人間が運転に関与しない高度な自動運転では、カメラやセンサーで周囲の状況を把握することが必要不可欠だ。自動運転の実現を目指す世界各国の企業は「自動運転の目」となるセンサーと画像解析の技術開発を進めている。そんな中、米半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)が面白い取り組みを公式ブログで発表した。
ブログによれば、NVIDIAは物体の未来の動きを予測するための取り組みを行っているという。この技術が実現すれば、周囲の車の動きや横断歩道を渡ろうとする歩行者などの動きを予測して、安全な自動運転システムを構築することができる。
■「過去」から学習して「未来」を予測する技術
自動運転車両が安全に走行するためには、車両の影から飛び出す人影や前方車両の急な車線変更など、さまざまな外的要因に対処する必要がある。NVIDIAは、衝突を回避するために不可欠な物体の未来の動きを予測するシステムを開発している。
RNN(リカレント・ニューラルネットワーク)と名付けられたこのシステムは、画像や音声の認識に用いられるディープニューラルネットワークという技術の一種で、過去のデータから学習して未来を予測する機能を持っているのが特徴だ。
一般的なニューラルネットワークでは映像を分析する際、前後の画像を切り離して一枚ずつの画像として処理するため、前の画像情報は次の解析に活かされない。RNNは前の画像で得た情報を維持しつつ次の画像を解析することができる。
過去の時系列データを学習することができるRNNは、歩行者や動物などの動いている物体がどのように動くか予測することができる。人間で例えるなら「横断歩道の前に人が立っているから道路に出てきそうだな」と過去の経験から予測するようなものだろう。
■自動運転の「目」と接続して自動学習するシステムを構築
映像や画像解析の精度を上げようとする場合、人間が用意した大量のデータを読み込ませて学習させるという方法が一般的だった。しかし、NVIDIAはRNNと、レーダーやLiDAR(ライダー)などのセンサーを直接つなぎ、センサーからのデータを用いて物体の動きを予測する実践的なトレーニングを行っているという。
レーダーセンサーやLiDARセンサーは電波や赤外線を照射し、目標物に反射して帰って来た電波から周囲の物体を把握する技術で、物体の速度を計測するのに適している。「自動運転の目」とも呼ばれ、高度な自動運転の実用には必要不可欠だ。
【参考】関連記事としては「自動運転向けセンサーの「三種の神器」、米NVIDIAが力説 カメラ・レーダー・LiDAR」も参照。
分かるかな?自動運転向けセンサーの「三種の神器」 カメラ・レーダーともう1つは? https://t.co/yj3XSj36t9 @jidountenlab #自動運転 #センサー #カメラ #レーダー #LiDAR
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) May 20, 2019
これらのセンサーから入力する画像には速度データラベルがついているため、人間がわざわざ速度ラベルを付けた画像を用意しなくてもRNNは自動で学習することができるようになる。
将来的に自動運転システムに組み込まれれば、路上を走るほどデータが集まって学習が進み、さらに予測の精度が上がるということになりそうだ。実証実験などでもその効果を発揮することができるだろう。
■未来予測は自動運転の安全性に寄与する
RNNから出力される情報は、検知した車や歩行者に衝突するまでの余裕時間、物体の未来位置と速度などがある。これらの情報はオートクルーズコントロールや自動ブレーキなど、自動運転システムの「縦方向」の制御に必要不可欠だ。
予測の精度が上がり物体の動きや余裕を正確に把握することができるようになれば、回避性能が上がってより安全な自動運転システムをつくることができるだろう。
【参考】NVIDIAの自動運転への取り組みは「エヌビディア(NVIDIA)の自動運転戦略まとめ 半導体開発や提携の状況は?」も参照。
大手メーカーと軒並み提携…エヌビディアの自動運転戦略まとめ 半導体事業核にプラットフォーマーに AI開発にも注力、トヨタ自動車も技術採用 https://t.co/GIfFt9J4OS @jidountenlab #エヌビディア #自動運転 #半導体
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) December 3, 2018