茨城県境町で、2023年3月23日から2種類のMaaSの取り組みが開始された。トヨタ自動車やソフトバンクなどが出資するMONET Technologies株式会社(本社:東京都千代田区/代表取締役社長兼CEO:清水繁宏)が協力して行うもので、MONETの「マルチタスク車両」を2台導入し、コミュニティセンターなどを巡回する。
境町では、2020年11月から自動運転バスの定常運行が行われている。自動運転に加えMaaSもスタートした境町は、モビリティ関連の最新技術を積極的に取り入れていることから、もはや「日本のシリコンバレー」と呼んでもいいかもしれない。
■MaaSでマイナカードの申請も可能に
境町が開始したのは、医療MaaSと行政MaaSの2つだ。境町には眼科医院が少なく、診察の待ち時間が長いという課題があったという。同町は病気を早期発見し、町民の健康寿命を延ばすための取り組みを進めていることから、医療MaaSを導入し、車内で眼科スクリーニング検査を開始する。
具体的には、医療機器などを搭載した専用車両がコミュニティーセンターなどを巡回し、車内で看護師が受診者の目の画像撮影や問診などを行い、データを眼科医に共有する。眼科医はデータを見て結果を出し、保健センターが検査結果を受診者に郵送、異常がある場合は眼科の受診を勧める。2023年度以降は、眼科以外のスクリーニング検査にも対応していく予定のようだ。
また行政MaaSでは、専用車両がコミュニティーセンターなどを巡回し、車内でマイナンバーカードの申請受け付けや各種証明書の発行、オンライン相談などを行うという。
なお境町ではマイナンバーカードの申請率が低いという課題があったため、2022年11月~2023年1月にMONETのマルチタスク車両を活用したマイナンバーカードの申請受け付け業務を行った。それにより申請率が約40%から70%以上に大幅に上昇したため、今回の行政MaaSの開始に至ったという。
■医療&行政MaaSに貢献するMONET
MONET Technologiesは、全国各地の自治体や企業などと連携して医療MaaSや行政MaaSを展開している。同社が初めて協力した医療MaaSは、長野県伊那市が2019年12月から開始したモバイルクリニック事業だ。看護師と医療機能が搭載された車両を患者宅に派遣し、車内でオンライン診療を行っている。そのほか岩手県北上市や熊本県八代市でも、マルチタスク車両でのオンライン診療の実証実験を行っている。
行政MaaSにおいては、福島県いわき市でマルチタスク車両での行政手続き相談、税務、労働相談や、岐阜県恵那市や鳥取県江府町でのマイナンバーカード申請出張サポートなどを手掛けている。
■日本の自治体をリードする境町
境町町内での自動運転バスは、2023年3月28日時点で延べ15,629人の乗客が利用し、累計走行便数は13,592便となっている。数年にわたり自動運転車が町内を巡回していることから、住民の新しいモビリティサービスへの受容性は高まっていると考えられる。
今回導入されたMaaSも、すぐに町に溶け込み、活用される可能性が高そうだ。茨城県境町。今後も日本の自治体の先陣を切り、新しい試みをどんどん行っていってほしい。
【参考】関連記事としては「MaaSアプリ「MONET」が、自治体の移動革命を下支え」も参照。