ライドシェア、解禁派は主に「意識高い系」?全体では賛成45%にとどまる

最新調査、「利用したくない」は半数超え



出典:紀尾井町戦略研究所プレスリリース

アフターコロナの観光客増加でタクシー需要は回復したものの、ドライバー不足などによるタクシーの供給不足は深刻な問題になっている。そこで「ライドシェアを解禁しては?」という意見もネットなどでは散見されており、最近は政府要人による解禁の意見も目立ち始めた。

しかし、調査によると日本でのライドシェア解禁について「賛成」と回答した人は45%で、半分以上が「どちらかというと反対」「反対」「分からない」という意見だという。つまり、半分以上の一般人はライドシェアに賛成というわけではないというわけだ。


海外の先進事例などを知っている人であれば、ライドシェアの導入の社会的メリット(※移動手段の確保・多様化や新たな仕事の創出など)などから、日本での解禁を求めたくなるかと思うが、ライドシェア解禁の声を上げているのは、意外とこうした「意識の高い系」だけなのか。

■ライドシェアに関する意識調査の結果

ライドシェアに関する意識調査を行ったのは、民間シンクタンク・コンサルティング企業の紀尾井町戦略研究所株式会社(本社:東京都千代田区/代表取締役社長:別所直哉)だ。2023年9月に全国の18歳以上の男女1,000人を対象に、オンラインで調査を行った。

なおライドシェアとは自動車の相乗りのことで、日本でこのワードを使う場合は一般的には、タクシー運転手に必要な二種免許を持たない一般人が、自家用車を使って有償で乗客を運ぶことを指す。米国をはじめ海外では解禁されているライドシェアだが、日本では道路運送法で原則禁止されている。

調査ではまず「あなたは『ライドシェア』という言葉を聞いたことがありますか」という質問がある。それに対しての回答では、「言葉を聞いたことがあり、ある程度内容は理解できている」が最多で36.2%であった。次に「言葉を聞いたことはあるが、あまり内容は理解できていない」19.9%、「言葉を聞いたことがあり、内容は理解できている」14.9%と続く。


ライドシェアという言葉は耳にするが、実際どういうものかを正確に説明できる人は半数程度になりそうだ。

■「解禁賛成」は45%、「利用したくない」は半数超え

「あなたは日本におけるライドシェア解禁に賛成ですか、反対ですか」という質問には、「どちらかというと賛成」が最多で37.2%、「どちらかというと反対」が23.1%であった。なお「分からない」20.4%、「反対」10.8%、「賛成」8.5%という結果となっている。「どちらかというと賛成」と「賛成」を合計すると45.7%となる。

「ライドシェアが導入されたら、あなたは乗客として利用したいですか、したくないですか」では、「あまり利用したくない」が最多で29.6%、次に「ある程度は利用したい」25.6%、「利用したくない」22.4%となっている。「あまり利用したくない」と「利用したくない」の合計は52.0%だ。

なお「ライドシェアが導入されたら、あなたはドライバー(運転手)になりたいですか、なりたくないですか」という質問に対しては、49.6%が「ドライバーになりたくない」と回答している。


今回の回答者のうち、半数近くがタクシーをほとんど利用していないという状況での調査であったため、頻繁に利用する人よりはタクシー不足についての深刻度が低いというバイアスもありそうだが、それほどライドシェアは渇望されていないという調査結果が読み取れる。

■キーマンになるのは河野デジタル相と菅前首相か?
(左)河野太郎氏=出典:flickr / G20 Argentina (CC BY 2.0)/(右)菅義偉氏=出典:首相官邸

ライドシェア解禁に向けての国内における動きは活発化している。

河野太郎デジタル大臣はライドシェア解禁について、「公共の交通サービスを提供できない地域を中心にどうサービスを提供するのかといった議論を積極的にやりたい」との意見を2023年9月に述べている。

河野大臣は海外の自動運転配送ロボットを視察するなど、自動運転をはじめとした次世代モビリティの受け入れに向け積極的に動いている印象だ。

また菅義偉前首相も、「観光地では既にタクシーなどの交通手段が不足し、過疎地では日常生活にも支障が出ている」とライドシェアの必要性を強調しており、議論推進を訴えている1人だ。日本のライドシェア導入に際しては、この2人が先導していく可能性がありそうだ。

■「慣れ」の要素も大きい?

新しいサービス形態は、最初は受け入れられるまで時間がかかる。

例えば、ネット経由で企業などから単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」は、コロナ禍を契機に日本でも増加した。最初は抵抗があった人たちも、現在では配送やフードデリバリーをギグワーカーが担うことを一般的なこととして受け入れている。また、人手不足の昨今、ギグワーカーの存在は欠かせないものになっている。

ライドシェアも解禁されれば、いずれは移動サービスの1つとして自然に人々の選択肢の一つになっていく可能性が高い。要は「慣れ」の要素も大きいと考えられる。記事の最後に、こうした視点についても触れておく。

【参考】関連記事としては「ライドシェアとは?意味は?(2023年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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