自動運転バスの車両費、日本は平均1.1億円(現在の4〜5倍)

事業財源の「88%が国頼み」と判明

B!

国策のもと、2027年までに100カ所以上での実現を目指している自動運転移動サービス。自動運転バスを中心に全国各地で取り組みが進められているが、事業財源の88%を国費補助が占めていることが財務省の調査で明らかとなった。

中型・大型の自動運転バスの車両費は1台平均約1.1億円で、既存バスの4~5倍に相当するという。こうしたイニシャルコストの高さから、補助なしでは取り組めない状況が続いているようだ。

高額なコスト負担が前提となる自動運転サービスだが、どのフェーズに達すればコスト面でメリットが出始めるのか。自動運転におけるコストの中身に迫る。

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■財務省による調査の概要

財源は国費補助が88%を占める

財務省による予算執行調査は、予算が効率的かつ効果的に使われているかを調査するもので、令和7年度は国土交通省の自動運転社会実装推進事業を含む30事業が選定されている。

事業補助終了後のランニングコストを見据えているかについて調査を行っており、2022~2024年度に事業補助を受けている107自治体など、実証ルート数172ルートが対象となっている。

2024年度の財源別内訳では、国費補助が88%、自治体などの負担10%、地方費補助1%、運賃収入など1%となっており、現時点では国費に頼っている状況が明らかとなっている。

実証が主体のため現段階では9割以上の自治体などが無償運行を行っており、運行収入などは僅少となっているようだ。

▼令和7年度 予算執行調査の調査結果の概要(6月公表分)
https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/budget_execution_audit/fy2025/sy0706/0706c.pdf
▼総括調査票|(23)⾃動運転社会実装推進事業|財務省
https://www.mof.go.jp/policy/budget/topics/budget_execution_audit/fy2025/sy0706/23.pdf

出典:財務省

車両費は平均1.1億円

また、中型・大型の自動運転バスを購入したルートについて分析したところ、1台当たりの事業費は平均約1.5億円となっており、中でも自動運転バスの車両費は1台平均約1.1億円に上ったという。平均的な路線バスの価格が約2,000~3,000万円であることを踏まえると相当高額となっている。

出典:財務省

2024度に実証事業を行った自治体などに実装後のランニングコストへの対応について確認したところ、現行の有人路線への置き換えを予定していない場合も含め、「運行収入などのみ」で対応すると回答した自治体などが一部存在(5先)したが、最多は「運行収入及び自治体など予算で実施」(19先)だった。

このほか、国や県支援などを想定している自治体なども存在(12先)した。その一方、全体の4割程度の自治体などにおいては独自の資金確保の取り組みを検討しており、沿線企業との連携など、採算面への課題解決に向けた取り組みが進められているという。

資金確保策としては、企業版ふるさと納税や協賛金、貨客混載、クラウドファンディングなどの事例が見られたようだ。

出典:財務省

採算性乏しく費用低減に向けた取り組みが必須

財務省は、現状において自動運転バスの車両費は非常に高額で、自動運転によって削減可能な労務費を踏まえても採算性に乏しく、費用低減に向けた取り組みを推進していく必要があると指摘している。

社会実装後の運営については、国費に頼ることなく運行収入や独自の資金確保によって維持すべきである。国としても採算面の課題について対応していく必要があり、地域交通を維持するために、独自の資金確保努力を支援していくことも考えられるとしている。

出典:財務省(※クリックorタップすると拡大できます)

■自動運転におけるコスト

過去のデジタル庁調査では車両費約5,500万〜8,000万円

自動運転バスをはじめとした自動運転モビリティが高額であることは周知の事実と思われるが、その価格水準・相場は基本的に公表されておらず、漠然と高いイメージが定着している。

デジタル庁のモビリティワーキンググループが2023年12月に公表した資料「自動運転等新たなデジタル技術を活用したモビリティサービスの社会実装に向けた論点」によると、海外製車両を導入している自動運転サービス事業者を対象としたヒアリングの結果、自動運転バス1台あたりの車両費用は約5,500万〜8,000万円(一部改造費用も含む)となっている。

