでいるということで、大きな問題にはならないと考えられる。ドライバーレスの自動運転車が実用化され数年経った米国では、自動運転の実装より一歩進んで、自動運転車の走行における安全性確保が重要な課題になってきている。
【参考】関連記事としては「Google、自動運転車の事故で虚偽報告か 米当局、未報告事案を確認」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)