沖電気工業は2022年10月23日までに、同社独自のAI(人工知能)モデル軽量化技術「PCAS」を活用し、AIに無駄な計算をさせずに、従来の4倍のAI画像処理速度60fps以上を達成する技術を開発したことを発表した。
AIが活用できる分野の1つに「自動運転」がある。AIがカメラ画像を高速分析し、運転操作におけるとっさの判断を下すわけだ。その際に、AIが無駄な計算をしなくてよければ、より短時間によりよい判断を下せるようになる。
沖電気工業の技術が自動運転技術の向上につながっていくことに、期待したいところだ。
■フランスのMipsologyも開発に参画
今回の技術開発には、沖電気以外に、ハードウェアを開発するOKIアイディエスと、フランス企業のMipsology SASが参画したという。沖電気の「PCAS」技術と、MipsologyのAI処理の高速化プラットフォーム「Zebra」の連携により、AIに無駄な計算させない技術の開発に成功したようだ。
また、今回開発した技術を使えば、高度なAIを搭載したアプリケーションを短期間で提供でき、「FPGA」実装の自動化も実現するという。
報道発表では「これにより、AI処理を高速化するために必要なAIプログラムのFPGA実装において課題であった、専門的なスキルを持つ技術者不足や、開発時間の短縮・効率化を解決することができます」としている。
FPGAとは、「製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路」のことだ。大容量のデータを高速で演算処理できるものの、一般的なCPU(中央演算処理装置)などに比べて複雑な実装や専門知識が必要で、開発期間が長く、コストが大きくなるなどのデメリットがあった。
■消費電力を抑えることも可能に
AIに関しては、「AIで何ができるか」に注目が集まりがちだが、「AIの処理速度をどれだけスピードアップできるか」も、AIの実用化においては非常に重要な視点だ。
特に自動運転AIの場合、判断までのほんのわずかな時間で事故を避けられるかどうかが変わってくるため、自動運転業界としても今回のOKIの新技術の発表は非常に歓迎されるものであると言える。
またAIが余計な計算をしなくて済めば、消費電力を抑えることもできる。特に端末側や車両側に搭載されるエッジAIの場合、端末側や車両側の総電力量は限られているため、貢献度は非常に大きいだろう。
【参考】関連記事としては「自動運転とAI(2022年最新版) 活用シーンを解説」も参照。