自動運転の実現に向け、高精度3次元地図の整備が進められている。国内では、全国の高速道路・自動車専用道約3万キロのイニシャル整備がすでに完了しており、今後は定期更新作業や一般道のマッピングなどが行われていく見込みだ。
膨大な作業が予想されるが、このマッピングを効率的に行う手法の開発も進められており、その一つが「AMP」(Automated Mapping Platform)だ。
自動運転関連の最先端技術開発を手掛けるトヨタ子会社のTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)が開発した自動地図生成プラットフォームで、今後の社会実装に大きな期待が寄せられている。
AMPとはどのようなものなのか。TRI-ADの取り組みとともに概要を解説していく。
■AMPの概要
オープンプラットフォームで自動地図生成を目指す
TRI-ADは自動運転に関する研究領域の1つに高精度地図を掲げ、地図を自動生成する技術開発に力を入れている。その成果がオープンソフトウェア・プラットフォーム「AMP(自動地図生成プラットフォーム)」だ。
AMPは高精度3次元地図生成に向けたオープンソースのプラットフォームで、さまざまな開発企業参加のもと、センサーデータなどを共有することで、地図生成や関連技術の開発を促進する狙いだ。
TRI-ADによると、AMPによって基盤となるマッピング技術とコード開発ステップが抽象化され、開発者はクルマのアプリケーションに関連する高精度地図データを自動生成することができるようになるという。
現在、世界における高精度3次元地図の整備率は1%にも満たないが、一般道路をはじめとする道路や車線をグローバル規模で包括する高精度地図の開発に向け、衛星画像や多くのトヨタ車から得られるデータを活用し、ほぼリアルタイムで地図をアップデートし続けていく方針としている。
汎用車載カメラや衛星画像で地図を生成
TRI-ADは2019年2月、高解像度マップに特化したプラットフォーム開発を手掛ける米CARMERAと車載カメラを使った高精度地図生成実証実験を開始すると発表した。
トヨタの市販車に搭載されているカメラを試験車に搭載し、東京の市街地のデータを取得して高精度地図を自動生成する実証を行う内容で、参加企業から得た自動運転車両のデータで地図を生成するAMP構想の第一歩となった。
同年4月には、衛星画像を用いた高精度地図生成に向け、NTTデータ、及び宇宙技術開発を担う米マクサー・テクノロジーズと提携し、新たな実証実験を行うことを発表した。
マクサーのクラウドベースの地理空間情報クラウドから光学衛星画像ライブラリーの画像を取得し、NTTデータのAIを活用した独自アルゴリズムで道路ネットワークの作成に必要な地図情報を自動抽出する内容となっている。
2020年3月には、専用の計測車両を使用せずに衛星や一般車両から得られる画像データなどをもとに自動運転用の地図情報を生成する技術や、AMP上の車両データのデータ形式を変換し、アルゴリズムを補正することで他社のプラットフォームで活用する技術などの実証に成功したと発表した。
衛星画像利用では相対精度25センチ程度、ドライブレコーダーのデータのみでは相対精度40センチ程度の地図生成に成功したという。
また同月には、高精度3次元地図の作成を一手に担うダイナミックマップ基盤(DMP)と自動運転用HDマップを効率的に更新する実証実験を4月に開始すると発表した。
AMPを活用し、車両センサーで収集した画像などのデータから道路上の変化した箇所を検出することで、DMPのHDマップの効率的な更新の可能性について実証することとしている。
■【まとめ】SLAM技術との融合などさらなる進化に期待
高精度地図の作成においては、モービルマッピングシステム(MMS)やSLAM技術などさまざまな技術やシステムが開発されているが、オープンプラットフォームのもと、車載カメラや衛星画像を用いて地図を効率的に作成する技術は画期的と言える。
近い将来、MMSで作成したマップの自動更新技術の確立やSLAM技術との融合など、さらなる進化を遂げる可能性も高い。高精度3次元マップが全世界の道路を網羅する日は、意外と近いのかもしれない。
【参考】関連記事としては「【最新版】ダイナミックマップとは? 自動運転とどう関係? 意味や機能は?」も参照。