自動運転中、運転手ができること(2024年最新版)

レベル4でセカンダリアクティビティが大幅拡大

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ハンドルが格納された運転席=出典:アウディプレスリリース

ドライバーレス走行を可能にする自動運転レベル4(高度運転自動化)。従来自動車に付きものだった運転手は必要なくなり、タクシーやバス、トラックなどの商用車から運転手が姿を消すことになる。また、コンシューマー向けの自家用車へのレベル4搭載を目指す動きもあり、レベル4技術の高度化と普及はまだまだ加速していきそうだ。

ただし、ドライバーレス走行が可能になるからといって、運転手の必要性が全てなくなるわけではない。自家用車におけるレベル4などはその代表例と言える。ドライバーレスは、自動運転時において運転操作を行う「運転手」としてのタスクが人からシステムへ移行することを意味する。つまり、運転操作からの解放だ。

運転操作から解放された運転手は、移動時間を有効活用可能になる。この記事では最新情報をもとに、レベル4以降の自動運転において、運転手が新たに許容されるだろう行動=セカンダリアクティビティについて解説していく。

■自動運転と運転手の関係

さまざまなケースで自動運転と運転手が共存

出典:Waymo公式サイト

レベル4以降の自動運転はドライバーレスを実現するが、必ずしも運転手不在の走行を行うとは限らない。自動運転バスやタクシーなどのサービスは、運行時において運転手を無人化することで人件費を抑制し業務効率化を図るが、ODD(運行設計領域)外では運転手、もしくはオペレーターが車両を制御するケースもある。

自動運転トラックなども然りで、高速道路など一定のODDで無人化を実現することはできるが、高速道路を降りた後は手動運転が必要な場合が多いものと思われ、自動運転中も運転手が車内で待機するケースが考えられる。

自家用車におけるレベル4では、ほぼ運転手が必須と言える。自家用車は基本的に手動運転によってODDの設定なく自由な移動を可能にする。つまり、自家用車において完全なドライバーレスを実現するには、手動運転が可能な条件を全てクリアしなければならないのだ。

これは実質的にレベル5相当となる。レベル5はODDの制限なくどのような条件下においても自動運転が可能となるため、運転手という概念そのものがなくなり、全てが「乗員」となる。もちろん、手動運転機能を備えたレベル5車両も登場するだろうが、それは贅沢なオプション使いとなりそうだ。

ともかく、ドライバーレスを可能とするレベル4以降においても、さまざまなケースで自動運転と運転手が共存するのだ。

【参考】ODDについては「自動運転とODD」も参照。

■レベル4以降において運転手にできること

レベル4は自動運転と手動運転を明確に分離できる

レベル4以降においても、自動運転と運転手が共存することがわかった。では、自動運転時に運転手に許容される行動=セカンダリアクティビティにはどのようなものがあるのか。

レベル4の自動運転は、ODD内においてはシステムが全ての運転操作を担い、作動継続が困難な場合も運転手やオペレーターなどの介入を必要としないことが求められる。つまり、ひとたび自動運転がスタートすれば、システムが運転手に運転交代を要求するテイクオーバーリクエストが発せられることはなく、ODD外に出るか任意で自動運転を解除するまで自由に車内で行動することができるのだ。

もちろん、現実問題として何らかの理由で突発的にエラーが発生した場合、車内の運転手が迅速に対応すべきところではあるが、これは義務ではないため、あくまで自動運転中においては運転手に想定外の手動運転が迫られることはないものとする。

レベル4でセカンダリアクティビティが大幅に拡大

まず、レベル4の前段階となるレベル3では、アイズオフ運転が可能になる。車両周囲への常時監視義務がなくなり、前方などから目を離すことができるようになるのだ。レベル4でも当然アイズオフは可能になる。

現行の道路交通法上、レベル3で許容されるセカンダリアクティビティは同法「第71条第五号の五」に定められた携帯電話用装置などの利用を制限する条項を適用しないことにとどまる。つまり、スマートフォンやカーナビなどの使用が許容されることしか明示されていないのだ。

アイズオフは前方などへの注視義務がなくなるが、システムからの要請に迅速に応じる必要がある。この要件を満たすセカンダリアクティビティとしては、スマートフォンの使用などをはじめ、読書や一部のゲーム、仕事、食事などが考えられる。

