自動運転で注目のMobileye、日本法人が2期連続赤字

第17期は当期純損失1,351万円を計上

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出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

米インテル傘下で自動運転の技術開発を手掛けるイスラエル企業Mobileye(モービルアイ)の日本法人である株式会社モービルアイジャパン(本社:東京都港区/代表取締役:川原昌太郎)の第17期(2022年12月31日現在)決算公告が、このほど官報に掲載された。

第17期の当期純損失1,351万円だった。第16期の当期純損失3,660万円から赤字額を減らしたものの、2期連続の赤字となっている。

<純損益の推移>
・第15期:△610万円
・第16期:▲3,660万円
・第17期:▲1,351万円
※△はプラス、▲はマイナス

■決算概要(2022年12月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:円)

▼資産の部
流動資産 375,265,303
固定資産 45,729,231
資産の部合計 420,994,534
▼負債及び純資産の部
流動負債 436,323,532
固定負債 73,181,270
株主資本 △88,510,268
資本金 100,000
利益剰余金 △88,610,268
その他利益剰余金 △88,610,268
(うち当期純損失 13,515,571)
負債及び純資産の部合計 420,994,534

■自動運転技術を手掛けるモービルアイ
モービルアイのアムノン・シャシュアCEO=出典:インテル

モービルアイは、システムオンチップ(SoC)の開発や自動運転車向けのマップを生成する技術の開発、自動運転システムの開発などを手掛けているほか、最近は自動運転タクシーなど移動サービスの展開も計画している。

同社はエルサレムのヘブライ大学でコンピューターサイエンスを教えていたアムノン・シャシュア氏により1999年に設立された。2004年に同社初のSoCを発表した。これは、現在につながるデバイス「EyeQ」シリーズの第1世代となるものであった。

2017年に米インテルに153億ドルで買収された。それに伴い上場を廃止したが、2022年10月にナスダック市場に再上場を果たしている。

2022年1月には、2023年後半にリリースを予定している次世代SoC「EyeQ Ultra」や、ADAS向けの「EyeQ6L」「EyeQ6H」も発表している。EyeQ Ultraは自動運転専用に設計され、176 TOPSのパフォーマンスを発揮するという。EyeQ6LはEyeQ4の後継で、Q4の55%のサイズで超低電力・高パフォーマンスを発揮する。すでにサンプリングを開始しており、2023年半ばまでに生産を開始する予定になっている。

【参考】関連記事としては「時価総額3.4兆円!Mobileye上場38%高、Intel系自動運転企業」も参照。

■日本企業との関係は深い
出典:Mobileyeプレスリリース

モービルアイは2020年7月に、自動運転関連事業も手掛ける高速バス大手のWILLERとの戦略的パートナーシップを発表した。日本、台湾およびASEANにおけるロボタクシーソリューションを提供するための提携で、モービルアイが自動運転技術と自動運転車両を提供し、WILLERがそれぞれの地域やユーザーに合わせたサービスデザインや規制要件の整理、モビリティの管理、運行会社向けのソリューション開発を担当する。

2022年度に新潟県佐渡市において行われた自動運転実証調査では、WILLERとモービルアイジャパンが協力して参加している。

また2021年5月に、トヨタの複数のプラットフォーム向けのADAS開発ベンダーに独自動車部品大手ZFとともに選ばれたことを発表した。EyeQ4を実装し、ZFのレーダー技術と統合された高度なカメラ技術をトヨタの主要なADASプラットフォームに提供していくという内容だ。

同年12月には、大手商社の丸紅が日本国内でのモビリティ関連ビジネス市場開拓を目的とし、モービルアイとMoovitと業務提携に関する基本合意書を締結した。なおMoovitもモービルアイ同様インテルの子会社で、公共交通機関のシステム事業の開発などを手掛けている企業だ。

丸紅グループが保有しているノウハウやネットワークやモービルアイの先進的なADASシステム、MoovitのMaaSプラットフォームを活用し、日本でMaaS関連サービスの社会実装を目指すという内容となっている。

■ボルシェにも技術提供

2023年に入ってもモービルアイの勢いは衰えていない。3月には中国・上海市の郊外に自動運転専用のテストセンターを開設、中国市場向けの製品開発を行っていくとしている。

また5月には、高級自動車メーカーの独ポルシェとプレミアムADASソリューションの量産に向け、戦略的提携を結んだことが明らかになった。今後ポルシェは、モービルアイの最新ADAS「Mobileye SuperVision」による自動アシスト機能とナビゲート・オン・パイロット機能の提供を行う予定のようだ。

世界中で採用が進むモービルアイの技術だが、日本での取り組みにも引き続き注目だ。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

▼Mobileye公式サイト
https://www.mobileye.com/

【参考】関連記事としては「Mobileye(モービルアイ)と自動運転(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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