自動バレーパーキングとは? 自動運転技術を活用 開発企業は?

日立やデンソー、ダイムラー、ボッシュなど先行

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出典:デンソー社プレスリリース

自動運転レベル4(高度運転自動化)の実現は、駐車場から始まるかもしれない。大規模駐車場を想定した自動バレーパーキング技術の開発が国内外で進められており、完成度も飛躍的に高まっているようだ。

大規模商業施設や空港など大きな駐車場を備える施設において、安全性と効率性を高めることができる自動バレーパーキング。今回はその仕組みや利点、開発企業などを紹介し、展望を推しはかってみよう。

■自動バレーパーキングとは?

バレーパーキング(Valet Parking)は、駐車する際に運転手に代わって専門の係員が駐車作業を行うサービスを指す。「Valet」は従者という意味があり、ホテルなどではボーイのことをいう。ホテルを利用する際、入り口でボーイに鍵を付けたまま車を預けると、ボーイが駐車場に車を停めてくれるサービスなどがバレーパーキングだ。バレットパーキングと呼ぶこともある。

このサービスに自動運転の技術を活用し、無人化・自動化したものが自動バレーパーキングで、大規模な無人の駐車場内などで車両が自動走行し、空いている駐車スペースに自動駐車するシステムだ。英語では「Automated Valet Parking」と呼ばれ、AVPと略されることもある。

■自動バレーパーキングの仕組みは?

主な仕組みとしては、車両と駐車場インフラ、管制センターが連動して機能し、任意に指定した駐車位置や空き駐車場所にシステムが自動で車両を誘導し、駐車を完了する。駐車場所の指定などは、駐車場に設置されたパネルを利用して操作する場合や、スマートフォンから指示を出せるシステムなども開発が進められている。

具体的には、指定の乗降場所に車両を停めて降車し、スマホなどから駐車を依頼すると、管制センターが走行経路や駐車場所を特定して車両に配信する。その指示に従って車両は低速で自動走行し駐車する。出庫の際も同様で、指定の乗降場所からスマホなどで出庫を依頼すると、管制センターの指示を受けた車両が乗降場所まで自動走行し停車する。

なお、すでに実用化されている駐車支援機能の中にも、ドライバーが車外から操作可能なリモートパーキング機能を備えているものもあるが、これは自動運転レベル2(部分運転自動化)相当の機能で、システムが自動で駐車操作を行うとしても、責任の所在はドライバーにある。これに対し、自動バレーパーキングは自動運転レベル4相当にあたり、システム側に責任が移る。

■自動バレーパーキングのメリットは?

自動バレーパーキングのメリットは、ドライバーの手間や時間を省くことができ、駐車場内における物損事故や人身事故を減らす効果もある。また、駐車位置に乗降スペースを必要としないため、ドアの開閉ができないような狭いスペースでも駐車可能となり、敷地を最大限に活用することができる。システムが全車両を監視・管理することで円滑で効率的な運用が可能となり、混雑緩和にもつながるだろう。

このほか、荷物が多い場合なども、指定の乗降場所でゆとりを持って積み下ろしができる。広大なショッピングモールや空港の駐車場などでは、車両を探し回ることなく、目的地に最寄りの指定乗降場所から利用することもできる。

将来的には、商業集積地など不特定多数の駐車場があるケースや歩行者がいる場所を通過するケースなど、複雑な環境下でも応用できる技術の確立が求められることになりそうだ。

■実証実験の実施状況は?

国内では、ホンダが2013年に東京で開催された「第20回ITS世界会議 東京2013」で自動バレーパーキングのデモンストレーションを実施。駐車場の四隅に設置されている監視カメラがクルマと無線通信で連携する仕組みで、車両側に特別なセンサーを追加する必要もないという。駐車場の送迎エリアにクルマを停車させると、駐車場内の空きスペースの情報を受け取ったクルマが無人で走行して駐車するシステムだ。

自動車部品大手のデンソーも2017年12月に、自動バレーパーキングなど将来の自動駐車支援サービスの実現に向けた実証実験を行うことを発表している。

自動駐車支援サービスにおけるユーザーの受容性評価や開発に必要なデータ収集を行い、2018年からは三井不動産リアルティ株式会社の協力のもと同社が運営する「三井のリパーク」駐車場において、自動バレー駐車などの自動駐車システムに必要となる走行環境認識センサーなど車載機器の技術検証や課題抽出を行うこととしている。

将来的には、駐車場の電子予約システムや課金システムなどのインフラシステムを活用し、将来都市における駐車支援サービスの研究、開発を行う予定だ。

海外では、独自動車部品大手のボッシュと独ダイムラーが2015年から共同で開発を進めており、2017年7月には独シュトゥットガルトにあるメルセデス・ベンツ博物館の駐車場で、実生活環境下における自動バレットパーキング技術を初公開している。

駐車場インフラから発信されるコマンドを車両側が受信することで、ドライバーは車両の動きを監視せずスマートフォンから駐車の指示を出すだけで、所定の駐車スペースに車両を自動的に駐車することができるシステムだで、2018年には中国の北京で実証試験も行っている。

【参考】ダイムラーとボッシュの取り組みについては「ダイムラーの自動運転戦略まとめ 計画や提携状況を解説」も参照。

■自動バレーパーキングについての最近のニュース
JARIが自動バレーバーキング機能の実証実験を一般公開

日本自動車研究所(JARI)は2018年11月、自動バレーバーキング機能の実証実験を東京都港区台場のデックス東京ビーチ駐車場で一般公開した。自動運転実現に向けた具体的な活用ケースとして、JARIが経済産業省と国土交通省から委託を受けて開発を進めてきたもの。

実証実験には、トヨタ自動車、アイシン精機、三菱電機、デンソーテンも参加。車両と管制センター、駐車場インフラが協調して機能を分担し、自動で駐車する様子を実演した。

【参考】JARIの自動バレーバーキング実証実験については「自動バレーパーキングの実証実験を一般公開 日本自動車研究所が発表」も参照。

人とくるまのテクノロジー展やCES2018でパーキング技術紹介 日立オートモティブシステムズ

自動バレーパーキングシステムの実用化を目指す日立オートモティブシステムズも開発に力を入れており、「人とくるまのテクノロジー展2018」で同システムの展示を行ったほか、米ラスベガスで開催された「CES 2018」では自動バレーパーキングとパーク・バイ・メモリーのデモンストレーションを行っている。

パーク・バイ・メモリーは、駐車位置や経緯をあらかじめ記憶して再現する機能で、個人宅の駐車場などでの利用を想定した技術となっている。

■早期実現可能な自動バレーパーキング カギは車載システム要件

自動運転レベル4相当の技術を要するが、限定領域となる走行可能な範囲を線引きしやすいため、空間的な面での実現のハードルは低い。一方で、不特定多数の車両が利用するという観点からは、車載システムとしてどのような装備が必要となるかが普及のカギになりそうだ。

車両事故の約3割は駐車場で発生しているとも言われる昨今、自動バレーパーキングによる安全性の確立や、混雑する大規模駐車場の効率的な利用といったメリットも明確で、私有地内で完結させることも可能なシステムであることから、自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の導入に先んじて実現する可能性もありそうだ。

【参考】自動運転レベル4については「自動運転レベル4の定義や導入状況を解説&まとめ 実現はいつから?」も参照。

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