ついに!?トヨタの自動運転シャトル、2年以内に実用化か

Woven City第1期、e-Paletteの導入濃厚

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東京モーターショーでe-Paletteについて語るトヨタの豊田章男社長=出典:トヨタプレスリリース

トヨタの自動運転車の代名詞的存在となっている「e-Palette(イー・パレット)」。徐々に実証の機会が増えているものの、今のところ具体的な実用化の話は出ていない。多目的な利活用が可能なモビリティだけに、その動向には多くの注目が集まるところだ。

そんなe-Paletteだが、2年以内に実用化される可能性が極めて高い。その理由は、静岡県裾野市で建設中のWoven Cityが、第1期実証を2025年にも開始する見込みだからだ。その際、e-Paletteが導入されることはほぼ間違いない。

この記事では、Woven Cityにおける計画を交えながらe-Palette実用化に向けた動向を探っていく。

■Woven Cityにおける計画
フェーズ1実証は2025年開始予定

静岡県裾野市のトヨタ自動車東日本の東富士工場の跡地を活用し、モビリティのための実証・テストコースとして建設が進められているWoven City。実際に人が暮らす環境を一から構築しつつ、モビリティの可能性を拡張していくさまざまな実証をパートナー企業とともに進めていく「実証都市」だ。

2021年に造成工事を開始し、現在は第1期となる「フェーズ1」の建築工事を進めている。フェーズ1の工事は2024年夏ごろに終了し、準備期間を経て2025年に実証が始まる予定だ。

トヨタは、Woven Cityの近況や完成予想図などを定期的に動画でアップしている。CGで製作された完成予想図を見ると、フェーズ1では10棟余りの建物が立ち並び、一定規模の街区を形成することが分かる。計画では、フェーズ1においてはトヨタの従業員やプロジェクト関係者など360人ほどが実際にWoven Cityで生活するとしている。

完成予想図にe-Paletteの姿

また、動画ではe-Paletteのようなモビリティが街を走行する様子や、広場に停車している姿も見て取れる。Woven Cityでは構想段階からイー・パレットを活用する計画が示されており、人の輸送やモノの配達をはじめ、移動用店舗などさまざまな用途で活用する見込みだ。

恐らく、フェーズ1当初からe-Paletteの本格実証に着手するものと思われる。Woven City内は基本的に私有地扱いで、かつ住民はすべて協力者のため、実証環境としては最優良と言えそうだ。

【参考】Woven Cityについては「発見!トヨタWoven City、最新動画に「自動運転シャトル」」も参照。

Woven City周辺の公道における実用化も?

また、Woven Cityを一歩踏み出し、最寄り駅となるJR東海御殿場線岩波駅からの数百メートルのルートにおいて、e-Paletteを活用した自動運転シャトルを走行させる――といった実証などもできそうだ。

お膝元の裾野市は当初「次世代型近未来都市構想」を掲げ、Woven Cityと連携しながら最先端技術の導入を図っていくプロジェクトを推進していた。市長交代などにより構想は廃止されてしまったが、Woven Cityが実際に動き始めることで改めてモビリティに対する意識が変わり、新たな連携プロジェクトが生まれるかもしれない。

少なからず、e-Paletteを一般公道に実装する場合、Woven City近辺でスタート――というのは大きな動機となり得るはずだ。こうした観点にも注目したい。

いずれにしろ、Woven Cityにおいて2025年にe-Paletteが実装されることはほぼ間違いないものと思われる。遅くとも2年後にはe-Paletteの展開が本格化するのだ。

■e-Paletteの概要
多目的用途に向けたMaaS専用自動運転車

e-Paletteは、MaaS専用の次世代EV(電気自動車)として開発が進められている自動運転車だ。CES2020で初めて発表された。モビリティ・カンパニーへの進化を図るトヨタにとって、モビリティの意義や価値を拡大させるため、またモビリティサービスプラットフォーマーとしての存在感を高める上で重要なソリューションとなる。

e-Paletteは低床・箱型デザインによって広大な室内空間を実現しており、人やモノの輸送をはじめ、サービスパートナーの用途に応じてホテル仕様やリテールショップ仕様といった設備を搭載することができる。多目的用途に活用可能な仕様とすることで、モビリティに新たな価値を生み出すことも可能としているのだ。

自動運転機能としては、トヨタが独自開発を進めるガーディアンを搭載するほか、他社製の自動運転制御ソフトウェアやカメラ・センサーなどを搭載して冗長性を高めることもできる。

自動運転キットの開発に必要な車両状態や車両制御インターフェースは開発各社に開示し、MSPF(モビリティサービスプラットフォーム)上で公開するAPIから取得することができる。

e-Paletteを自動運転車としてそのまま導入することもできれば、自動運転向けの車両プラットフォームとして導入し、独自の自動運転システムを搭載するなどカスタマイズすることもできるイメージだ。

東京オリパラやお台場エリアで実証

実証関連では、2021年開催の東京2020オリンピック・パラリンピックの選手村に導入され、開催期間中の村内における選手や関係者の移動を担った。車両にオペレーターが乗車する実質レベル2での運行となったが、知見を積み上げると同時にe-Paletteを広くお披露目する格好の場となった。

2022年2~3月には、東京臨海副都心・お台場エリアにおける実証にも活用された。Mobility Technologiesなどが受託した東京都の「令和3年度自動運転移動サービス実現に向けたサービスモデルの構築に関するプロジェクト」の事業の一環で、シンボルプロムナード公園とセントラル広場間を往復しながら自動運転車両運行・乗車時のUI・UXや車内エンタメコンテンツ、人流の変化などの検証を進めたという。

2023年度からは国内実証が加速?

当初発表では、2020年代前半に米国をはじめとしたさまざまな地域でのサービス実証を目指すとしていた。2018年当時では、日本国内よりも米国をはじめとした海外の方が実証環境が整っていたためと思われるが、2023年4月に改正道路交通法が施行されることにより、日本国内の優位性が大きく高まる。

今後、国内実証が盛んに行われ、MONET Technologiesなどを通じてe-Palette導入を目指す自治体などが出てくるかもしれない。場合によっては、Woven Cityよりも早くサービスインにたどり着く取り組みが浮上する可能性もありそうだ。

■【まとめ】e-Paletteの巻き返しに期待

自動運転業界ではスタートアップの台頭が著しく、自動車メーカー勢が後塵を拝する展開が続いているが、トヨタが独自開発したe-Paletteが今後どのように巻き返していくか注目だ。

また、国内では、ホンダがGM・Cruise陣営とともにサービス専用自動運転車「Origin」導入に向けた取り組みに着手しており、今後「e-Palette VS. Origin」といった構図も生まれるかもしれない。

レベル4実用化に向けた取り組みは、2023年度に大きく動き出すものと思われる。各社の動向に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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