次期首相、自動運転は「あの候補」なら普及に追い風?

石破首相退陣後の動向を予測

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出典:自民党/小泉進次郎公式サイト/政府広報オンライン

石破茂首相が2025年9月7日、退陣する意向を表明した。低空飛行を続ける内閣支持率、そして参院選の大敗を背景に自民党内において総裁選前倒しを求める声が高まり、関税交渉が一段落したことを大義名分に苦渋の決断に至った――といった印象だ。

石破氏は出馬を見送る方針で、新たな総裁が誕生する見込みだ。少数与党のため確約はされないが、可能性として最も次の総理大臣に近い椅子に座ることになる。

新たな政治のリーダーの座を射止めるのは誰か。そして自動運転施策はどのように変わっていくのか。展望に迫る。

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■総裁選の動向

前回総裁選メンバーが出馬を模索

石破首相は会見で、総裁選前倒しをめぐる議論で党内が分断されることを危惧し、関税交渉が一段落したことを区切りに辞任する意向を表明した。総裁選出馬も見送る方針だ。投票は10月4日、フルスペック型で実施されるようだ。

新たな総裁の有力候補としては、2024年の総裁選において1回目の投票でトップだった高市早苗前経済安全保障相、同3位で議員票がトップだった小泉進次郎農林水産相が挙げられる。

このほか、立候補の意向を固めたと報じられている茂木敏充前幹事長や林芳正官房長官、小林鷹之元経済安全保障相らの名前も挙がる。いずれも2024年総裁選の立候補者だ。

ポスト石破をめぐる攻防は今後本格化する見込みで、現時点において候補に関する情勢は不透明だが、候補が乱立し過去最多の9人が立候補した前回より絞られるのは間違いないだろう。

テクノロジー領域における目玉施策求む

少数与党のため新総裁がそのまま首相に就任できるわけではないが、最有力に変わりはなく、よほどのことがない限り総理大臣の椅子に座ることになる。

新総理は、コメ問題や物価高対策、関税や紛争に揺れる国際問題など喫緊の課題への早期対応が求められる。グローバリズムに変革が押し寄せる重要な時期に差し掛かり、これまで以上に強いリーダーシップで臨まなければならないところだ。

経済面に関しては、AIや半導体をはじめとしたテクノロジー領域における目玉施策が欲しいところだ。これらの分野は米国・中国を筆頭に世界的に開発熱が高まっており、国際競争の観点から日本はこれ以上出遅れるわけにはいかない。

新しい総理や内閣は改革を訴求する傾向が強い。経済・産業面における改革としてAIや半導体は最もわかりやすく、かつ賛同を得やすい。具体策を示すことができるかはさておき、おそらく候補者の大半がマニフェストにおいてAI施策などに言及するものと思われる。

自動運転施策に力を入れるべき

出典:BOLDLY公式Facebook

AIをはじめとした最先端テクノロジーを活用した好例が自動運転だ。AIやSoC、各種センサーなど、最先端の粋を集めた構成で改善を繰り返し、ODD(運行設計領域)の拡大と安全性の向上を両立させていく。ドライバー不足や公共交通対策などに資するため反対が起きにくく、実用化されればその技術を国民も体感しやすい。

【参考】関連記事としては「自動運転のODD(運行設計領域)とは?」も参照。

米国や中国の先行勢は完全に実用域に達しており、複数の都市で高度な技術を搭載した自動運転タクシーを運行している。採算ラインにはまだ到達していないものの、おそらく時間の問題で、将来的な収益化を明確に視野に収めているものと思われる。

一方、日本はやっとレベル4自動運転バスを恐る恐る運行開始した段階だ。まもなく本格実用化のフェーズに入ろうとしているが、米中勢との技術・実績の差は歴然としており、その差が埋まる気配は今のところない。

世界の先頭を走るWaymoが日本進出を計画しているように、先行勢のグローバル展開も始まっている。各社の日本進出が進めば、現状の体制下ではほぼシェアを持っていかれることは歴史が物語っている。

開発黎明期においては、製品化で先行した仏Navya(現Navya Mobility)の自動運転シャトルArmaが隆盛を極め、国内各地の実証で利用された。レベル4サービス実用化面でも先頭を走っており、近年、やっと国内勢のモデルが並んできた状況だ。

