有望事業なぜ手放す!?NIDEC子会社、自動配送ロボ事業を譲渡

取得側の武蔵精密工業が発表



出典:NIDEX公式サイト

自動車部品メーカーの武蔵精密工業株式会社(本社:愛知県豊橋市/代表取締役社長:大塚浩史)は2023年8月13日までに、ニデックドライブテクノロジー株式会社(本社:京都府向日市/代表取締役社長執行役員:島野光次)と、無人搬送台車の製造販売事業の譲渡に係る譲渡契約を締結し、同事業の取得について発表した。

ニデックドライブテクノロジーは、2023年4月に「日本電産シンポ」から社名変更した。親会社の日本電産が、ニデックに社名を変更することに伴うものだ。ニデックドライブテクノロジーは1952年に日本初の「無段変速機」メーカーとして誕生し、現在は減速機とプレス機の製造販売を主力事業にしている。


無人搬送台車、いわゆる自動配送ロボットは将来的なさらなる市場有望性が期待されている分野だが、なぜニデックドライブテクノロジーが同事業を手放したのか、また金額にしていくらで同事業を譲渡したのかは発表されておらず、不明だ。

■譲渡契約の内容と狙いは?

武蔵精密工業は社会問題の解決に寄与する新規事業の創出に向け、インダストリーやエネルギーソリューション、ウェルビーイングの各分野において取り組みを進めているという。

インダストリー領域で進めているAI事業では、AI(人工知能)を活用した物流の自動化を推進しており、戦略的パートナーシップを結んでいるイスラエルのSIXAI社と協業し自律走行搬送ロボット(AMR)やAIロボットプラットフォーム「MAESTRO(マエストロ)」の開発と販売を手がけている。

ニデックドライブテクノロジーの無人搬送台車事業は、これまでに培ってきた高いブランド力や無人搬送台車の幅広いラインアップや原価低減力、制御開発や豊富な顧客基盤が強みだという。


武蔵精密工業は今回の事業譲渡により、両社の技術と強みを組み合わせ、AI事業のさらなる拡大を目指すとしている。

■「S-CART」を開発してきた実績
ニデックドライブテクノロジーの無人搬送台車(S-CART)=出典:武蔵精密工業プレスリリース/ニデックドライブテクノロジー公式サイト

ニデックドライブテクノロジーは無人搬送台車として「S-CART」を開発してきた経緯があり、公式サイトでは5種類の製品が紹介されている。高さ16.5〜30センチの低床設計で潜り込み可能な無軌道搬送車や、レーザーセンサーや磁気テープ、ビジョン方式など各誘導方式に対応可能な小型モデルなどだ。

▼無人搬送台車 S-CART|ニデックドライブテクノロジー株式会社
https://www.nidec.com/jp/nidec-drivetechnology/product/search/category/B103/M101/S100/

これらの無人搬送台車の製造販売事業が、武蔵精密工業に譲渡されることになる。


■事業を拡大している武蔵精密工業

武蔵精密工業は2021年1月に、世界初となる電動・自動運転スマートトラクターを製造する米Monarch tractorへの追加出資を行っており、協業を進めている。また2023年8月には、アフリカにおける新たなEモビリティの普及に向け、ケニアのスタートアップ企業ARC Rideにも追加出資している。

今回ニデックドライブテクノロジーの無人搬送台車事業を譲渡されたことで、AMR分野での存在感も強まりそうだ。

工場や倉庫における作業の省人化・無人化において欠かせない自律走行搬送ロボット。自律移動式のAMRは工場内のレイアウト変更などにも対応しやすいといったメリットがあり、開発に力を入れているロボットメーカーも多い。

武蔵精密工業の今後の動向に引き続き注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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