このほか、3Dマップや走行ルート作成における初期費用として、1カ所あたり約1,000万〜2,000万円が必要になるという。さらに、遠隔監視に関するハード面・ソフト面での費用や充電設備設置費用などが別途発生するとしている。

出典:デジタル庁(※クリックorタップすると拡大できます)

海外から輸入されたモデルの大半は、仏Navya(現Navya Mobility)製のARMAなど小型オリジナルモデルの自動運転バスとなっている。若干量産化が進み始めた小型モデルでこのくらいの価格なのかもしれない。

中型以上の自動運転バスは、既存車両を自動運転化したモデルとオリジナルモデルが存在するが、多くは既存車両改良型だ。センサー構成など一定の規格化は進められているものと思われるが、基本的にはオーダーメイドのように受注を受けてから導入エリアや事業者の要望に合わせて改造するため、どうしても高額となる。

また、自動運転バスの場合、現時点では大量受注などはまず考えられない。実証用途・実用化向けを問わず、一注文者が数十台規模で発注をかけることはほぼなく、1台、多くとも数台単位の受注となる。

自動運転タクシーのように、一つのエリアで数十台規模のフリートを構築できるサービスと異なり、バスは走行する路線や時間が決まっているためどうしても台数が限られるのだ。そのため、量産効果を生み出すのも時間がかかり、現状まだそのフェーズに達していないものと思われる。

▼自動運転等新たなデジタル技術を活用したモビリティサービスの社会実装に向けた論点
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/2b3315d1-5865-4712-99dd-84c54a396f9b/fdaf1653/20231211_meeting_mobility-working-group_outline_02.pdf

【参考】自動運転バスの導入費用については「自動運転バス導入「6,500万〜1億円」 デジタル庁、費用例を記載」も参照。

BOLDLYのシミュレーション

BOLDLYが2025年1月に開催されたデジタル庁のモビリティワーキンググループで発表した資料も興味深い。同社は自動運転サービスの実装・運営面に特化した事業展開で国内市場を盛り上げており、東京都大田区のHANEDA INNOVATION CITYや北海道上士幌町、三重県多気町VISON、愛媛県松山市でレベル4サービス(特定自動運行)を達成している。

また、茨城県境町、岐阜県岐阜市、愛知県日進市、新潟県弥彦村、千葉県横芝光町、石川県小松市でもレベル2運行を継続しているほか、北海道 帯広市、山梨県富士吉田市、山梨県甲斐市、愛知県小牧市、兵庫県養父市、熊本県熊本市、愛媛県伊予市でも取り組みを進めている。

自動運転車は、Navya MobilityのARMAやエストニア Auve Tech製MiCaを主力に、ティアフォーなど国内開発勢とパートナーシップを組む事例も増えてきている。

BOLDLYによると、自動運転車を導入・社会実装して1年間運用した際のコストは、現時点において2億2,000万円に上るという。このうち、車両本体は1億500万円で、マップ・ルート設定、充電設備、バス停、ラッピング、各種調査、手続き、人材教育にかかる費用は計5,200万円、イニシャルコストは計1億5,700万円となる。

ランニングコストは計6,300万円で、システム利用料やメンテンナンス、人件費などの維持費が相当する。このランニング部分は、おそらく無人化実現などを加味することで2年目以降年1,030万円に低減できるようだ。

一方、既存公共交通は、手動バス(EV)がイニシャル4,580万円+ランニング1,680万円の計6,260万円、一般的な手動バスがイニシャル2,080万円、ランニング1,650万円の計3,730万円、オンデマンドバスはイニシャル1,320万円+ランニング1,440万円の計2,760万円という。

1年間の運用で見ると、自動運転バスの方が明らかに高額となることがわかる。仮に車両価格が3分の1になったとしても計9,730万円で手動バス(EV)を上回る。5分の1で計8,330万円、10分の1でも計7,280万円で、依然として手動バス(EV)よりも割高となる。

