自動運転向けLiDAR、「お花見の混雑状況」の可視化に活用

米Ouster製を活用、個人情報を収集せず



出典:岡谷エレクトロニクス・プレスリリース

半導体やソフトウェアの専門商社である岡谷エレクトロニクス(本社:神奈川県横浜市/代表取締役社長:水野治)は、大手建設コンサルタント会社であるオリエンタルコンサルタンツと共同で、3D-LiDARを用いた人流計測ソリューションを導入し、バス停の混雑状況を可視化したことを2023年6月6日に発表した。

これは、日本庭園である三溪園にあるバス停の混雑時における交通上の課題に対する改善策を検討するために、横浜市の依頼により行ったものだ。自動運転技術のセンサーとして採用されている米Ouster(オースター)社製の最新の3D-LiDARを活用したという。


【参考】関連記事としては「LiDARとは?(2023年最新版)」も参照。

■LiDARで人流計測するアプローチ

三溪園は横浜でも有数の観光地で、特にお花見の時期は周辺の道路は車や人で非常に混在する。バス停「三溪園入口」には多くの観光客が並び、道路に人がはみ出すこともあるという。また、このバス停は横断歩道から少し離れているため、横断歩道のない場所で道路を横断する観光客なども見られことも問題になっていた。

これを解決するため、横浜市が混雑時における交通上の課題に対する改善策を検討する目的で、岡谷エレクトロニクスとオリエンタルコンサルタンツが混雑状況把握のための調査を行った。それに用いられたのが、岡谷エレクトロニクスが導入した「人流計測ソリューション」だ。

出典:岡谷エレクトロニクス・プレスリリース

Ousterの3D-LiDARによる点群データに、韓国のSeoul Robotics社のAI(人工知能)分析技術を組み合わせ、物体を検知・識別・追跡することで、広範囲での人の人数や動線、滞留時間などを計測できるソリューションだという。


現地で調査を行ったのは2023年4月1日で、バス停横トイレの屋上に2台の3D-LiDARを設置し測定した。計測する対象は、「15分ごとの滞留人数(バス停看板付近を除く)」「バス停車時刻」「バス追い越し通行車両」「道路横断者」の4つであった。

その結果、バス停ではピーク時の15分間で72人の滞留が確認できた。道路横断者は、測定時間の6時間で延べ144人であったという。

個人情報を収集することなく測定

3D-LiDARを用いたメリットとして、カメラでの計測とは異なり、滞留者や横断者の顔を認識しないため、個人情報を収集することなく測定できるという点がある。人流計測ソリューションにより、混雑状況や滞留時間を数値化、データ化することが可能になった。

■Velodyne Lidarと対等合併したOuster

岡谷エレクトロニクスは、数年前からOusterの3D-LiDARの取扱いを開始している。


2015年設立のOusterは、米国のほかEUやアジア太平洋地域、中東などにも拠点を構えているLiDAR開発大手だ。同社が手掛けるLiDARは、「高解像度」「堅牢性」「低価格」の3つを特徴としている。50カ国に600社以上の顧客を持ち、2022年7月には日本での事業を拡大することを発表した。

2022年9月に、収益性を高めるために約10%の人員削減を行うことを発表した。その後、2023年2月に米Velodyne Lidarと対等合併し、社名はOusterが引き継いだ。

出典:岡谷エレクトロニクス・プレスリリース

■さまざまな場所で活用実績が増えていく?

自動運転に用いられているLiDARは、この記事で紹介したように人流調査などでも活用できる。顔を認識しないため、個人情報の保護も担保できるという点は、今後注目されそうだ。今後、さまざまな場所でこうしたユースケースでの活用実績が増えていくかもしれない。

▼Ouster公式サイト
https://ouster.com/jp/

【参考】関連記事としては「顧客600社の米新興LiDAR企業Ouster、日本で事業拡大へ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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