
米海軍の航空ショーが開催される祭典フリートウィークの期間中、自動運転ロボタクシーウェイモなどの乗降を市北部の広い範囲で禁じられた。対象は10月9日から11日までの午前10時〜午後6時。
発表したのはサンフランシスコ市交通局で、市北部の公園地区プレシディオでは全域で乗降ができず、マリーナ地区やフィッシャーマンズワーフ周辺にも制限が及ぶ。配車大手のUber(ウーバー)やLyft(リフト)など人が運転する配車サービスとタクシーは対象外。市は理由を混雑の回避と歩行者の安全確保とする。背景には、7月4日の花火大会後にロボタクシーが車線で動けなくなった問題があった。
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■花火で立ち往生したウェイモ、航空ショーの週は乗降を禁じられた
市交通局の発表によると、制限は10月9日の金曜から11日の日曜までの3日間、午前10時から午後6時に適用される。この週末は米海軍の祭典フリートウィークの本番で、金曜の午前11時には艦船のパレード、金・土・日の正午から午後4時には航空ショーが予定されている。
乗降制限は午前10時〜午後6時に限られる
乗降が禁じられるのは、ウェイモなどが運行する自動運転の配車サービスだ。プレシディオでは全域で利用できない。市が理由に挙げるのは、交通混雑の回避と、水辺の歩行者の安全確保である。ウェイモ広報は、市と緊密に連携し、指定の乗降地点での輸送も含めてイベントを支援すると説明している。
全面的な運行停止ではない。時間帯は限られ、人が運転する配車サービスとタクシーは、これまで通り使える。ただ、花火大会に続いて水辺に人が集まる大規模イベントで、ロボタクシーだけに運行条件を課した格好だ。
大規模イベントのたびに、市がロボタクシーの運行条件を問う流れが見え始めた。事業者に求められるのは走行技術だけではない。混雑時や非常時に動けなくなった車両を素早く動かす運用力も、自動運転タクシー市場の競争軸になる。
【参考】関連記事としては「Google完全無人の自動運転タクシー「ウェイモ」 新たに4都市で無人化へ」も参照。
■乗降できない禁止エリア
市は、乗降できない範囲を、地図上で区切る仕組みであるジオフェンスで示した。北側の境界はマリーナ・ブールバード、フォートメイソン、アクアティックパーク、フィッシャーマンズワーフ。西側はマリーナとロンバードの間のライオン通り、南側はロンバード通りとノースポイント通り、東側はベイ通りとフィッシャーマンズワーフの間のエンバカデロだ。
追加の制限区間として、ヴァンネス通り、ベイ通り、エンバカデロの一部も対象に入る。ロンバード通り、ヴァンネス通り、ベイ通り、エンバカデロ、ハイド通りの一部区間では、車両は走行できるが、乗降はできない。
利用者への影響は、時間帯と場所に限られる。人が運転する配車サービスとタクシーに制限はなく、ウェイモも指定の乗降地点での輸送を続ける。カリフォルニア州では、公道での無人走行は州の車両管理局が、旅客サービスの許可は州の公益事業委員会が担い、市に運行の可否を決める法的な権限はない。今回の措置は、運行の可否ではなく、イベント期間中の乗降範囲を絞る内容にとどまる。
■花火大会で動けなくなったウェイモ
この措置の背景にあるのは花火大会での出来事だ。7月4日ゴールデンゲートブリッジの花火大会に合わせ、市の水辺には10万人を超える人が集まっていた。イベント終了後は大渋滞となり、複数のロボタクシーが走行車線で止まった。同じ渋滞で市営交通Muni(ムニ)のシャトルバスも身動きが取れなくなり、一部の車両はバッテリー切れになったという。けん引車も渋滞に阻まれ、撤去に3〜4時間かかった例もある。
NBCニュースが検証した映像では、少なくとも十数台の停止したウェイモの車両が通りに並んでいた。ウェイモは、大規模な渋滞に対する車両の耐性を強化する方法を検討していると説明している。
ルーリー市長は7月16日、この件と2025年12月の停電を挙げ、州の運輸長官に自動運転車の規制強化を求める書簡を送った。動けなくなった車両による車線のふさぎを防ぐこと、非常時の運行調整、運行データの共有、大規模イベントに対応できることの実証を求めている。
【参考】関連記事としては「Googleのロボタクシー、「路上の花火」で立ち往生」も参照。
■停電から続く、市とウェイモの緊張関係
市とウェイモの緊張関係は、2025年12月20日の停電にさかのぼる。変電所の火災で市内の13万件超が停電し、市の約3割で影響が出た。
報道によると、通信が途絶えたウェイモの車両の多くは路肩に停車したが、63件は交差点で止まり、人の指示を待った。一部は緊急車両の通行を妨げたとされる。市当局は当夜ウェイモと連絡が取れず、ダニエル・ルーリー市長が直接連絡して、ようやくつながった。
2026年3月の市議会公聴会で、ウェイモのプロジェクトマネージャーのサム・クーパー氏は、連絡の不備について全面的に責任を認めた。ビラル・マフムード市議は、数百台の車両が魔法の馬車のように走る一方で、それがカボチャに変わりうることが露呈したと指摘した。
州も動いた。9月30日に署名された自動運転車に関する州法SB1246は、ロボタクシーが警察や消防の活動を妨げた場合、要請から30分を過ぎても妨害が続けば、事業者に1台あたり最大1万ドルの罰金を科し得る内容だ。現場に人を送る義務も定める。ウェイモやAmazon傘下のZoox(ズークス)などが対象で、適用は2028年7月1日からとなる。今回のフリートウィークの措置は、この州法に基づくものではない。ただ、現場の乗降制限と州の法整備が並行して進む構図は、ロボタクシーを巡る規制の重心が変わりつつあることを示している。
【参考】関連記事としては「米国 ロボタクシーが救急車の邪魔をしたらテスラやWaymoに「罰金」の法律が施行」も参照。
■立ち往生から排除へ。ウェイモに突きつけられた「イベント対応」の課題
花火大会での立ち往生から、航空ショーの週の乗降制限まで。ウェイモにとって、この3カ月は大規模イベントへの対応力を市に問われ続けた期間と言える。
今回の措置は、ロボタクシーの排除と呼ぶほど広いものではない。時間は午前10時から午後6時に限られ、ウェイモは指定地点での輸送を続ける。それでも、人が運転する配車サービスは対象外で、自動運転の配車だけに条件が課された点は見逃せない。「イベントのたびに制限される」と断じるには、事例が花火大会とフリートウィークの2件にとどまる。
背景には、停電時の連絡不備や花火大会後の立ち往生で、市の信頼が揺らいだ事情がある。市長の書簡も、州の法整備も、同じ問題意識を共有している。混雑時や非常時に動けなくなった車両を、誰がどれだけ早く動かすのかという問いだ。
ロボタクシー市場は、台数が増えるほど、止まる車両の数も増える。自動運転タクシー市場の拡大期に、走行技術に加えて、現場対応力や自治体との調整力が事業者の競争力を左右する局面に入った。日本でも自動運転タクシーが広がれば、同じ問いに向き合う日が来るだろう。