レベル3を前提とすると、こうしたセカンダリアクティビティの可否について議論の余地があり、レベル3が本格普及を始める段階までに明確にしておく必要がありそうだ。

【参考】レベル3のセカンダリアクティビティについては「自動運転レベル3でできること」も参照。

一方、レベル4を前提とすると、これらのセカンダリアクティビティはほぼ議論の余地なく可能になるものと解される。レベル4はシステムから手動運転を要請されることはなく、またODDを外れ手動運転が必要となるタイミングも事前に把握することができるためだ。

レベル4では、スマートフォンやゲーム、食事、仕事、テレビなど、許容されるセカンダリアクティビティは大きく広がることになる。

こうした特性を生かし、車内に大型スクリーンを設置して映画鑑賞するなど、個人の趣向に即した車内カスタマイズが流行する可能性なども考えられる。

レベル4のコンセプトモデルの中には、自動運転時にハンドルなどの手動制御装置を収納し、運転席をゆったりとくつろげるスペースに変えるアイデアを盛り込んだモデルも少なくない。ウィンドウがディスプレイに代わる仕掛けなども実用化される可能性がある。

仕事・デスクワーク向けの設えや食事向けの設えなど、車内空間をどのように自分流にアレンジするかといった観点が、将来新たな市場として実現するかもしれない。

【参考】レベル4コンセプトモデルについては「独アウディ、「自動運転時はハンドル格納」の方針変わらず」も参照。

新たなサービスでセカンダリアクティビティがより充実

セカンダリアクティビティの拡大は、新たなサービスを生み出していく可能性が高い。例えば、通信機能を応用し、音楽配信や映画・ドラマなどの映像配信、ゲーム配信などが想定される。ゲームは、GPSなど位置情報と連動したサービスも可能になる。

また、走行エリアの観光情報や飲食・小売情報などを随時取り込み、立ち寄り先を提案することも可能になるはずだ。目的地の飲食店メニューなどを車内で予約し、予定到着時刻に合わせて待つことなく提供されるような仕組みも可能になりそうだ。

技術とニーズに合わせたサービス展開が、セカンダリアクティビティをより充実したものに変えていくのかもしれない。

ブレインオフのレベル4は睡眠も可能に?

レベル3のアイズオフと対比し、レベル4は「ブレインオフ」が可能になると言われている。運転操作に関することを脳で考える必要がなくなるという意味合いだ。

このブレインオフを拡大解釈すれば、睡眠(仮眠)も可能になるかもしれない。移動時間における睡眠需要は、高速道路における長距離移動などを考えれば少なからず存在するはずだ。

前述した車内カスタマイズで寝室仕様に設え、移動時間を睡眠にあてることで長距離移動の負荷を大きく提言することが可能になる。タイマーをセットすることで、起床予定時間まで目的地周辺の駐車場で車両を自動待機させる使い方なども考えられる。

長距離トラックをはじめ、長距離出張・観光などで時間を有効活用したい場合などに有用となりそうだ。

【参考】関連記事としては「「ブレインオフ」とは?自動運転レベル4に相当」も参照。

飲酒は?

飲酒については、自動運転解除後の手動運転に支障が出るため原則許容されないものと思われるが、可能性だけを考えるならば、不可能とも言い切れない。例えば、自宅や目的地の駐車場まで自動運転で完走できるケースだ。自動運転終了後に手動運転を行う必要がないのであれば、必ずしも飲酒が支障となるわけではない。

ただ、不確定要素を多く含むだけに、一律で禁止される可能性が極めて高そうだ。

■【まとめ】レベル4では運転手も一時的に「乗客」扱いに

レベル4以降の自動運転では、移動時に運転手ができることが大きく拡大していくことが分かった。自動運転時における運転手は実質的に「乗客」となり、セカンダリアクティビティが大きく拡大するのだ。ただし、その後の手動運転に影響を及ぼすような行為については規制がかかるものと考えられる。

こうしたレベル4車両の登場にはまだ数年かかりそうだが、レベル3含めセカンダリアクティビティのさらなる議論は必要不可欠だ。こうした観点の議論が進めば、関連サービスの早期開発にもつながっていく。

レベル4のポテンシャルはどこまで広がっていくのか、要注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転レベルとは?」も参照。

■関連FAQ

(初稿公開日:2022年8月12日/最終更新日:2024年5月21日)

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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