自動運転バスに「イケメンAI車掌」!ChatGPT活用して返答

北海道上士幌町でレベル4実用化見据え導入



出典:TRIBALCON.プレスリリース

自動運転バスにAI車掌を導入するという取り組みが、2024年4月1日から始まる。

サービス設計やキャラクター企画開発を行ったのは、株式会社TRIBALCON.(本社:東京都渋谷区/代表取締役: 生本訓昭)=トリバルコン=だ。同社によると、自動運転バスにAI車掌が導入されるのは全国の自治体で初のことだという。


北海道の上士幌町で運行している自動運転バス車内で、周辺情報の案内やAI音声対話を行い、乗客とコミュニケーションを取る。AI車掌はアニメに出てくるイケメンキャラクターのような若い男性の姿になっており、利用者が話しかけやすいことを目指して開発したという。

■AI車掌導入の背景

上士幌町では、2022年12月から自動運転バスの定常運行を行っている。使用車両はGAUSSIN MACNICA MOBILITY(旧NAVYA)の自動運転バス「ARMA」で、ソフトバンク子会社で自動運転事業を展開するBOLDLYが運行を手掛けている。

出典:TRIBALCON.プレスリリース

自動運転レベル4の実現により将来的に無人走行が可能となった際に、これまで行われてきた車内での会話の機会が減少してしまうという課題がある。そのため同町では地域のコミュニケーションを活性化させる方法を検討しており、AI車掌を導入するに至った。

AI車掌は、「萩音士 清平(しゅうおんじ きよひら)」と名付けられている。上士幌町役場職員が、バス利用者の情報や上士幌町の特徴についてリサーチとディスカッションを行い、キャラクターの年齢や性格を設計した上でキャラクターデザインを制作した。また同町ならではのモチーフを施した衣装デザインになっているという。


この対話型AIキャラクタープロジェクトは、デジタルコミュニケーションカンパニーのスパイスボックスが監修を行い、トリバルコンがアプリのサービス設計とキャラクター企画開発、音声認識を手掛けるアドバンスト・メディアがAI音声対話アバター「AI Avatar AOI」のシステムをベースに開発を進めたものになる。

■イケメンAI車掌ができること

AI車掌には、3つの機能が搭載されている。

1つ目は、バス停留所の周辺情報案内だ。GPS機能と連携して、バス停留所やその周辺情報の自動音声案内を行う。

2つ目はAI音声対話で、AI車掌と自由に会話を楽しむことができる。キャラクターやユーザーに関連する情報をインプットし、不適切な会話を回避するよう設定したキャラクタードキュメントと、制御されたChatGPTのデータベースにより、AIが適切な返答を選択することで、より正確性の高い適切な回答を実現していく。


3つ目はAIスペシャル機能で、バス利用者に親近感を持ってもらうために、AI車掌によるワンフレーズ歌の歌唱や上士幌町にちなんだ早口言葉、じゃんけんなど、特別なコミュニケーションを取ることができるという。

■AI車掌を手掛けたトリバルコンとは?

トリバルコンは、エンターテインメント業界のグラフィックデザインを中心に活動するクリエイティブチームBALCOLONY.のグループ会社として2015年に設立された。3DCGキャラクターを使用したコンテンツの制作・運用のほか、コンテンツに関わるクリエイティブの企画・制作、ウェブサイトの構築、運用、配信やライブイベント製作などを行っている。

今回のAI車掌導入においては、「萩音士 清平」の世界観・話し方・ボイス・ビジュアルイメージなどのキャラクター設定を行い、キャラクターデザイン・AIキャラクターの元となるボイス収録・Live2D制作などキャラクターに関わる全般について企画開発を担当した。

これまでに、茨城県公認Vtuber茨ひよりのAI版をプロデュースしたり、ZONeエナジー公式アンバサダーを手掛けたりといった実績がある。

■2024年度中にレベル4実現予定

上士幌町の自動運転バスは、現在はオペレーターが1名乗車し自動運転レベル2で運行しているが、2024年度中に一部区間での自動運転レベル4の実現を目指している。

レベル4の定義としては、作動継続が困難な場合においても、オペレーターなどの介入を前提としないこととなっている。つまり、ODD(運行設計領域)内においてはドライバーレスを実現することができる水準だ。

今回のAI車掌導入で、同町ではレベル4の実装を本格的に見据えていることが分かる。今後の展開にも注目したい。

【参考】関連記事としては「SoftBank子会社、自動運転バスの累計乗車「10万人突破」目前」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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