スマートシティ化の流れが日本だけではなく世界で起きている。スマートシティ化とともに加速するのが、移動手段の検索・予約・決済を一元化する「MaaS」(Mobility as a Service=サービスとしてのモビリティ)だ。
こうした背景もあり、MaaSの市場規模は急速に拡大することが見込まれている。米コンサルティング企業のMarketsandMarkets社によれば、MaaSの市場規模は、2020年の推定47億ドル(約5,000億円)から2030年までに704億ドル(約7兆4,400億円)に到達するという。
CAGR(年平均成長率)に換算すると実に31.1%となり、大きな成長を遂げることが予測されている。
■スマートシティが牽引するMaaS市場の成長
MaaSは、自動車や自転車、公共交通機関などのさまざまな交通手段を、個別の移動手段ではなく1つのシームレスなサービスとして捉える概念だ。簡単に言えば、別々の事業者が運営している移動サービスを1つのプラットフォーム上に集約するという考え方だ。
このMaaSの加速の要因の1つとなるのが世界の都市化であり、スマートシティの進展である。
スマートシティでは、IoTを用いて生活のあらゆるモノがインターネットにつながり、情報が集まり、解析することで人々の生活を高め、持続的な成長を可能にする。特にモビリティについては、電車や自動車、バスなどのデータがつながり、MaaS化することで快適な移動が可能になったり、自動運転車が普及することでより自動車がMaaSとして利用される機会が増加したりするということで、MaaSはスマートシティを構成する重要な要素となっている。
■世界でも日本でもスマートシティ×MaaSが進行中
世界ではスマートシティとMaaSを組み合わせた取り組みが続々と行われている。
2015年にアメリカで行われた「スマートシティ・チャレンジ」という都市間コンペで優勝したオハイオ州コロンバスでは、交通システムと医療機関の予約システムを連携して、医療と交通を低所得者にも使いやすいものとしたことでMaaSとスマートシティの組み合わせの先駆けとして注目された。
また、MaaSの先進事例としてはフィンランドのヘルシンキで導入されているMaaSプラットフォーム「Whim」がよく取り上げられている。ヘルシンキはあらゆるデータを統合して生活を改善しようとしているが、Whimでは公共交通機関、タクシー、レンタカーなどを1つのアプリ上で予約、決済できる仕組みが提供されている。
日本において注目を集めているのは、トヨタが2020年1月のCESで発表したコネクティッドシティ「Woven City」だろう。トヨタの東富士工場跡地に建設を予定しており、2021年からまちづくりを開始し、将来的には約70.8万平方メートルの土地に約2,000人が居住する予定だ。ここではMaaSの実現が大きなテーマとなっている。
国土交通省が主導する「スマートシティモデルプロジェクト」においても、MaaSを絡めた実証実験プロジェクトが多数ある。スマートシティ推進の動きがMaaS発展につながることは間違いないのだ。
【参考】関連記事としては「MaaSとは?2020年代に実用化!意味や仕組みまとめ」も参照。