車の完全自動運転が実用化された場合、ドライバーは車を運転する必要がなくなる。つまり、自動運転中は、読書や映画鑑賞、ゲーム、仕事などに時間を使えるようになる。こうした将来が来るなら、車載ディスプレイの高度化は確実に進んでいくとみられる。
こうした視点において、将来ニーズが高まる可能性が高いと考えられる取り組みが行われている。「車窓XR」だ。
この技術を開発しているのは株式会社DUAL MOVE(本社:東京都千代田区/代表取締役:佐藤塁)で、同社は自動車などの車窓へのXR表示をはじめとする車載コンテンツの基盤システム開発を手掛けている。
車窓XRは、自動車などの車窓への映像表示を可能にし、車窓越しに見える実際の景色に重ね合わせるXRコンテンツのことだ。なおXR(クロスリアリティ)とは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)、SR(代替現実)といった先端技術の総称のことを指す。
■フロントガラスに恐竜が?
DUAL MOVEが開発する車窓XRは、現在特許申請中の「透過型XR技術」だ。特に車の窓を介して現実世界の風景と、仮想CGオブジェクトを融合させる技術を実現することを目指している。
同社が提案する使用方法では、恐竜の博物館に向かう道筋でリアルなCGの恐竜をフロントガラスに表示したり、飲食店などの店舗を通る際に店名などの表示をしたりなど、運転手だけでなく同乗者も体験可能なコンテンツとなる。
「100年に一度の大変革期」と言われる自動車産業の中で、単なる移動手段としてではなくエンターテインメントとして、自動車の価値が今後変わる新しい技術だ。
■資金調達で開発を本格化
2023年1月に設立されたばかりのDUAL MOVEは、今は研究開発を中心とした事業フェーズのため、事業化に向けて準備を行っている段階だ。同社は、TPR株式会社と株式会社みずほ銀行を引受先とする第三者割当増資による資金調達を実施したことを2023年3月14日に発表した。
これにより、エンジニア人材の獲得とパートナー開拓を進め、車窓XRをはじめとする車載コンテンツの基盤システム開発を進めていくという。
自動運転車が一般化された未来では、車内での過ごし方はこれまでと全く変わってくる。それを見越した技術・サービスを開発する企業が、今後増えていくと考えられる。DUAL MOVEへの注目度は高まっていきそうだ。
【参考】関連記事としては「メタバースだけじゃない!GAFAMが次に狙う「車内エンタメ」の有望性」も参照。