自動運転の自走式ロープウェイを導入するため、開発企業のZip Infrastructure(本社:神奈川県秦野市/代表取締役:須知高匡)と沖縄県豊見城市が連携協定を締結し、豊見城市が国土交通省に要望書を提出した。
提出したのは、技術評価委員会の審査通過に必要な実証実験の実施についての要望書。導入を要望しているZipparは、「低コスト・自由設計・自動運転」を特徴としている新たな交通システムだ。
■自走式ロープウェイ導入の背景
豊見城市では、瀬長島の観光拠点化と交通渋滞問題が課題となっている。それを解決するため、Zipparを導入する計画だ。Zip Infrastructureと豊見城市は2023年10月に、「まちづくりの推進に係る連携協力に関する協定」を締結した。
同年11月には豊見城市により、次世代交通システムの導入に向けた取り組みとして、Zipparの社会実装に向けた技術評価委員会の審査通過に必要な実証実験の実施について、国土交通省に要望書が提出された。
両者はZipparの社会実装や技術評価委員会の審査通過に向け、事業展開を進めていくとしている。
■「自由設計」「自動運転」などの特徴
Zipparは、街づくりに貢献する次世代交通システムで、主に4つの特徴がある。
1つ目は「低コスト」で、軽量搬器と軽量支柱の組み合わせにより、既存のモノレールと比較すると約5分の1のコストと期間で建設が可能だという。具体的には1キロあたりの建設コストは15億円、建設にかかる期間は1年となっている。
2つ目は「自由設計」だ。既存のロープウェイと異なり、Zipparはロープとゴンドラが独立しているため、カーブや分岐を自由自在に設けることができ、柔軟な路線設計を可能にしている。
3つ目は、「自動運転」により運転士などの人材不足にも対応していることだ。また時間帯や路線など、旅客需要に応じて車両数を増減させることもできるという。
最後は「快適・安心走行」で、レール上を滑らかに走行することができる。2024年中には駆動部の安全性が認められる予定だという。また、ロープ2本タイプを採用しており、通常のロープウェイの1.5倍の風速まで運行できる。
■12人乗りテストモデル車両の走行に成功
2018年設立のZip Infrastructureは、交通渋滞のない、全ての移動がスムーズで快適な世界の実現を目指し、Zipparの開発に取り組んでいる。神奈川県秦野に本社と実証試験線を置いており、2023年4月に12人乗りテストモデル車両の走行を成功させた。
同社は多数の業務提携やパートナー契約を行っており、2023年には、交通事業者向け機器を手掛ける高見沢サイバネティックスとスポンサー契約をしたほか、大手総合建設コンサルタント・長大の持株会社である人・夢・技術グループと資本提携、交通インフラの専門商社であるヤシマキザイと業務提携契約を結んだ。
また2022年1月にネパール企業・Ropeway Nepalとネパールにおける都市交通システム導入を促進するため基本合意契約を締結、同年5月には、ネパール・ガンダキ州のポカラ市とポカラにおける都市交通システム導入を促進するために基本合意契約を締結した。
さらに2022年11月にはマレーシア科学大学と、マレーシアにおけるZipparの導入検討に必要なシステム安全性や導入路線の事業経済性、技術拡張性の研究・調査支援を目的とした基本合意契約を締結するなど、海外展開にも積極的だ。
■デッドスペースの空港に価値を見出す
2022年には、米経済誌「Forbes」が発表した「Forbes 30 Under 30 Asia 2022」において、今最も注目すべきアジア人として代表取締役の須知氏らが選出されるなど、勢いに乗っているZip Infrastructure。
今までデッドスペースとなっていた道路上の空間に価値を見出し、自走式ロープウェイを走らせるという新しい手法で開発を進めている。Zipparの実用化まで、引き続き注目していきたい。
【参考】関連記事としては「日本製「自動運転ロープウェイ」が、マレーシアの渋滞を解消!?」も参照。