倉庫自動化支援のラピュタ、赤字縮小も純損失20億円 第10期決算

出荷数累計「5,000万ピース突破」を発表



出典:官報

物流倉庫ロボットなどを開発するRapyuta Robotics株式会社(本社:東京都江東区/代表取締役CEO:モーハナラージャー・ガジャン)=ラピュタロボティクス=の第10期(2023年1〜12月)決算が、このほど官報に掲載された。

当期純損失は、前期から赤字額を減らし20億5,588万円であった。同社は物流倉庫向け協働型ピッキングアシスタントロボット(AMR)のサブスクリプションサービスを2020年5月に日本で初めて商用化したことを発表し、同年7月から出荷している。2024年5月には、出荷した商品数が累計5,000万ピースを突破したという。赤字決算ではあるものの、着実に実績を積み上げている印象だ。


なお過去3期の純損益の推移は、以下の通りとなっている。

<純損益の推移>
・第8期:▲12億8,924万9,000円
・第9期:▲23億6,703万2,000円
・第10期:▲20億5,588万5,000円
※▲はマイナス

■第10期決算概要(2023年12月31日現在)

貸借対照表の要旨(単位:千円)

▼資産の部
流動資産 4,432,260
固定資産 520,315
資産合計 4,952,576
▼負債及び純資産の部
流動負債 922,985
賞与引当金 4,700
固定負債 1,635,760
株主資本 1,688,330
資本金 100,000
新株式申込証拠金 218,300
資本剰余金 10,166,932
資本準備金 4,982,998
その他資本剰余金 5,183,933
利益剰余金 △8,796,901
その他利益剰余金 △8,796,901
(うち当期純損失)(2,055,885)
新株予約権 705,500
負債・純資産合計 4,952,576

■スリランカ出身の技術者2人が創業

出典:ラピュタロボティクス・プレスリリース

ラピュタロボティクスは、チューリッヒ工科大学の研究所からスピンオフして2014年7月に設立された企業だ。「ロボットを便利で身近に」をビジョンに、ピッキングアシストロボット「ラピュタPA-AMR」や自動フォークリフト「ラピュタAFL」、自動倉庫「ラピュタASRS」の3つのソリューションを提供している。


東京都江東区の平野本社と木場支社のほか、大阪やインドのベンガルール、米イリノイ州シカゴにも拠点を持つ。現在200人以上の社員がいるという。

代表取締役CEOであるガジャン氏と代表取締役CFO(最高財務責任者)であるクリシナムルティ・アルドチェルワン氏はスリランカ出身だ。1980年生まれのガジャン氏は文部科学省の特待生として来日した。久留米高等工業専門学校卒業後に東京工業大学で学士号と修士号を取得、その後チューリッヒ工科大学で博士号を取得している。EU出資の大規模プロジェクト「Roboearth」で、クラウドロボティクス・プラットフォーム「Rapyuta」を考案・開発した。

アルドチェルワン氏は1984年生まれ、東工大で制御・システムエンジニアリング学士号を取得後、コロンビア大学にて経済数学修士号を取得している。野村證券に勤務した経験がある。この2人は東工大で出会い、再会後に日本をベースにラピュタロボティクスを創業した。

出典:ラピュタロボティクス公式サイト

■協業や資金調達も順調なラピュタ

ラピュタロボティクスは、物流倉庫内の効率化を目的にパナソニックコネクトと業務提携を開始したことを2024年3月に発表した。これにより、パナソニック コネクトのタスク最適化エンジン(仮称)およびロボット制御プラットフォームと、ラピュタASRSを連携させることで、物流現場におけるピッキング作業の効率化が実現するという。また翌4月には、三菱ロジスネクストとラピュタAFLの販売協業を開始している。


資金調達面も順調で、2024年に入ってからはリンクアンドモチベーションや東銀リースから出資を受けている。

■すでに5,000万ピース以上を出荷

人と協働型のピッキングアシストロボットであるラピュタPA-AMRは2020年に商用を開始し、2021年5月にはラピュタPA-AMRを活用し出荷したピース数が累計100万ピース、同年10月には累計200万ピースを突破した。

2022年11月には累計1,000万ピース、2024年5月末時点で累計5,000万ピース以上を出荷したという。のべ5万人弱と約8万時間、物流倉庫の現場で稼働してきたという試算になる。

順調に技術開発と商用化を進める同社の今後に引き続き注目したい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

【参考】関連記事としては「物流倉庫ロボ開発のRapyuta Robotics、損失大幅増の23億円規模に」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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