トヨタ自動車は2023年10月1日までに、先進技術を研究する同社の国内拠点であるウーブン・バイ・トヨタを完全子会社化することを発表した。「クルマの知能化」などを加速させる狙いがある。
社会システムやクルマへのソフトウェアの実装を加速していくにあたり、両社の関係強化を図るためで、トヨタはウーブン・バイ・トヨタの普通株式の全てを保有することで、ウーブン・バイ・トヨタを完全子会社化するという。
また同年9月7日には、2023年10月1日付の組織改正および役員、幹部職の担当変更について発表している。ソフトウェアを軸にモビリティの価値を高めるため、トヨタ、ウーブン・バイ・トヨタ、デンソーでの3社連携を強化していくようだ。
■自動運転など先進技術開発を手掛ける
ウーブン・バイ・トヨタは、2023年4月にウーブン・プラネット・ホールディングスから社名変更した。トヨタの「クルマへのソフトウェア実装の早期実現」への想いと、ウーブン・バイ・トヨタにおける「社会への実装を加速させるために、お客様に寄り添った開発が必要」という想いが一致したことから、会社の再編を行い、開発をトヨタからの委託体制に変更している。
なおウーブン・プラネット・ホールディングスの前身は、AI(人工知能)をはじめとした最先端技術の研究開発を行う国内拠点として2018年に設立されたTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)だ。
ウーブン・バイ・トヨタは、車両ソフトウェアOS・プラットフォーム「Arene(アリーン)」や自動運転・ADAS(先進運転支援システム)技術の開発を手掛けている。また静岡県裾野市に建設中の実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」の事業を担当しているのも同社だ。
トヨタは現在、「誰もが自由に、楽しく、快適に移動できるモビリティ社会の実現」に向け、モビリティ・カンパニーへの変革を進めている。今後モビリティが社会システムの一部となる「社会システムプラットフォーム」の構築をするにあたり、クルマの「知能化」や「ソフトウェアの実装」をスピーディーに進めるフェーズに移行していくという。
今回のウーブン・バイ・トヨタの完全子会社化は、クルマの知能化を加速させる宣言と受け取っても良さそうだ。
■組織改正で3社連携を強化
組織改正については、トヨタグループでソフトウェア実装を得意とするデンソーを加え、トヨタ、ウーブン・バイ・トヨタの3社連携を強化し、ソフトウェアを軸にモビリティの価値を高めていくとしている。社内の分散した機能軸体制を変更し、ソフトウェアに関する事業・開発を一体で推進するという内容になる。
組織改正後、トヨタは「知能化」をモビリティで牽引することを役割とし、主にクルマのUI企画や全体設計を行っていく。またウーブン・バイ・トヨタの役割はトヨタグループのソフトウェア変革を牽引することで、社会システム企画やソフトウェアの開発基盤、アプリ開発を担う。そしてデンソーはハードウェアを担うソフトウェア実装のプロとして牽引していき、ソフトウェアプラットフォームやアプリの実装を担当する。
■モビリティカンパニーへの変革が加速
トヨタはソフトウェアとハードウェアを両輪とし、従来の機能別組織を変更して、ソフトウェアファーストの新組織を新設する。
具体的には、「クルマ開発センター」の一部と、「コネクティッドカンパニー」の一部を集約し、「デジタルソフト開発センター」を新設する。なおコネクティッドカンパニー部門は廃止するという。
組織改正により、トヨタはモビリティ・カンパニーへの変革がより加速していくことは確実だ。世界一の生産台数を誇る同社の今後に、さらに注目だ。
【参考】関連記事としては「トヨタ系ウーブン、新社長の得意分野は「自動運転」!?10月付で就任」も参照。