東京大学の研究グループはこのほど、自動運転車に「視線を提示できる目」を取り付けた実証実験をバーチャルリアリティー環境下で実施し、この目を車両に取り付けることで歩行者による「危険な道路横断」を減らせ、結果として安全性を向上できる可能性があることを発表した。
東京大学大学院情報理工学系研究科のチャン・チアミン特任講師や五十嵐健夫教授を中心とした研究グループは、まず実物の自動車にモーター駆動で「視線を提示できる目」を付けた実験車両を製作した。
次に、道路を横断しようとする歩行者の視点から、実験車両の走行を撮影し、バーチャルリアリティ環境で実証参加者に提示した。その結果、冒頭述べたような知見が得られたという。
なお、車両は名古屋大学発の自動運転スタートアップであるティアフォーが貸与した。実証には18~49歳の男女、各9人の計18人が参加した。
■なぜこのような結果となったのか?
プレスリリースでは研究について以下のように説明されているので、正確を期すため、そのまま引用する。
今回、研究グループはより重要な問題である 「視線の提示によって交通事故を減らすこと
ができるのか?」について、実験により検討しました。本研究では、歩行者が急いで自動運転車の前を横断しようとしている状況を考えます。この時、車の視線が歩行者を向いていないということは、車が歩行者を認識していない(停止しない)ことを意味すると仮定します。その場合、歩行者は車の視線を確認することで道路を渡るべきではないと判断でき、潜在的な交通事故を回避することができます。逆に、車の視線が歩行者を向いているということは、車が歩行者を認識している(停止する)ことを意味し、歩行者は安全に道路を渡ることができます。(出典:https://www.jst.go.jp/pr/announce/20220920/pdf/20220920.pdf)
男女によって行動に差異があることも示唆されたという。男性では車両が通過しようとしている際の横断を低減できる可能性があり(49%→19%)、一方、女性では車両が停止しようとしている際の無駄な停止を低減できる可能性があること(72%→34%)が観察されたようだ。
■歩行者と自動運転車の意思疎通をスムーズに
歩行者との事故を未然に防ぐ仕組みの1つとして、「視線を提示できる目」の存在は、歩行者と車両との意思疎通をスムーズにする可能性があると期待できる。今後の展開にも期待したい。
【参考】関連記事としては「イギリス・ジャガーランドローバーの自動運転車、歩行者と「アイコンタクト」 不安軽減へ導入実験」も参照。