新たにWaymoが進出するとなれば、技術・実用化面で国内勢はお手上げ状態となる。グーグルをバックに進化し続けるWaymoに対抗するには、世界トップレベルに上り詰めるほかないためだ。

自家用車含め、未来のモビリティ業界の核となる自動運転技術で後れを取ると、10年20年後に取り返しのつかないレベルの産業衰退を招きかねない。民間そのものの技術が問われるのは言うまでもないが、国策としてどのように日本を導いていくかが新総理には問われるのだ。

■これまでの自動運転施策

自動運転施策は安倍内閣から継続中

出典:首相官邸

国の自動運転施策を大きく動かしたのは、安倍晋三内閣だ。世界的に自動運転開発熱が高まる中、世界に負けない技術の確立を目指し、2014年に当初予算500億円の科学技術イノベーション創造推進費を計上して「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」を始動させた。これが日本の自動運転開発の礎となり、高精度3次元地図の作製や法整備など協調領域を進展させた。

2020年9月にバトンを受け取った菅義偉内閣もこの路線を引き継ぎ、規制改革やデジタル化を主要施策に掲げてデジタル庁を新設するなどイノベーションを推進した。

続く岸田文雄内閣は「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、同路線を継続した。デジタルライフライン全国総合整備計画を策定し、アーリーハーベストプロジェクトとして自動運転支援道の整備に乗り出すなど、事業を前進させている。

また、ラピダスへの出資をはじめ、DXに対する官民の投資を促し、日米連携による次世代半導体の技術開発・量産化を進めていく方針も打ち出している。

続く石破内閣は、完全な路線継続型で、岸田政権下で進行している事業をそのまま継続した印象だ。石破首相はデジタル行財政改革会議の中で「地域の移動の足不足を解消するため、自動運転の先行地域での事業化をお願いいたします。あわせて、自動運転に関する事故原因究明体制の構築に取り組んでください」と話すなど自動運転施策には前向きである一方、独自施策を打ち出す余裕はなかったように感じられる。

石破内閣に続く新政権は、果たして独自施策を打ち出すことができるのか。以下、有力候補の自動運転をはじめとしたAI・テクノロジー分野に対する姿勢をまとめてみた。

■有力候補の自動運転施策

高市氏は自動運転ソフトウェアの内製化を進める?

出典:政府広報オンライン

保守系の代表格として知られる高市氏。勤勉で議員立法活動に力を入れており、これまで多くの法律案を起草し続けてきた。テクノロジー分野にも精通しており、岸田内閣では科学技術政策担当大臣を担っていた。サイバーセキュリティ関連の知見はおそらく国内政治家の中でトップクラスだ。

前回2024年の総裁選における所見では、経済対策として積極的な財政出動のもと、食糧安全保障の確立やエネルギー・資源安全保障の強化、サイバーセキュリティ対策の強化などを挙げていた。

自動運転やAI・テクノロジー関連に触れていないのが気がかりだが、積極財政派である点は魅力的で、テクノロジー分野への政府支出を惜しむことはないものと思われる。

ポイントは、海外製品・テクノロジーの扱いだ。高市氏は2025年1月、自身のコラムにおいて外国製ドローン調達への懸念を示している。サイバーセキュリティ上の観点から、情報の窃取・漏洩をはじめ、事後的なソフトウェアの書換えによる機能制限や乗っ取りなどを懸念しているようだ。

同氏が首相となれば、こうした点における規制を強める可能性が高い。主に中国製を念頭に置いているものと思われるが、規制上、米国製をはじめとする海外製が一律に規制される可能性が高い。

良く言えば国産開発・実用化を後押しする契機となり得るが、それが保護主義的になれば、国内市場がガラパゴス化する懸念が生じる。海外スタートアップへの投資・パートナーシップで技術の高度化を図る自動車メーカーにとっても不便が生じ、グローバル化・海外展開の足かせとなることも考えられる。

国内開発をどのように推進し、海外勢との競争を図っていくか。具体策が気になるところだ。

小泉氏は国際競争を煽る?

