リクルートも参戦!自動運転ビジネスの大本命「配達ロボ」の今

投資子会社通じてStarship Technologiesへ出資

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出典:Starship Technologiesプレスキット

株式会社リクルート(本社:東京都千代田区/代表取締役社長:北村吉弘)が投資子会社である合同会社RSPファンド6号を通じ、自動運転(自律走行)型配達ロボットを開発・提供する米スターシップテクノロジーズ(Starship Technologies)への出資を行ったことが、2019年8月27日までにわかった。

近年、eコマースの普及やレストランやスーパーでの即時配達ニーズが増え、安価でスピーディーな配送を可能にする配送サービスへの期待が高まっている。自動走行型配達ロボットが実装されれば、人手不足が解消され、交通渋滞の緩和や生産性の向上などさまざまな効果が期待できる。

今回のリクルート社の出資を受け、スターシップテクノロジーズ社は世界の都市と100大学での展開を開始する予定だという。各地で荷物配達業務の変革が期待される。

■総配達回数10万回以上のスターシップテクノロジーズ

スターシップテクノロジーズ社は、環境に優しい自律走行型配達ロボットの開発を行っているアメリカの新興メーカーだ。現在、同社の配達ロボットは既に世界100都市以上で展開し、大学や工場敷地内などでの実運用も行なっており、イギリスでは同社の配達ロボットによる商品配送が開始され、世界的に大きな話題になった。

実績面も十分だ。これまでの総走行距離は50万キロ、総配達回数は10万回以上に達しており、ここまでの実績があれば、まさに世界における自律走行配達ロボット業界を牽引するメーカーだと言えるだろう。

スターシップテクノロジーズ社の自律走行型配達ロボットは6輪の車輪で動くボックス型で、カメラやセンサー、通信機器、バッテリーなどを内蔵している。ボディの蓋を開けると荷物を収納するスペースがあり、18キロまでの荷物が配送可能だ。自律走行だが、オペレーターによるモニタリングコントロールも可能で、状況に応じて使い分けができるのが特徴だ。

■日本でも実用化に期待、法整備が急務に

日本でも、宅配便の増加や再配達、高齢化や労働環境の過酷さによる宅配業社の人員不足などの背景から、自律走行型配達ロボットの早期の実用化が期待されている。また、買い物弱者や交通渋滞などの課題の緩和につながることも大きい。

ただ国内でも私有地での実証実験は行われているものの、現行制度では自律走行ロボットの公道走行はまだ認められておらず、今後、実際に運用されていくための法整備などが普及の鍵となる。そんな状況も関係してか、世界的では普及が見込まれる一方、日本国内で自動運転配達ロボットの開発を手掛ける企業は決して多くはない。

そんな中、日本国内で存在感を示しているのが、自動運転ベンチャーとして知られる株式会社ZMP(本社:東京都文京区/代表取締役社長:谷口恒)だ。宅配ロボット「CarriRo Deli(キャリロデリ)」は、周囲360度を認識しながら、最大時速6キロで自走走行することができる。荷物は最大で50キロを積載可能で、小ぶりなサイズ感ながら「力持ち」だ。

また2018年5月に設立されたスタートアップの株式会社Hakobot(本社:宮崎県宮崎市/代表取締役:鶴田真也)は、アドバイザーに「ホリエモン」こと堀江貴文氏を招き、話題となった。同年11月には実証実験用の初号機も披露されている。またロボット活用の面では、ヤマト運輸や日本郵便が実証実験に力を入れている。

日本での自律走行型配達ロボットの実用に向け法整備がどれくらいのスピード感で進むか、注視していきたいところだ。

【参考】関連記事としては「自動運転配送ロボット、政府が実証実験のガイドライン策定へ」も参照。

■海外では既に一般公道での稼働も

海外では国によって、配達・配送に関するさまざまな課題がある。例えば、配達の時間指定ができないサービスも珍しくなく、配送料が日本に比べてかなり高いケースもある。こうした課題がある国では、日本に比べてはるかに自律走行型ロボットによるサービスへの関心は高い。

既に法整備が進んでいる国もあり、例えばアメリカの一部の州や市、エストニアでは法整備が急ピッチで進む。イギリスなど一部の欧州諸国では既存制度内で自動運転配達ロボの稼働を容認しているケースもある。

こうした中、記事の冒頭で紹介したスターシップテクノロジーズ社のイギリスでの商品配送をはじめ、EC(電子商取引)サイト大手の米Amazon.comも宅配ロボットの実証に乗り出しており、次々と実稼働が始まっている。

そのほか、大手スーパーと協力して配送プロジェクト着手している米Nuroや楽天との提携を発表した中国の京東集団、荷物を配達する犬型ロボットを開発するドイツ企業Continental、追従型配送ロボット「Post BOT」を開発する同じくドイツ企業のDeutsche Post AGにも注目だ。

一部の都市限定ではあるが既に実装化が始まっている国・都市では、時間を追うごとにサービスの対象地域も今後ますます拡大していきそうだ。

■自動運転技術の実用化はまず「物流」から

自動運転技術の実用化は、まず自立走行型配達ロボットから始まる可能性が高い。低速で大きな事故に結びつく可能性も少なく、EC需要の増加で業界からの期待感も高いためだ。技術面では海外製品で既に安全性やオペレーションが確立されており、「残すは規制緩和のみ」と語る業界の関係者も少なくない。

そんな中で今回のリクルート社のスターシップテクノロジーズ社への投資は市場の動向を的確に捉えたものと言える。スターシップテクノロジーズ社が今後どこまで自動運転市場、そして物流業界でのその存在感を高めていくのか、楽しみだ。

【参考】関連記事としては「ラストワンマイル向けの物流・配送ロボット10選」も参照。

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