つまり、量産効果が発揮され車両価格が大きく低下しても、単年度でメリットを享受できるわけではないのだ。

10年運用で経済合理性が高まる

では、初年度導入 に加え10年間運用した場合のコストはどうなるか。自動運転バスを初年度同様最大限のコストで10年間運用すると仮定した場合、7億8,700万円と非常に高額になる。手動バス(EV)は2億1,380万円、手動バスは1億8,580万円、オンデマンドバスは1億5,720万円で、その差は歴然だ。

しかし、初期費用の低下とともにランニングコストを1,030万円に低減することが可能になれば、状況は変わってくる。車両価格が3分の1でランニングコスト1,030万円で10年間運用した場合、計1億9,000万円となり、手動バス(EV)を下回る。

車両価格5分の1の場合は1億7,600万円、10分の1の場合1億6,550万円となり、手動バスを下回りオンデマンドバスの運用コストに近づくことになる。

出典:デジタル庁公開資料(※クリックorタップすると拡大できます)

車両価格の低下には、現時点における最先端技術が普及レベルの技術となることや車両の量産化などが欠かせないが、BOLDLYは、車両価格3分の1に1,000台程度、5分の1に6,000台程度と見積もっているようだ。おそらく概算だが、6,000台規模の量産・実用化が可能になるフェーズに達すれば、中長期における運営コストが既存交通を下回り、無人モビリティの経済合理性が高まる――という分析だ。

また、海外輸入やベンチャーが供給している車両をかき集めても 年間 50 台ほどしか手に入らないということも指摘している。1台当たりのコストを3分の1~10分の1に低下させるためには1,000台以上の車両が必要となるが、これを国産でやるのであれば、2025 年から 2027 年に量産開発を国策としていかに推進できるかが重要としている。

▼自動運転時代の市場創生|BOLDLY株式会社
https://www.digital.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/6936350f-a070-42d7-8ab1-3bbd9471bba8/44733a3c/20250128_meeting_mobility-working-group7_outline_03.pdf

需要が先か、値下げが先か……

一般的に、量産化が行われるには技術や設備の充実のみならず需要が伸びなければならない。需要の裏打ちがあってこそ、開発・製造企業は供給量を増やすことができるのだ。

一方で、低めの価格設定によって需要が喚起される面もある。需要が先か、値下げが先か…という話にもなりそうだが、いずれにしろ一定量の需要が価格低下に結びつき、価格低下によって新たな需要が生み出される……という好循環に持っていくことが重要だ。

ただし、技術やサービスが発展途上中であるため、現行水準の技術は低価格化されるものの、新技術は高価格帯を維持したまま……という状況が続く可能性も高い。循環を重ね、古い技術でも十分な安全性が担保される水準に達すれば、本格的な価格低下が始まるのかもしれない。

また、その過程において、省人効果も本格的に発揮されていくことが期待される。現状は、やっと車内のドライバー無人化を果たしたところで、まだまだ恐る恐るの状況が続く。つまり、車内無人かは果たしたものの、遠隔監視において気が抜けない状況だ。

もう一段、二段技術が向上し、ほぼトラブルが起こらない状況に達すれば、一人のオペレーターが複数台の車両を同時に管理可能になる。この1対Nの数字が大きくなればなるほど省人化が実現し、ランニングコストの大幅低減につながる。

このフェーズの早期実現に向け、国はどのような施策を展開すべきか。新たな一手に期待したいところだ。

■【まとめ】長期目線の事業戦略が重要に

レベル4自動運転バスの実用化は今まさに加速し始めており、2025年度中に累計20件、2026年度中に40件……と、大きく数字を伸ばしていくことが予想される。ただ、収支面で効果を発揮するのはまだ先の話になりそうだ。

だからと言って手をこまねいていては、現状は何も変わらない。自動運転サービスがサービス面でも経営面でも本質的に既存サービスを凌駕する未来を見据え、切れ目のない長期目線の戦略で臨みたいところだ。

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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