スマホのカメラで自動運転!産総研が「凄い技術」発表

カメラとIMUを用いた位置姿勢推定システム



スマートフォンを利用したパーソナルモビリティの自動運転=出典:産業技術総合研究所プレスリリース

国立研究開発法人「産業技術総合研究所」(産総研)は、カメラと慣性計測装置(IMU)を用いた位置姿勢推定システム「L-C*」(エルシースター)を開発したことを、2023年5月30日までに発表した。

カメラとIMUは、スマートフォンなどにも内蔵されている一般的なセンサーであり、スマホをセンサーとして利用し、パーソナルモビリティの自動運転などにも応用可能だという。


■照明や天候、景観が変化しても…

自動運転車両の自己位置を推定する技術として、「位置姿勢推定システム」(Visual Positioning System:VPS)の活用が期待されている。

従来、位置姿勢の推定には専用の地図を用いていたが、今回、産総研がL-C*を開発したことで、汎用的な色付き3次元地図とカメラ画像を照合してカメラの位置姿勢を取得できるようになるという。照明や天候、景観が変化しても頑健に位置や姿勢の変化を検知可能なようだ。

さらに、これまでは地図と画像の照合に膨大な計算が必要であったが、新たにIMUを活用し照合間の動きを補間する仕組みを導入したことにより、計算の負荷が高くなる主な原因である照合頻度を30分の1に減らすことができたという。それにより、安価な組み込みPCでも安定して動作するVPSを実現することができた。


■「日本初のレベル4」で貢献

産総研は日本最大級の研究機関で、2001年に設立された。多様な研究領域をもつ総合力を生かし、世界に先駆けた社会課題の解決に向け研究開発を行っている。

自動運転関連への関わりも多く、経済産業省が国土交通省と連携し、自動運転レベル4などの先進モビリティサービスの実現・普及に向けた「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト (RoAD to the L4)」のコーディネート機関に2021年6月に選出されている。

また2020年12月に福井県吉田郡永平寺町の公道にて、遠隔型自動運転システムによる無人自動運転移動サービスの試験運行を開始した。2021年3月からは本格運用をスタートしている。

この取り組みについて産総研は、同町での実証実験で使用する車両に関し、道路運送車両法に基づく運転者を必要としないレベル4の自動運転車として、2023年3月30日付で国土交通省から認可されたことを発表した。これは国内初の事例となった。


その後の5月12日には、道路交通法に基づくレベル4の特定自動運転に関する国内初の許可を取得したことも発表している。

【参考】関連記事としては「自動運転レベル4、国内初認可!運転者を必要とせず」も参照。

■安価な自動運転を実現へ

産総研は今後、今回開発したVPSを、センサーを持たないパーソナルモビリティの自動運転などに応用していく予定だという。搭乗者のスマートフォンをモビリティの「目」として取り付け、その場で自律化するというコンセプトになるようだ。

L-C*を用いて自己位置推定を行いながら目的地へと制御すれば、レーザー距離計などを取り付けた専用車両を使わなくとも、安価に自動運転を実現できるとしている。産総研の今後の取り組みに注目していきたい。

【参考】関連記事としては「自動運転車向けセンサー一覧」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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