トヨタWoven Cityを知るための「4つの数字」

第1フェーズは「2025年」?開発領域は「12」?

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出典:トヨタプレスリリース

建設工事は着々と進められているトヨタの実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」。さまざまな開発パートナーとともに、モビリティを中心にあらゆる領域の技術やサービスを融合させ、社会課題の解決に取り組んでいく場だ。

このWoven Cityに関しては、将来のカギとなりそうな4つの数字が示されている。「708,000平方メートル」「2,000people」「12の領域」「2025年」だ。

この記事では、それぞれの数字の中身を解説し、Woven Cityの将来に迫っていく。

■708,000平方メートル
東京ドーム約15個分を実証都市に

Woven Cityは、静岡県裾野市に位置していたトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地を活用して建設が進められているが、まちづくりを進める将来的な面積として175エーカー=約70.8万平方メートルを計画している。

この面積は、東京ドーム約15個分に相当する。ドーム球場15個分と考えれば、その規模の大きさを多少は想像しやすくなるのではないだろうか。

後述するが、この約70.8万平方メートルを一度に開発するのではなく、数段階に分けて徐々に拡張していく計画だ。最終的にすべての土地を活用するかは定かではないものの、第1段階、第2段階とフェーズごとに拡張され、実証の幅を広げていくものと思われる。

実証や改善を繰り返し、さらに新たな実証に着手する――といったサイクルを踏むWoven Cityは「永遠に未完成のまち」を標榜している。すべての土地を開拓し終わっても、次なる実証に向け躊躇なく再開発を行っていく――といったことも考えられそうだ。

Woven Cityはモビリティのためのテストコース

Woven Cityは、モビリティと社会を結び付けるさまざまな取り組みを行う実証都市だ。次世代のモビリティや都市交通の在り方などを模索する場として、トヨタをはじめ関心を寄せる企業や研究者が参画し、研究を深めていく。

トヨタとしてのWoven Cityの位置付けは「モビリティのためのテストコース」で、都市内の地上・地下に独自の動線を設ける。

地上には、自動運転車のための道と歩行者のための道、歩行者と低速移動するパーソナルモビリティのための道の3種類の通路を設ける。地下にはモノを運ぶための道を設け、物流ネットワークを支える設備を設置する計画だ。

■2,000people
2,000人規模のまち造成へ

Woven Cityにおける実証を有効なものにするためには、実証環境をよりリアルな都市空間に近づけていかなければならない。

実際の都市空間には多くの「人」が生活を営んでおり、さまざまな活動を行っている。この「人」の存在がリアルには欠かせない。

そこで2,000people=2,000人だ。Woven Cityでは、トヨタの従業員やその家族、プロジェクト関係者などをはじめ、実証対象として有効な高齢者や子育て中の家族といった一般人、小売店舗など、約2,000人が居住することを想定している。

商圏としては心もとない数字かもしれないが、2,000人規模であれば生活を送る上での基盤は整い、かつスムーズに実証を行うことができる適正規模なのかもしれない。

一定条件が付されるものと思われるが、一般募集もどこかのタイミングで行われる可能性が高い。こうした情報にも注目したいところだ。

■12の領域
12領域でパートナー企業を募集

トヨタはWoven Cityにおいてモビリティを拡張していく仕組みやサービスの開発を進めるが、さまざまな社会課題を解決していくには、クルマや移動手段という枠を飛び越え、モビリティをさまざまな領域と結びつけ可能性を拡大していくことが重要となる。

そこでトヨタは、モビリティと組み合わせてさまざまな実証を行う領域として以下の12分野を設定した。

これらの各分野においてパートナー企業を募り、コラボレーションなどを図りながらモビリティの可能性を追求し、広く社会課題の解決につなげていく方針だ。

【参考】実証対象の12領域については「トヨタWoven City、実証対象の「12分野」とは?当然、自動運転も」も参照。

ENEOSなどがパートナーに名乗り

Woven Cityはまだ建設中だが、オフィス内で物流に関する実証に着手しているようだ。地下に建設予定の物流センターの模型を作製し、Woven City内における宅配便の流れをシミュレーションしている。

