トヨタ系ウーブン、新社長の得意分野は「自動運転」!?10月付で就任

カフナー氏はトヨタのシニアフェローに



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

トヨタ子会社として先進モビリティ技術などを開発するウーブン・バイ・トヨタは、役員体制の変更を2023年9月12日までに発表した。これまで代表取締役CEO(最高経営責任者)を務めていたジェームス・カフナー氏が退任し、新たに隈部肇(くまべ・はじめ)氏が10月1日付で就任する。

隈部氏は、自動運転の統合制御ソフトウェア開発を手掛けるJ-QuAD DYNAMICSの代表取締役社長を務めていた人物だ。なお、カフナー氏はトヨタ自動車のシニアフェローに就任予定だという。


■ウーブン・バイ・トヨタの役割

ウーブン・バイ・トヨタは、2023年4月にウーブン・プラネット・ホールディングスから社名変更した。なおウーブン・プラネット・ホールディングスの前身は、AI(人工知能)をはじめとした最先端技術の研究開発を行う国内拠点として2018年に設立されたTRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)だ。

今回の役員体制の変更は、ウーブン・バイ・トヨタが開発を進めるソフトウェアプラットフォーム「Arene(アリーン)」が先行開発から実装フェーズに移行するにあたり行われるものだという。また、建設中の実証都市「Woven City(ウーブン・シティ)」の実証開始を見据えたものでもあり、これらを踏まえて、経営層が現場の近くで迅速な意思決定を行う体制に移行する。

同社の代表取締役CEOを退任するカフナー氏は「これまでトヨタのMIRAIやレクサスのLSに搭載されたADAS(先進運転支援システム)技術や、将来のお客様に新しい価値を提供するソフトウェアプラットフォームであるAreneなどさまざまなモビリティ技術の開発に取り組んでまいりました」とコメントしている。

また役員交代については、「Woven Cityの建設も進み、2025年に一部実証開始予定です。今後当社が初期開発から実装フェーズに移行することを見据え、トヨタやトヨタグループとのさらなる連携強化が必須となります」とした上で、「隈部氏は、デンソーやJ-QuAD DYNAMICSでトヨタなど他社との協業を進めた経験があり、今後のウーブン・バイ・トヨタにおいてこの重要な役割を担う最適なリーダーだと確信し、このタイミングでバトンタッチすることが最善の決断と考えました」と説明している。


出典:トヨタプレスリリース(※クリックorタップすると拡大できます)
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■新たに代表取締役CEOとなる隈部氏

隈部氏は、これまでJ-QuAD DYNAMICSの代表取締役社長を務めていた。同社はアイシン、株アドヴィックス、ジェイテクト、デンソーという自動車部品メーカー4社の出資により、2019年4月に設立された。自動運転・車両運動制御のための統合制御ソフトウェア開発やエンジニアリングサービスを手掛けている。

センシング技術に強みを持つデンソーとアイシンのほか、最高峰のステアリング技術を有するジェイテクト、高い信頼性のブレーキ技術を誇るアドヴィックスという、各社の自動運転・車両運動制御などに関する技術や知見を高度に融合することを可能にしているという点が、J-QuAD DYNAMICSの強みだ。

隈部氏はウーブン・バイ・トヨタの代表取締役CEO就任にあたり、「これからのBEV(Battery Electric Vehicle)・SDV(Software Defined Vehicle)時代におけるNo.1のクルマを実現するためにクルマのソフトウェアを作り出し、モビリティカンパニーを支えるソフトウェアづくりを変革する、これがウーブン・バイ・トヨタのCEOを務める私の使命だと考えています」とコメントしている。

また「TRI-ADの設立から5年間、ジェームスのリーダーシップのもとで鍛えてきたウーブン・バイ・トヨタの人材・仕組みを生かし、Arene・AD(自動運転)/ADASといった技術力を発揮し、トヨタやトヨタグループのクルマづくり、モノづくりのプロと一緒に、実装をやり遂げることができると考えています」との抱負を語っている。


■自動運転車の実用化時期は早まる?

隈部氏はまた「AreneやAD/ADASのクルマへの実装とモビリティ社会を創造するためのテストコースであるWoven Cityでの実証を通じて『クルマ』『人』『社会』がつながるモビリティと社会システムの共創を目指し、思いを共にする仲間とともに幸せの量産を追求していきます」と語っている。

今回の代表者変更により、自動運転車の実用化の時期は早まるのだろうか。ウーブン・バイ・トヨタの今後に大注目だ。

【参考】関連記事としては「自動運転部門のWoven、ついに社名を「トヨタ」へ!」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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