シャープ、自動運転市場に参入 車載視野に衛星アンテナを開発

商品化は2024年度中を目標



シャープが自動運転市場に参入する。小型で軽量の衛星通信アンテナを開発して自動車に搭載し、高速大容量通信により車両の自動運転化に貢献することなどを目指す。


同社がこのほど発表した内容から明らかになった。LEO(低軌道)・MEO(中軌道)衛星通信向け地上局用フラットパネルアンテナの開発を開始したという発表内容だ。

このアンテナは、海上や山地など、基地局とのモバイルデータ通信が困難な場所での高速大容量通信を実現するものになり、主に船舶などへの搭載が期待されるが、高品質かつ高速大容量の通信を可能とすることから、情報をリアルタイムに取得することが求められる自動運転車への搭載も視野に入れる。

■LEO・MEO衛星通信アンテナとは?
出典:シャープ・プレスリリース

シャープはスマートフォン設計で培った高周波技術や高効率放熱技術、センサー技術などを活用し、電波の損失が少なく安定的な通信を提供するLEO・MEO衛星通信アンテナの開発に取り組む。本体が小型かつ軽量のため、前述の通り、船舶などへの搭載が期待される。

今後は衛星通信の活用が想定される場面での概念実証を実施するとともに、本格的な普及と持続的な事業展開を見据え、関係企業および団体と連携して衛星通信で用いられる無線通信技術や映像符号化技術の国際標準化を積極的に推進していくという。商品化は、2024年度中を目標にしているようだ。


なおこのプロジェクトは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)による「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」の「社会実装・海外展開志向型戦略的プログラム」に採択され、行われるものだ。

■将来的には自動運転車への活用も

今回スタートする衛星通信アンテナの開発には、3つのポイントがある。

1つ目は、高品質かつ高速大容量の通信が可能なLEO・MEO衛星通信向けだということだ。日本には海上や山地、島しょ部など、基地局とのモバイルデータ通信が困難なエリアが存在しており、このエリアの一部では衛星通信が活用されている。

シャープによると、最近ではこれまで衛星通信に使用されてきたGEO(静止軌道)衛星よりも、地球に近い軌道から電波を送ることで高品質かつ高速大容量の通信が可能なLEO・MEO衛星の有用性が注目されているのだという。


2つ目はスマートフォン設計技術の活用により、電波の損失が少なく安定的な通信が可能なこと。3つ目は、小型かつ軽量で、船舶への搭載が可能。将来的にはドローンや自動車への搭載を目指すということだ。

注目の自動車への搭載については、将来的にさらに小型化し、ドローンや自動車などに搭載することで、山地や災害時における被災地の通信回線確保に貢献していくと説明されている。天候や道路状況などの情報をリアルタイムで取得することが求められる自動運転車への活用なども想定しているという。

■自動運転車に必須のデータ通信技術

自動運転車などコネクテッドカーには、クラウド通信のほか、V2I(路車間通信)やV2V(車車間通信)も必要であり、いずれにしても高速で大容量の安定したデータ通信技術が必須となってくる。シャープが開発する衛星通信アンテナは、自動運転車の開発の加速に大きく寄与するはずだ。

海外の自動運転開発各社からも引き合いがありそうだ。同社の衛星通信事業の今後の進捗に注目していきたい。

【参考】関連記事としては「自動運転とデータ通信…V2IやV2V、5Gなどの基礎解説」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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