宅配便を積んだトラックが物流センターに到着すると、荷物は配送ロボットに積み込まれる。この配送ロボットが自動運転で地下道を走行し、各戸に荷物を届ける仕組みだ。

パートナー企業との協業も徐々に進みつつある。トヨタはNTTと2020年に業務資本提携を結び、スマートシティビジネスの事業化が可能な長期的かつ継続的な協業関係を構築した。

スマートシティにおいて、ヒトやクルマ、住居、住民、企業、自治体などに係る生活、ビジネス及びインフラ・公共サービスなどすべての領域へ価値提供を行う「スマートシティプラットフォーム」の共同構築を目指しており、先行ケースとしてWoven Cityなどでの実装を図っていく構えだ。

【参考】トヨタとNTTの協業については「トヨタ自動車とNTT、スマートシティで協業 Woven Cityの取り組みを世界へ」も参照。

ENEOSも2021年、Woven Cityにおける水素エネルギーの利活用について具体的な検討を進めることに基本合意し、翌2022年にはCO2フリー水素の製造と利用を推進するため共同開発契約を締結している。

ENEOSによるWoven City近隣での水素ステーションの建設・運営や、水素ステーションに設置する水電解装置で製造したグリーン水素をWoven Cityに供給すること、トヨタが定置式の燃料電池発電機をWoven Cityに設置し、グリーン水素を使用すること、Woven Cityや近隣における物流車両のFC化推進とFCEVを中心とした水素需要の原単位の検証や、需給管理システムの構築、Woven Cityの敷地内に設置予定の実証拠点における水素供給に関する先端技術研究──などを行う予定だ。

このほか、日清食品も手を挙げたようだ。Woven Cityにおける食を通じたWell-Beingの実現に向けた実証について検討を進めることに合意している。

リンナイも水素を燃焼させて行う調理について共同開発を開始している。Woven Cityなどで実証を行い、水素調理によるカーボンニュートラルへの貢献と水素による新たな食の体験の提供を目指すとしている。

【参考】パートナー企業との取り組みについては「動き出すトヨタのWoven City!2022年は「水素」な1年」も参照。

■2025年
第1期工事完了予定、実証に着手

4つ目のキーワードとなる数字は「2025年」だ。トヨタは2024年夏ごろに第1期工事分の建物を完成させ、その後2025年に一部実証を開始する計画だ。第1段階としては360人程度の居住を予定している。

360人規模と聞くと、「なんだ、そんなものか」と思われるかもしれないが、プロモーション用の画像や映像を見ると、4~6階建てほどの建物が立ち並び、結構な規模の街区が形成される見込みのようだ。

映像はあくまでイメージ・コンセプトであり、実際の町並みは異なる可能性も当然あるが、大きく変更されることも考えにくい。第1段階でどこまでの「まち」が姿を現すことになるのか、要注目だ。

【参考】Woven Cityの第1期オープンについては「Woven City、第1期は2024年開業か 初期住民は360人」も参照。

【参考】Woven Cityのイメージについては「トヨタWoven City、住宅は4〜6階の「低〜中層」中心か」も参照。

ウーブン・バイ・トヨタの動向にも注目

すでに水面下で動き出している取り組みもあるだろうが、2025年にはWoven Cityにおける実証が本格始動し、目に見える形で進行していくことになる。

多目的な活用が見込まれる自動運転車「e-Palette」もWoven Cityに導入され、走行実証をはじめさまざまなサービス用途に向けた実証が進められるものと思われる。

また、Woven Cityを統括するウーブン・バイ・トヨタは、ソフトウェアプラットフォームとなる「Arene」や自動運転技術、地理空間データの活用など多方面で開発を進めているが、こうした最新技術をWoven Cityで試す場面も出てくるものと思われる。

■【まとめ】Woven Cityならではの取り組みに期待

2025年に大きく動き出していくだろうWoven Cityがどのように発展していくのか、今から楽しみだ。参画パートナーも今後増加していくものと思われ、世間の注目度も徐々に高まっていくことが想定される。

自動運転関連では、道路交通法改正によりさまざまな場所でレベル4実証・実装が進められていく見込みで、Woven Cityではさらに踏み込んだ実証が行われる可能性も考えられる。Woven Cityだからこそ――といった取り組みに期待したい。

【参考】関連記事としては「トヨタWoven City「永遠に未完成」「人口2,000人」 FAQ分析」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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