出典:首相官邸

小泉氏は、候補の中では随一のイノベーション推進派だ。2024年総裁選の所見では、1年以内に実現する施策として聖域なき規制改革を挙げた。日本経済のダイナミズムを取り戻すため、安全に利便性の高い移動サービスを享受できるようライドシェアを完全解禁するほか、大企業の解雇規制の見直しやリスキリングなどの再就職支援の義務付け、成長分野へ移る制度の構想、スタートアップが劇的に拡大する仕組みの整備などを掲げている。

AIに関しては、2018年に開催された討論会で政治の世界にもAIを導入すべき――と話すなど、早くからその活用を推進する動きを見せている。2025年には、川崎秀人議員らとともにPMT(ポリシーメイキングテック)研究会を立ち上げたようだ。第1回目の勉強会では、安野貴博氏を招き講演してもらったという。

こうした人脈の広さは、大きな武器となる。敵味方を区別せず、柔軟に議論を進めることができるキャラクターは、トップに立つことでその本領を発揮する。

大まかな方針・ベクトルを示せば、周りに集まった優秀な人材がフォローしてくれるのだ。実力よりも人気先行と言われがちだが、首相は自ら一つひとつの政策を熟考する余裕がなく、周りの協力が何よりも重要となる。そうした点を踏まえれば、自身を広告塔に周囲が盛り立てていく体制は首相向きと言える。

自動運転に関しては、内閣府大臣政務官時代の2015年、近未来技術実証特区の取り組みの一環として日産本社を訪れ、早々に自動運転の視察・体験を行っている。

その際、「自動走行の研究を進める国内外の企業や研究者が、日本なら他国ではできないレベルで実証可能と思えるような環境整備を引き続き検討していきたい」とSNSで投稿している。規制緩和により、自動運転車が走行可能な環境を構築することで、国内における開発や実装を早期に図っていく施策だ。

10年前の時点でこうした考え方を持っていたことは評価に値する。実証環境が整っていなければ各社の開発は停滞し、機運も生まれず実現がどんどん遅れていくことになるためだ。

小泉政権が誕生すれば、さらに規制緩和が続き、海外開発勢もこぞって日本市場に押し寄せてくることも考えられる。高市氏の逆パターンだ。過酷な競争にさらされ、勝ち組と負け組と明確に分かれていくことになりそうだが、間違いなく国内における自動運転シーンは一変するだろう。

小林氏はデータの取り扱いを法整備

出典:自民党公式サイト

2024年総裁選で急浮上した小林氏。知名度は全国区となり、将来の総理候補として依然呼び声が高い。保守系で2021年の総裁選では高市氏の推薦人に名を連ねていたが、自らリーダーシップを発揮すべく動き出した。

2024年総裁選の所見では、経済対策として、戦略分野を選定してさまざまな産業クラスターを全国に創る「シン・ニッポン創造計画」と、デジタルサービス収支の黒字化、サービスのデジタル化を推進する「シン・デジタル日本」、日本版COTSなどスタートアップの挑戦を支援する仕組みなどを掲げていた。

とりわけ、データの取り扱いに関する思いは強く、自身の公約としてデータ法の整備を進めている。データを使い倒してイノベーションを起こすことを前提とする一方、無体物であるデータの権利が法的に定義されていないことから、データに関する権利を明確にし、自動運転や農業、防災など各分野でどんなデータを開示またはクローズにするかルール化する案の検討を進めているという。

自動運転に関しては当然前向きと思われるが、セキュリティの観点を含めデータの取り扱いに関し大きく動き出すことになりそうだ。

【参考】政治と自動運転の動向については「石破自民の大敗、自動運転業界に「追い風」吹く」も参照。

■【まとめ】大胆な改革を求めるなら小泉氏一択か

おそらく、誰が新総裁の座についても自動運転の既定路線は変わらず、現行施策の延長線上から大きく外れることはない。米中に比べ遅れているとはいえ一定の成果を出し始めており、短期目線では手を加えずとも特段の支障はないためだ。

変わるとすれば、小泉氏だ。純粋なイノベーションを目的に規制緩和を進め、国産、海外製を区別なく受け入れていき、実用化面における世界最先端国家を目指すくらいの大胆な施策を実行できるタイプだ。

果たして、どの議員が第29代総裁の座を射止めるのか。各氏の動向を注視したい。

【参考】関連記事としては「日本ではいつから完全自動運転になる?レベル5はいつ実現?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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