自動運転で岸田首相「2025年めどに全都道府県で社会実験」

レベル4解禁とともに取り組み加速

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出典:首相官邸

岸田文雄首相は2023年1月23日、第211回国会における施政方針演説を行った。自動運転レベル4が正式に解禁される2023年、政府はどのような方針のもと政策を進めていくのか。

岸田首相は、前年に続き演説の中で自動運転に言及した。この記事では、その内容とともに自動運転分野に対する政府の姿勢に迫っていく。

■岸田首相の施政方針演説
2025年めどに全都道府県で自動運転の社会実験を

岸田首相は、地方創生に関する話題の中で「今年4月にはレベル4、完全自動運転を可能にする新たな制度が動き始める。2025年を目途に、全都道府県で自動運転の社会実験の実施を目指す」と自動運転に言及した。

また、イノベーションに関連して「2025年には大阪・関西万博が開催される。空飛ぶクルマなど、未来社会の実験場としてイノベーティブで活力ある日本の姿を世界に向けて発信していく」と話した。

このほか、スタートアップの育成にも力を入れる姿勢を示している。間接的ではあるものの、新興産業である自動運転分野はスタートアップの活躍の場でもある。海外同様、スタートアップが業界をけん引し、自動車メーカーなどを巻き込みながら技術革新と実用化を推進していくような体制は1つの理想と言える。

前年(2022年)は有言実行

なお、前年の第208回国会における施政方針演説では、岸田首相肝いりの「デジタル田園都市国家構想」の中で、「例えば、運転者なしの自動運転車、低速・小型の自動配送ロボットが公道を走る場合のルールや、ドローン、AIなどの活用を前提とした産業保安のルールを新たに定めることで、安全を確保しながら新サービス展開の道を拓く」としていた。

同国会では、レベル4の社会実装などを規定した改正道路交通法が可決・成立し、2023年4月までに改正法が施行されることとなった。これに合わせ、レベル4サービスや自動走行ロボット実用化に関する細かな運用ルールなどの整備も着々と進められている。

既定路線とはいえ、しっかりと有言実行した格好だ。

【参考】過去の岸田首相の発言については「自動運転で岸田首相「新しいルールを作り、市場を新たに作る」」も参照。

■岸田内閣の政策
デジタル田園都市国家構想でも自動運転をピックアップ

デジタルの力で新たなサービスやビジネスモデルを生み出しながら地方創生を図るデジタル田園都市国家構想では、公共交通・物流・インフラにおけるデジタル実装の基本方針として、無人自動運転移動サービスの社会実装の推進や高度な安全運転支援技術の開発・普及、ドローン・空飛ぶクルマの社会実装の推進、自動運転に対応した走行環境の構築などを掲げている。

交通・物流インフラのデジタル化に向け、次世代モビリティ社会実現の鍵となる地域の自動運転サービスや高度幹線物流システム、高度運転支援機能搭載車の普及など、技術開発や標準化、社会基盤構築の検討などについて引き続き関係省庁一丸となって包括的に取り組んでいく。

デジタル田園都市国家構想と関係する施策としては、日本版MaaS推進・支援事業や地域公共交通の維持・活性化事業、無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業、モーダルシフト等推進事業、次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクトなどがある。

物流面ではフィジカルインターネットにも注目

物流におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)関連では、「フィジカルインターネット」の実現にも注目したい。物流リソースに関する情報を、各種インターフェースの標準化を通じて広く共有し、保管や輸送経路の最適化などの物流効率化を図っていく考え方だ。

パレットなど小さな輸送ユニットとなるコンテナの規格化や、コンテナの結節点となるハブ、貨物をやりとりする上での運用の取り決めとなるプロトコルに焦点を当て、輸送機器や物流拠点の自動化・機械化や、物流・商流データプラットフォームの構築などを2040年までに進めていく計画が持ち上がっている。

自動運転技術との相性も良く、フィジカルインターネットに必須の要素として自動運転が融合していくことはほぼ間違いない。今後の動向に注目したい施策だ。

2025年めどに40カ所の自動運転サービス実現へ

自動運転に関する政府の方針としては、官民ITS構想・ロードマップが代表的だ。ロードマップでは、地域限定型の無人自動運転移動サービスを2025年をめどに40カ所以上の地域で展開する目標を掲げている。

自動運転トラックは、物流の担い手不足解消や物流効率の向上に向け、後続車有人隊列走行の商業化を推進するとともに、2025年までに後続車無人隊列走行の商業化も目指す。その上で、2025年度以降に高速道路におけるレベル4の実現を図っていく方針だ。

岸田首相の「2025年を目途に、全都道府県で自動運転の社会実験の実施を目指す」方針は、「無人自動運転移動サービスを2025年を目途に40カ所以上の地域で展開する」を見据えてのものと思われる。目標実現に向け、自治体の導入意欲をどのように掻き立てていくか、また企業などの取り組みをどのように推進していくのか、要注目だ。

【参考】官民ITS構想・ロードマップについては「自動運転、日本政府の実現目標(2022年最新版)」も参照。

■【まとめ】全都道府県における実証に注目

2023年は、レベル4解禁によって自動運転に関する取り組みが大きく前進する見込みだ。2025年めどの40カ所でのサービス実現を目指し、まずは全都道府県で実証が加速するのか注目していきたい。

また、デジタル化による地方創生の取り組みの中で、自動運転がどのように位置づけられ、成果を上げていくのか。こうした観点にも注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転はどこまで進んでいる?(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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