「空飛ぶクルマは資源の浪費」と語る記者、吉村知事の回答は?

「チャレンジしないという理由にはならない」



出典:全国知事会サイト

大阪府の吉村洋文知事がこのほど開いた定例会見において、知事が「空飛ぶクルマ」に関して記者から質問を受け、その質問に回答した。空飛ぶクルマについて、エネルギー効率の観点から「資源の浪費」と強調する記者に対し、吉村知事はどう応じたのか。

■空飛ぶクルマへの挑戦、環境への配慮と同時進行で

記者会見で吉村知事は「1人当たりの移動距離のエネルギー消費量が地上を走る車よりも明らかに多いんじゃないか」という質問を記者から受け、以下のように答えた。やや長い回答だが、吉村知事のスタンスを正確に伝えるため、そのまま引用する。


「空飛ぶクルマについては、災害時においても活躍できるという側面もありますし、今ない移動手段ですから、そういった意味では、万博時において空飛ぶクルマで、そして、最初は湾岸上で、海上であったり河川上になると思いますけども、そこで、海で、兵庫、神戸と大阪なんていうのは海で行けばもう一飛びですから、非常に近いし、瀬戸内の島々も非常にきれいですし、関空も海にありますから、関空と夢洲も海上でつなげると。その途中には百舌鳥・古市古墳群もあると。非常にすばらしい日本の景色であったり、その観光という側面でも非常に有効な手段。いざというときには災害時にも有効な手段。新しい技術として日本にとって必要なものだし、これは有効なものになると思っていますので、着実に進めていきます」※出典:大阪府/令和3年11月2日 知事記者会見内容(https://www.pref.osaka.lg.jp/koho/kaiken2/20211102.html

この回答に対し、記者は「特殊な用途、医療とか災害とか観光であれば、資源浪費型の空飛ぶクルマでも使用する価値はある」と前置きした上で、「一般的に環境に優しいイメージを与えるのはおかしいんじゃないか」と吉村知事にくってかかった。

それに対して吉村知事は、以下のように語った。

「どのような移動手段でも環境に優しいものをこれから目指していくというのは当然であって、車だって最初はガソリン車から始まって、環境に優しいものを目指していこうと。もともといろんな、飛行機や何やといろんな進歩的な移動手段もどんどん進化をしながら進めていますので、進化するこの中で当然環境というのも考えて開発をし、そして、その後も環境問題については考えながら進めていくということだと思いますが、新しい技術にチャレンジしないという理由にはならないと思っています」※出典:大阪府/令和3年11月2日 知事記者会見内容(https://www.pref.osaka.lg.jp/koho/kaiken2/20211102.html


コメントから読み取れるように、吉村知事は空飛ぶクルマを観光や有事の際の有効な手段として期待を寄せている。環境への配慮ももちろん重要事項であるが、環境に配慮するがゆえに開発を止める気はなく、開発と同時に取り組むべき課題と捉えているようだ。

■万博でエアタクシーが実現するか注目

大阪府は2025年開催の「大阪・関西万博」においてエアタクシーの導入を目指しており、2021年8月に万博の参加メニューである「未来社会ショーケース事業出展」の「スマートモビリティ万博」という事業枠において、会場内外で活躍するモビリティや空飛ぶクルマを展開する企業・団体の募集要項を公開した。

同年9月には公募案件「空飛ぶ車の実現に向けた実証実験」で5つのプロジェクトを採択した。採択された事業者は空飛ぶクルマの機体メーカーであるSkyDriveと、ANAホールディングス、日本航空(JAL)、エアモビリティの自動管制アプリサービスを提供するFaroStar、三井物産だ。

およそ3年後に開催される大阪・関西万博。吉村知事を旗振り役に、はたしてエアタクシーが上空を飛び交う姿を見られるのだろうか。今から楽しみだ。


【参考】関連記事としては「空飛ぶクルマとは?いつから乗れる?必要な技術は?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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