「カーシェアで車中泊」 ひそかなブーム

ホテルより割安?問題はない?



旅行や日常生活などでの気軽な移動手段として、カーシェアが人気だ。しかし、最近は本来の使用目的である「移動」のためではなく、「宿泊」のために使われるケースが増えているようだ。カーシェアの車両を使い、いわゆる「車中泊」をするわけだ。


例えばあるカーシェアの大手サービスでは、夜間利用の場合の基本料金は安めに設定され、あとは走行距離に応じて料金が加算されるシステムとなっている。つまり、カーシェアの車両を停めてある場所で車両を動かさずに寝れば、安い基本料金だけで「宿泊」ができる。

しかも、寒いシーズンに車内を温めようとエンジンをかけて温風を出しても、「走行」はしていないため、ガソリンを消費しても料金としては加算されない。

カーシェア大手のタイムズカー(旧:タイムズカーシェア)の場合、最大で夜9時から翌朝9時まで利用できる「ナイトパック」の基本料金は、一番安いグレードの車両を選ぶと2,640円だ。ホテルに宿泊することを考えると、あなたはどちらが安いと感じるだろうか。

■カーシェア事業者にとっては悩みの種?

カーシェアでの車中泊は、事業者にとっては想定外の利用方法だ。先ほど述べたように、走行距離がゼロなのに車内を温めるためにガソリンだけ浪費されては、たまったもんじゃない。


そしてタイムズカーの場合、タイムズ駐車場に停められている予約車両を利用するのが一般的な流れだが、その車両が停まっていた場所から移動しないことも、事業者にとっては悩みの種となる。1つの駐車スペースに複数のカーシェア用車両を配備することもあるからだ。

タイムズカーは2021年12月28日付で「【お願い】出発ステーションへの一時駐車はお控えください」というお知らせを出している。少し長い文章になるが、読めばどうしてカーシェア事業者が困るのかが分かるので、そのまま引用したい。

タイムズカーご利用中のステーションへの一時駐車に関するご案内とお願いです。

弊社カーシェアリングサービスは、サービス開始当初より、「1つの専用駐車スペースに特定の1車両を配備」しておりました。


しかしながら、現在、予約のしやすさを向上すべく、「1つの専用駐車スペースに、時間帯を変えて複数台のカーシェアリング車両を配備」するサービスをご提供しております。

上記サービスでは、会員様にてタイムズカーご予約時にご希望のクラスや車種を選定いただき、弊社にてご希望条件に合致する車両をご予約ステーションに都度配備するという運用を行っております。

このため、1つの専用駐車スペースから、時間帯を変えて複数台のカーシェアリング車両が出発または返却されることとなります。

タイムズカーは、会員の皆様へできるだけ多くの車両をご提供すべく、今後も上記サービス対応のステーションを増やしてまいります。

ご出発いただいた専用駐車スペースは、他車両の出発場所または返却場所になる場合がございますので、ご出発ステーションであっても、ご利用中のカーシェアリング車両の一時駐車は、お控えいただけますようお願い申し上げます。

これまで、ご出発ステーションを一時駐車場所としてご利用いただいていた会員様におかれましては、ご不便をお掛けいたしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。(出典:https://share.timescar.jp/view/member/information.jsp

■そこに「ニーズ」があるのなら

急な残業などで終電を逃し宿泊場所を探さないといけなくなった場合、ホテルがすぐには見つからず、当日予約は割高な場合もある。

それに対し、カーシェアは夜間利用の場合は空き車両がすんなり見つかることが多い。だから、カーシェアの車両を「ホテル」として使いたくなる気持ちは理解できなくもない。

しかし、こうした状況は事業者側にとってはマイナス面も少なくないため、いずれは何らかの対策が事業者側によって講じられるかもしれない。

ただし逆に考えると、車内泊利用のユーザーニーズがあるのであれば、車中泊利用を前提としたカーシェアサービスが今後誕生する可能性はあるかもしれない。ただしその場合は、旅館業法などのルールに則らないといけないため、もちろん簡単にはいかないと思うが。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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